ラーメンクリエイターが手がける護国寺『MENSHO』が世界の注目を浴びる理由|田中一明のラーメン官僚主義!

MENSHO【護国寺】
食楽web

『FARM to BOWL』を掲げ、目指すは、食べ手と生産者をつなぐ「かすがい」

2005年に市ヶ谷の地で『麺や庄の』を創業。その後、一家言を持った歴戦のマニアをも脱帽させる独創的なメニューを次々に開発し、立て続けに店舗展開。『麺庄グループ』(※1)を率いる代表・庄野氏は、自身を「ラーメンクリエーター」と称するが、そのことに異論を唱える人は皆無だろう。少なくとも私は、ラーメンの創り手の中で、庄野氏ほどcreatorの名に相応しい人間を他に知らない。

そんな氏が、年の瀬も押し迫った2016年12月23日、護国寺に新店をオープン。それが、今回ご紹介する『MENSHO』だ。オープン後しばらくの間は、「潮らーめん」と「挽きたて小麦つけめん」の2頭馬車態勢で客の来訪を待つ。

「これまでの店舗では、ラム(子羊)等の異素材を、どのようにラーメンに活かすことができるかを追究してきた」「今回の店舗では、より一層上流に遡り、生産者の顔が見える素材の魅せ方を考えていきたい」と庄野氏。

『FARM to BOWL』

生産者と食べ手の結節点たらんという思想は、ラーメンの内容はもちろん、製造工程にまで完徹される。『麺庄グループ』で使用する麺はすべて自家製だが、他店のものを流用せず、同店の専用麺を創るためだけに、機械式の石臼を店内の製麺室に設置。北陸産小麦の玄麦を、その都度、必要な分量だけ石臼で挽くことによって、豊潤な麦の薫りを身にまとう究極の麺を紡ぎ出す。

「挽きたて小麦つけめん」で堪能できる麺は、上述の工程の凄味が存分に体感できる空前絶後の芸術作品。そのクオリティたるや、麺のみを味わうために、スープと合わせて提供される『薩摩の天然温泉水』にディップさせるだけでも、丼を空にすることができるほどだ。

もちろん、生産者の顔立ちは、麺以外のパーツからも浮き彫りとなる。スープの素材は、岩手産の鴨「岩手がも」と野菜のみ。沖縄・東京・石川産の塩(※2)をシンプルにブレンドしたタレとの協同作業により、麺の持ち味をすべて引き出す役割を演じ切る。

香り豊かな玄麦が、ふくよかな甘みを伴いながら、滋味深き鴨のコクとめぐり逢い、理想的な形で食べ手の味覚中枢へと届けられる。生産者の想いのバトンが、庄野氏を介して食べ手へとつながった瞬間だ。


MENSHO【護国寺】

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(※1)麺庄グループとは?
 『麺や庄の』の店主である庄野智治氏が立ち上げたグループ。グループに属する店舗は、『麺や庄の』、『二丁目つけめんGACHI』、『庄のgotsubo』、『油そば専門店GACHI』、『MENSHO TOKYO』など。これらの店舗は、単なる本店・支店の関係ではなく、店ごとに全く異なるコンセプトに基づくメニューを提供している。
 中でも、『MENSHO TOKYO』は、ラム(子羊)を用いたラーメンをレギュラーメニュー化し、大きな話題となった。

(※2)沖縄・東京・石川産の塩の種類は?
使用する塩の種類は、沖縄の海塩「ぬちまーす」、東京・大島の深層海塩、石川の海塩「玉藻塩」「輪島塩」など。

●SHOP INFO

MENSHO【護国寺】

店名:MENSHO【護国寺】

住:東京都文京区音羽1-17-16 中銀音羽マンシオン1F
TEL:03-6902-2878
席数:カウンター13席
http://menya-shono.com/mensho/
「潮らーめん」(1,000円)、「挽きたて小麦つけめん」(1,000円)が2大メニュー。鶏、鴨、豚の3種の肉のトッピング(各250円)のほか、味玉、うずらの味玉(各150円)も追加可能

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。