名店のDNAを受け継ぐ啜り心地の良い麺

修業元である『飯田商店』が、スープと同等かそれ以上に麺の完成度の高さを追求する店舗であることは周知の事実ですが、『FeeL』の渡邊店主も、そのDNAをしっかりと受け継いでいます。
「醤油」と「塩」とで、小麦のブレンドから含有水分量、切り刃(麺の太さ)、熟成の掛け方に至るまで全て異なる仕様とするこだわりよう。

「『醤油らぁ麺』は、食後感が『チキンラーメン』のような印象になることを意識してつくっています。これを実現するため、後半へと向かうにつれ、麺に含まれる小麦と卵をスープに溶け込ませていこうと、打ち立てのものを使っています。また、『塩らぁ麺』は、スープの味わいが繊細なので、できるだけスープの邪魔をしないよう、麺は熟成させてから使用しています」(渡邊店主)
確かに、実際に麺を啜ると「醤油」はスープと共に主役を張る麺、「塩」はスープを立てて黒子に徹する麺であり、印象が全く異なります。いずれも、「このスープにしてこの麺あり」と言うべき、試行錯誤の結晶。渡邊氏いわく「これでもまだまだ完成途上で未熟」とのこと。飽くなき向上心に頭が下がるばかりです。
美しく飾られたトッピングにも注目

生産者の「顔」を思い浮かべながら一つひとつ心を込めて丁寧につくり上げるチャーシューは、鶏・豚・鴨の種類を問わず、どれも「超」が付くほどの逸品。「醤油」と「塩」とで何ひとつ被るものがない点も、驚嘆のひと言に尽きます。
「チャーシューはトッピングの花形。なので、ラーメンのサブでなく、肉料理として提供しても十分通用するものを作りたい」と渡邊氏が言うように、ひと口で、店主の言葉が真実であることが実感できる、規格外の出来映え。
2杯のラーメンをペロリと食べ終えて店の外に出ると、爽やかなそよ風がたなびく春の陽気。その心地良さに思わず目を細めます。「ラーメンを食べた後、青梅の自然と戯れる。お客さまには、そんな1日を過ごしていただきたいのですね」。そんな店主の言葉が脳裏に蘇りました。
『FeeL』のラーメンで舌鼓を打った後、青梅の自然に触れて心身ともにリフレッシュする。遠からぬ内に、そんなコースが青梅観光の定番となりそうです。
店主(渡邊大介氏)のプロフィール

・本文で触れたとおり、店主は、湯河原の名店『らぁ麺飯田商店』で研鑽を重ね、今般、飯田商店店主・飯田将太氏の一番弟子として、満を持して独立。
・「生産者、ラーメン職人が連綿と取り組んできた仕事に敬意を払うこと」など、ラーメン職人としての心構えについて、飯田氏から教わったことは数多いそう。
・屋号である『RamenFeeL』は、「1杯のラーメンを通じて、生産者、職人の想いを感じ、先人が辿ってきた道筋を感じ、それを思う」「それらの思いを、ラーメンを通じて食べ手にも伝えることができれば」との願いを込めたもの。
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。