超人気店『麺庵ちとせ』が夜だけ営業する『麺や花よ』は必食の旨さ|田中一明のラーメン官僚主義!

曙橋の超人気店『麺庵ちとせ』が、夜だけ営業の煮干系ラーメン『麺や花よ』をスタート! 洗練され尽くした一杯は必食
食楽web

溢れ返るカタクチイワシの滋味が堪らない!
人気店『麺庵ちとせ』の2ndブランドは、店主の技術の粋を尽くした逸品

 2015年5月にオープンし、とことん麺にこだわったラーメン作りで人気店として君臨し続ける『麺庵ちとせ』。そんな同店が夜営業の時間帯を活用し、『麺や花よ』(※1)という別ブランドを立ち上げたのは、2017年12月のこと。

「ウチの店は常連さんが多く、もっと多くの種類のラーメンを召し上がりたいというオファーが根強いんです」と笑う三嶋店主。そんな常連からの要望にできる限り応えようと、思い切って二毛作店のオープンに踏み切ったのだという。もちろん、提供するラーメンの味は、可能な限り食べ手に寄り添ったもの。商品化するに当たっては、来訪客の意見に真摯に耳を傾け、有意義な内容だと思えば躊躇なく採り入れる。

「背脂煮干」790円
「背脂煮干」790円

 そんな『麺や花よ』が現在、主力メニューとして提供しているのが、「煮干」「背脂煮干」「煮干し油そば」をはじめとした煮干系のラインナップ。中でも特にオススメしたいのが「背脂煮干」だ(※2)。

 昼営業の『麺庵ちとせ』で使用される、鶏・牛・海老・牡蠣をベースとした出汁に大量のカタクチイワシをイン。仕上げに、岩手県産銘柄豚「岩中豚」と千葉県産銘柄豚「林豚」の背脂をタップリと注ぎ込む。粒状とゲル状の2種類の背脂を併用するギミックで、コリッとした脂の食感とスープと交錯する脂の甘みが同時に堪能できる「一石二鳥」を狙う。

 口内にスープが飛び込めば、鶏の分厚いコクと煮干しの華やかな旨みとが味覚中枢を歓喜へと導き、その後、間髪を入れずに2種類の背脂が渾身のパフォーマンスを発揮する。絶え間のない研鑽によって素材の持ち味を知り尽くした三嶋店主だからこそ実現できる、ダイナミックな建て付け。食べ手はただ、レンゲを持つ手をひたすら動かし続けるしか術がないだろう。

店主の三嶋さん
店主の三嶋さん

 このスープに合わせる麺も、もちろん盤石の出来映え。店内に設置された製麺室で丹精を込めて創られる自家製。「一般的には、この煮干しスープには多加水麺を合わせると思うんです。が、多加水麺を使うと、どうしても時間の経過と共に麺が延びてしまいます。その欠点を克服するため、低加水麺に、保水性を高める効果がある『製麺用クロレラエキス』を加え、多加水麺っぽい瑞々しさと延びにくさの両立を図ってみました」と三嶋店主。

 実食してみれば、確かに、中盤以降も強靱なコシを維持し続ける極上の食味が実現できていた。麺のクオリティの高さに定評のある同店の名に恥じない傑作だ。

 スープと背脂と麺。その3者が織りなす至高のハーモニーに酔いしれている間に、スープまで一滴残らず飲み干してしまっていた。

・・・・・・・

(※1)『麺庵ちとせ』『麺や花よ』ともに、店主の祖母の名前を屋号としたものである。

(※2)明確な棲み分けはないが、大まかな傾向として店主は、『麺庵ちとせ』ではアッサリとしたテイスト、『麺や花よ』ではコッテリとしたテイストのラーメンを提供していきたいという意図を持っているようだ。

(撮影◎島本絵梨佳)

●SHOP INFO

店名:麺や花よ

住所:東京都新宿区市谷台町18-5
TEL:非公開
営:19:00~21:30
休:水土日祝日

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。