ラーメン過疎エリアにできた『麺Dining比内地鶏白湯らーめん志道』が旨い!|田中一明のラーメン官僚主義!

麺Dining比内地鶏白湯らーめん志道【江東区東雲】
越智店主の本気が垣間見える、「鶏白湯の今」を体現した名品。 | 食楽web

現役官僚にして、年間700杯以上を平らげる超・ラーメンフリークとしてその名を轟かす田中一明氏が、東京の最旬ラーメン事情をお届けします!

「鶏白湯≠濃厚」を自らの腕で立証。この1杯で巻き起こす鶏白湯革命

昨年下半期以降、都内のラーメンシーンにおいて、これまでにない新たな動きが目立つようになった。その動きとはズバリ、ラーメン専門店がほとんど存在しない「ラーメン過疎エリア」への積極的な進出(※1)だ。

2016年9月22日にオープンした『麺Dining比内地鶏白湯らーめん志道』も、そんな店舗のひとつ。

同店は、「日本一ご飯が進むラーメン」として首都圏を席巻する人気店『肉玉そばおとど』の越智店主が、「今の自分が一番食べたい1杯」をイメージして開発したラーメンを提供。

高層マンションが立ち並び、嗜好を異にする多種多様な人々を擁する新興住宅地・東雲が、『志道』の所在地。通常であれば、このような「嗜好のるつぼ」への出店を試みる際には、複数のメニューを用意するのがセオリーだが、同店では、逆に品数を極限まで絞り込み、鶏白湯系(※2)の『志道らーめん』のみで、客を待ち受ける。

「東京において、鶏白湯系が百花繚乱状態であることは百も承知。その鶏白湯系で、他店では提供できない1杯を作ることこそ、腕の見せどころじゃないですか」と笑う店主。そんな店主の自信が「一点集中主義」の源だ。

確かに、いただいてみれば『志道らーめん』は、店主の言葉どおり唯一無二。

濃度すら素材の持ち味を表現する際の邪魔になると考え、「鶏白湯=濃厚」という既成概念にとらわれず、ゼロから素材の魅力を徹底的に探究。その結果、肉の豊かなうま味を素直に引き出すことができる「比内地鶏」をスープの主役として採用。

加えて、主役に華を添えるため、「昆布」「豚背ガラ」、隠し味として「白菜」をスープの素材に抜擢した。昆布由来のグルタミン酸、鶏由来のイノシン酸などを大量に蓄えたスープは、うま味調味料無添加。鶏・豚・昆布・白菜が、そのまま液体と化したかのような素材感が食べ手を圧倒するとともに、啜る度に身体中の細胞の活力が蘇っていくような感覚を引き起こす。

白湯でありながら、淡麗系(※3)のように鋭利な切れ味を兼ね備えた1杯に、食べ手は、鶏白湯のポテンシャルの高さを見せ付けられることになるだろう。越智店主の本気が垣間見える、「鶏白湯の今」を体現した名品。遠方からでも足を運ぶ価値は確実にある。

(撮影・松山勇樹)

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(※1)ラーメン過疎エリアとは?
各エリアに万遍なくラーメン店が存在するように見える都内においても、緻密に調査すれば、ラーメン専門店が殆ど存在しないか、あったとしてもチェーン店ばかりという「空白地帯」が存在する。それが「ラーメン過疎エリア」だ。
一昔前までは新橋、虎ノ門、錦糸町、五反田近傍などが代表的な過疎エリアとされていたが、ここ数年で、これらの地域にもラーメン店が急速に進出。残存する過疎エリアは、豊洲、東雲、新木場、田端、雑色、六郷、上中里など僅かである。

(※2)鶏白湯系とは?
鶏ガラ、丸鶏、モミジ(鶏の足)などを煮込んだ白濁スープを用いたラーメンの総称。
最近、都内で主流となっている濃厚鶏白湯スープであれば、煮込みに6~8時間をかけるのが一般的。丸鶏を多めに用い肉のうま味を強調したり、コラーゲンを豊富に含むモミジを用いトロミを演出するなど、カスタマイズの幅が広いことも特徴。

(※3)淡麗系とは?
スープを濁らせず、透き通った状態で提供するラーメンの総称。スープの素材には、鶏ガラや煮干し・貝・昆布等の魚介系素材を用いることが一般的だが、豚ガラ、牛骨などを使用する店舗も多い。
1996年にオープンした、神奈川県を代表する名店『くじら軒』が「淡麗系」の嚆矢とされる。

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●SHOP INFO

麺Dining比内地鶏白湯らーめん志道【江東区東雲】

店名:麺Dining比内地鶏白湯らーめん志道【江東区東雲】

住:東京都江東区東雲1-6-18
TEL:03-3531-5959
営:営業11:00〜14:30(14:00LO) 18:00〜翌1:00(翌12:30LO)
休:無休
志道らーめん(780円)、彩り野菜らーめん(1080円)、三種の肉らーめん(1200円)のほか、肉汁おとど餃子などのサイドメニューやアルコール類も充実。

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。