門仲に現れた超本格派“清湯中華そば”の名店『支那そばしんば』に注目!|田中一明のラーメン官僚主義!

田中一明のラーメン官僚主義!【第3回】支那そばしんば【門前仲町】
食楽web

種類のラーメンを食してこそ実感できる、榛葉店主の研鑽の足跡

千葉県が誇る成田山新勝寺の別院として名を馳せる「深川不動堂」、「深川の八幡様」の名で親しまれる「富岡八幡宮」など、由緒正しい寺社が街並みを彩る門前仲町。

そんな門前仲町の地に昨年、超本格派の清湯(チンタン)中華そばを提供する1軒のラーメン専門店が誕生。オープンからわずか半年足らずの間に、押しも押されもせぬ人気店へと成長を遂げた。このお店こそが、今回ご紹介する『支那そばしんば』だ。

「支那そば(醤油らーめん)」と「白だしそば」。2種類の醤油ラーメンを用意し、客の訪れを待つ。魚介系(アゴ煮干し、マグロ節、サンマ節、宗田節、真昆布などを使用)と動物系(比内地鶏、もち豚、牛テールなどを使用)のスープを提供直前に掛け合わせる、Wスープ方式。もちろん、「支那そば」と「白だしそば」とで掛け合わせるスープの比率を変えるなど、押さえどころはしっかりと押さえられている。

味の要となるカエシにも、妥協は一切ない。全国各地の醤油を徹底的に吟味し、「支那そば」は、大崎上島の岡本醤油醸造場(広島県)で3年の歳月をかけて熟成させた「再仕込み醤油」(※1)、「白だしそば」は、「究極の白醤油」として誉れ高い日東醸造(愛知県)の「しろたまり醤油」(※2)を厳選。

「支那そば」の醤油はスープ中の動物系成分に寄り添い、「白だしそば」の醤油はスープ中の魚介系成分に寄り添う。カエシの種類を変えるだけで、味蕾が知覚するうま味の構成が様変わりするギミックは、都内の実力店で実直に経験を積んできた榛葉店主のこれまでの研鑽のたまものだ。

このスープに合わせる「三河屋製麺」製のストレート麺も、スープの持ち味を十二分に引き出しながら、自身の魅力をもしっかりと自己アピールしてみせる多才ぶりを発揮。

食べ始めは、カミソリのようなキレ味が印象的なスッキリとした味わい。食べ進めるにつれ、スープに含まれる複数の素材が結合を開始し、ふくよかさとコクが加速度的に増幅。味の「起・承・転・結」がしっかりと感じ取れる「物語性」豊かな1杯に、食べ手は丼を空っぽにするほか術がない。

都内において、淡麗タイプの清湯醤油ラーメンを提供する店舗は少なくないが、全てのメニューをコンプリートしたくなる店は珍しい。スタンダードな淡麗醤油ラーメンを提供する新店の中では、間違いなくアタマひとつ抜けた存在だ。

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(※1)再仕込み醤油とは?
中国地方、九州地方を中心に製造される特産醤油のひとつ。醤油に再度「麹」を加え、さらに熟成を加えるため、通常の醤油と比較して、色・香り・味ともに圧倒的に濃厚なのが特徴。中でも、『支那そばしんば』の「支那そば」に使用される「岡本醤油醸造場」の再仕込み醤油は、熟成期間が3年に及ぶ、手間暇の結晶だ。

(※2)しろたまり醤油とは?
通常の「白醤油」の2倍もの「小麦麹」を使用することにより、濃厚な味わいの創出に成功した特製醤油。なお、同醤油の「しろたまり」は、醸造元である「(株)日東醸造」の商品名。

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●SHOP INFO

支那そばしんば【門前仲町】

店名:支那そばしんば【門前仲町】

住:東京都江東区富岡1-22-26 杉田ビル 3F
TEL:03-5639-2511
営:11:00~15:30 17:00~22:30
休:月曜休 駐車場なし ※毎月第二日曜日は昼のみ営業
支那そば(醤油らーめん)、白だしそば共に850円。肉ワンタンめん(醤油または白だし)1,100円も人気。

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。