東京・東久留米に鶏清湯系の巨星現る! ラーメン官僚も認める至極の「柚子塩らぁ麺」とは?

東京・東久留米に鶏清湯系の巨星現る! ラーメン官僚も認める至極の「柚子塩らぁ麺」とは?
食楽web

「名古屋コーチン」を軸に、引きの強いうま味を演出した独創的な1杯

 武蔵野台地の中央部に位置する、多摩東部エリアの中規模都市・東久留米。2019年5月1日、そんな同地に1軒のラーメン店が誕生した。それが、今回ご紹介する『本格柚子塩らぁ麺 入鹿-Tokyo-』だ。

 ロケーションは、西武池袋線東久留米駅の改札から徒歩約3分と至便。店舗の外観は、極めてスタイリッシュ。「らぁ麺」の文字や丼が描かれた暖簾がなければ、カフェバーにしか見えないほどだ。

 同店を切り盛りする小川和弘氏は、『AFURI』『ラーメン凪』を始めとする東京ラーメンシーンをけん引する錚々たる実力店で研鑽を重ねたすご腕。腕の良さもさることながら、その屈託のない人柄を慕うファンも多く、オープン初日、店主の晴れの門出を祝うため、おびただしい数のラーメン好きが詰めかけたのは記憶に新しいところだ。

「柚子塩らぁ麺」800円
「柚子塩らぁ麺」800円

 現在、同店が提供する麺メニューは「塩らぁ麺」とそのバリエーションである「柚子塩らぁ麺」、「醤油らぁ麺」とそのバリエーションである「ポルチーニ醤油らぁ麺」の4種類。いずれの品も新店離れした水準の高さを誇るが、初訪問時に召し上がっていただきたいのは、券売機筆頭メニューである「柚子塩らぁ麺」。

小川店主
小川店主

 小川店主の出身地である「名古屋」へのオマージュを込め、出汁の素材として、名古屋コーチンの丸鶏を使用。それに、大量の手羽先と大山鶏のガラを加え、鶏が持つうま味の粋を徹底的に搾り取る。出汁と並ぶスープの主要な構成要素である塩ダレにも、一切手を抜かない。店主が厳選した5種類の塩に加え、香り艶やかなアゴ(トビウオ)等の煮干しや貝をタップリ溶け込ませ、ふくよかな風味を演出。この両者を絶妙なバランスで掛け合わせたスープなのだから、胃袋に刺さらないわけがない。

 啜ると、重厚なコクと分厚いうま味を兼ね備えた「名古屋コーチン」が、丸ごと一羽口の中へと飛び込んできたかのような感覚が食べ手を驚嘆へと導く。その後、じわりとアゴの豊潤な香りが鼻腔を刺激し、とどめに、貝のコハク酸のうま味が味覚中枢のど真ん中を撃ち抜く。「貝から抽出されるコハク酸が、スープの風味を格段に重層的にするんです」。口にする度に新たな素材がひょっこりと顔を出し、全く飲み飽きることがない。

 このスープの相棒として、国産小麦を用いた、全粒粉練り込み中加水ストレート麺を採用。啜り上げる度に強烈な存在感を放つ麺は、単なるスープの引き立て役ではなく、スープと並び立つもうひとりの主人公。「オープン当初は切り刃22番の麺を使っていましたが、思い切って24番に変えました(※)。麺を一段階細くしたことで、啜りやすさが格段に増したのではないかと思いますが」。オープンからわずか3ヶ月の間に、既に麺に手を加えている。ラーメンと真摯に向き合う小川氏の姿勢が垣間見えたような気がした。

 平成末期、瞬く間に創作ラーメンのメインストリームへと踊り出た鶏清湯系。とりわけ昨年頃から、同系のラーメンを提供する店舗が続々と出現し、ラーメンマニアの間では、若干食傷気味の感があったところ。

 が、『入鹿-Tokyo-』の1杯は、そんな懸念を物の見事に吹き飛ばす快作だった。鶏清湯というジャンルも、同店のように「店の顔が見える」ラーメンが増えていけば、ラーメン界に大変革をもたらす切り札となるかもしれない。そんなことを考えさせてくれた1杯だった。

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(※)切刃番手とは?
30mmの幅で何本の麺を切り出すことができるかによって決定される数字。よって、数が大きくなればなるほど麺が細くなる。切り刃22番は中太麺、切り刃24番は中細麺となる。

●SHOP INFO

本格柚子塩らぁ麺 入鹿-Tokyo-

店名:本格柚子塩らぁ麺 入鹿-Tokyo-

住:東京都東久留米市本町1-4-28
TEL:非公開
営:11:00~15:00、18:00~21:00、日曜11:00~15:00
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。