香り、コク、旨みの三重奏。阿佐ヶ谷『箸とレンゲ』の「ぶどう山椒の麻婆麺」が旨い!|田中一明のラーメン官僚主義!

香り、コク、旨みの三重奏!阿佐ヶ谷『箸とレンゲ』の「ぶどう山椒の麻婆麺」|田中一明のラーメン官僚主義!
ぶどう山椒の麻婆麺 700円(Sサイズ)、900円(Mサイズ) | 食楽web

ラーメン界のマエストロ・庄野氏が、前代未聞の麻婆麺を開発。主役はなんと「ぶどう山椒」!

 2017年7月25日、JR阿佐ヶ谷駅高架下にオープンした商業施設『ビーンズ阿佐ヶ谷』。施設全体に流れる開放的な雰囲気に、行き交う人々の表情も心なしか明るく見える。

『箸とレンゲ』は、同商業施設に新たにオープンした新店。自身を「ラーメンクリエーター」と称する庄野智治氏が率いる「麺庄グループ」(※1)の国内8店舗目であり、以前、この連載コラムでご紹介した護国寺『MENSHO』に続く店だ。

 今回も、『MENSHO』に引き続き、庄野氏が日本各地の生産現場へと足を運び、生産者の話を聞いて厳選した食材を使用。同氏が磨き上げてきた創作ラーメンづくりの技術の粋を尽くして、素材の持ち味を活かし切る。生産者と食べ手の結節点でありたいとして、『MENSHO』のオープン時に掲げた『Farm to Bowl(農場の恵みを食卓に)』の思想は、『箸とレンゲ』でも健在。

 同店では数種類の創作ラーメンを提供するが、中でも、看板メニューである「ぶどう山椒の麻婆麺」は、大衆中華料理店等でお馴染みの麻婆ラーメンとは異質。全く新しい麻婆麺のカタチを指し示した話題作だ。

店内の石臼で、国産小麦を挽いて製麺するこだわりぶり
店内の石臼で国産小麦を挽いて製麺するこだわりぶり

「和歌山の生産農家へと足を運んだ時に出逢った、有田川町『カンジャ山椒園』のぶどう山椒(※2)。崇高とも言えるその香りに惚れ込み、この山椒をラーメンに使いたいという欲求が抑えられなくなりました。その結果誕生したのが、『ぶどう山椒の麻婆麺』です」。
 四川料理などで一般的に使われる「中国山椒(花椒)」は、ピリリと電気が走るような痺れを伴う辛みを特徴とするが、「ぶどう山椒」は、辛みに清涼感があり気品さえ漂う。そんな「ぶどう山椒」を、生・乾燥・油の三形態で駆使。健康野菜「ケール」を用いた鶏魚介スープ、豚挽肉に複数のスパイスを折り重ねた自家製麻婆餡と合わせる。

「スープは注文ごとに小鍋で温め、鶏モモの挽肉を加えます。そうすることで、うま味とコクが更に増すんです」。マッシャーで崩した豆腐をスープに溶かし込み、メリハリと立体感に満ちあふれた食味を構築するギミックも、創作麺の名手・庄野氏ならではの発想だ。

 スープとの相性をより一層向上させるため、今般、オープン直後から用いていた中細麺を太麺へと切り替えた。味をブラッシュアップさせるためにはオープン後の仕様変更すら厭わない。そんな真摯な姿勢も、庄野氏の味が支持を得ている大きな理由だ。

(撮影◎佐々木和隆)

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(※1)麺庄グループとは?
『麺や庄の』の店主である庄野智治氏が立ち上げたグループ。
グループに属する店舗は、『麺や庄の』、『二丁目つけめんGACHI』、『麺や庄のgotsubo』、『油そば専門店GACHI』、『MENSHO TOKYO』など。これらの店舗は、単なる本店・支店の関係ではなく、店ごとに全く異なるコンセプトに基づくメニューを提供している。

(※2)ぶどう山椒とは?
和歌山県・有田川町を原産地とする国産山椒。天保時代(1830年~1844年)に自生していたものを植生したことが始まりとされている。山椒の実がぶどうの房状に連なるその形状から「ぶどう山椒」と呼ばれる。

●SHOP INFO

箸とレンゲ 外観

店名:箸とレンゲ

住:東京都杉並区阿佐谷南2-42 BeansてくてA-4
TEL:03-5929-7989
営:11:00~23:00
休:なし
http://menya-shono.com/hashitorenge/
紀州梅塩らぁめん、土佐柚子塩らぁめん(共にS600円・M800円)など、多彩なメニューが揃う

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。