超濃厚か、超クリアか? 秋葉原「志奈田」で堪能する2種類の絶品煮干つけ麺|田中一明のラーメン官僚主義!

超濃厚か、超クリアか? 秋葉原「志奈田」で堪能する2種類の絶品煮干つけ麺|田中一明のラーメン官僚主義!
純濃煮干しつけ麺 890円。和え玉は200円 | 食楽web

濃厚と淡麗とで全くの別もの!1杯1杯にストーリーを感じる『志奈田』のつけ麺

 秋葉原エリア随一の創作淡麗ラーメンの人気店として名声を馳せてきた『志奈そば田なかsecond』(※)。そんな『田なかsecond』が6月20日に店を畳み、そのわずか4日後に『九十九里煮干つけ麺 志奈田』として復活。あまりにも電撃的な交代劇に、ラーメン好きの間でもホットな話題となったことは記憶に新しい。

 同店のメニュー構成は、『煮干つけ麺』の屋号が示すとおり、つけ麺が主軸。濃の『純濃煮干つけ麺』、淡の『淡麗汐煮干つけ麺』、辛の『辣濃辛煮干パクチーつけ麺』の3本柱で客の訪れを待つ。

 中でも、特に高い人気を博しているのが『純濃煮干つけ麺』。豚・鶏を徹底的に煮込んだ超濃厚動物系出汁を土台に、太平洋の息吹を大量に蓄えた滋味深い九十九里産イワシ・アジを徹底的に重ね合わせる。

 スープを啜ると、フォン・ド・ヴォーを彷彿とさせる「洋」の香りが、涼やかに鼻腔から味覚中枢へと駆け抜ける。イタリアンの修業経験もある店主ならではのギミックで、互いに強烈な個性を放つ動物系出汁と魚介出汁を巧みにつなぎ合わせているのだ。
 一般的に「箸が立つほど粘度が高いスープはインパクトのみが先行し、うま味のバランスは崩れがち」と評されるが、店主の手に掛かれば、そんな心配はご無用。黄金律を奏でるかの如きバランスの良さに、思わずスープをお代わりしたくなってしまうほどだ。

超濃厚か、超クリアか? 秋葉原「志奈田」で堪能する2種類の絶品煮干つけ麺|田中一明のラーメン官僚主義!
淡麗塩煮干しつけ麺 800円

『純濃煮干つけ麺』の陰に隠れがちだが、『淡麗汐煮干つけ麺』の完成度も極めて高い。
 一切の動物系を排し、煮干しと香味野菜のみを用いたスープは、澄み切った冬の夜空に響く鐘の音のように果てしなくクリアなうま味が、食べ手の胃袋を鷲づかみにする。
 麺を昆布水に漬け込みうま味の多層化を図ろうとするアプローチも、流石のひと言だ。

「どのメニューも、店舗をリニューアルするに当たってゼロから考案した渾身の自信作です」と胸を張る店主。

 なお、麺は、店主の奥さんの実家が営む製麺所『フジキン光来』のものを使用。北海道産小麦『ゆめちから』と、パスタに用いられるデュラム粉とを絶妙な配分でブレンドした麺は、当然のことながら、今回のつけ麺専用に開発されたものだ。
 麺を啜りながら、「この1杯は、店主と奥さんの二人三脚で創り上げた家族愛の結晶なんだなぁ」と実感。食べ終わり際には、すっかり心が温かくなっていた。

(撮影◎松山勇樹)

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(※)『志奈そば田なかsecond』とは?

2013年4月、豊島区・東池袋の地で開業した『志奈そば田なか』の2号店。2015年12月30日にオープンし、九十九里産のアジ煮干し等を用いた淡麗タイプの「アジ煮干し中華そば」や、高級素材を惜しげもなく用いた「塩かけそば」などを提供していた。2017年6月20日に閉店し、その暖簾は『九十九里煮干つけ麺志奈田』へと引き継がれた。

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●SHOP INFO

超濃厚か、超クリアか? 秋葉原「志奈田」で堪能する2種類の絶品煮干つけ麺|田中一明のラーメン官僚主義!

店名:九十九里煮干つけ麺 志奈田

住:東京都千代田区外神田3-4-1
TEL:03-3258-5282
営:11:00~15:00、17:00~20:45
[土]11:00〜20:45、[日]11:00~18:00(※各LO)
休:月

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。