熊本の超実力店『魚雷』が東京進出! ラーメン官僚も唸る『つけ麺 神儺祁』(西巣鴨)の“カレールー付きつけ麺”の実力とは?

熊本の超実力店『つけ麺 魚雷』が東京進出! ラーメン官僚も唸る『つけ麺神儺祁』(西巣鴨)の“カレールー付きつけ麺”の実力とは?
食楽web

 今回は、2022年11月5日にオープンした『つけ麺神儺祁』をご紹介します。同店を手掛けるのは、『つけ麺 魚雷』(魚雷グループ)。魚雷グループは、熊本市の市街地に本店である『つけ麺 魚雷 坪井本店』を構え、市内を中心に複数の直営・系列店を展開し、一大帝国を築き上げている超ビッグネーム。

 熊本に拠点を置くラーメンマニアで、『魚雷』のつけ麺を未食の方はいないのではないでしょうか。端的に言えば、都内で言うところの『六厘舎』、熊本ラーメン界におけるガリバー的存在と言えるかも知れません。そんな魚雷グループが今般、満を持して東京・西巣鴨に『つけ麺神儺祁』を開業。

『神儺祁』の店長として厨房に立つのは、熊本の『魚雷』でじっくりと研鑽を重ねた宮脇聖也氏。「屋号の読みは、『ジンダギ(Jindagee)』。ヒンドゥー語で“人生”を意味する言葉です。人生を美味しいラーメン作りに捧げ、幸福感を与えられるような1杯を紡いでいきたい。そんな気持ちを込めてこの屋号に決めました」とのこと。

 宮脇店長は、地元・熊本の学生だった頃に『魚雷』の味に惚れ込み、アルバイトとして『魚雷』に勤務。大学卒業後、上京してSEをしていたところ、魚雷グループからの東京店出店計画の提案を受け、同グループに入社した人物。『魚雷』の味の要諦を知り尽くした作り手です。

「上京後、各地のつけ麺をかなり食べ歩きました。でも関東のどの店の味も『魚雷』には敵わなかった。少なくとも、私はそう感じました。で、あの味をもう一度食べたいと悶々としていたところにお誘いをいただき、二つ返事で店長就任を決めました。まだ東京にいたかったし、『魚雷』のつけ麺も食べたかったですからね(笑)」(宮脇店長)

白壁に『神儺祁』の3文字が大書された看板が掲げられた、シンプルなファザード
白壁に『神儺祁』の3文字が大書された看板が掲げられた、シンプルなファザード

 宮脇店長が、「東京でも『魚雷』のつけ麺が食べたいと考えている都内在住の熊本県人はきっと多いはず」と話すとおり、私も(熊本県の出身ではありませんが)同様の想いを抱いていたタイミングで舞い込んだ東京店開店の一報。居ても立ってもいられなくなり、さっそく『神儺祁』へ足を運んできました。

 同店の場所は、都営三田線・西巣鴨駅(A3出口)から徒歩3分程度。JR山手線・巣鴨駅からも徒歩圏内です。立地が良いこともあってか、開業してからまだ日が浅いにもかかわらず、営業時間中は、常に店前に長蛇の列が発生する人気ぶり。

他に類を見ない一杯! 「つけ麺(カレールー付き)」とは?

店内風景。2022年11月現在、列に並ぶ前に券売機で食券を購入するシステムを採用し、並び初めから提供までの時間の短縮を図っている
店内風景。2022年11月現在、列に並ぶ前に券売機で食券を購入するシステムを採用し、並び初めから提供までの時間の短縮を図っている

 提供する麺メニューは、「つけ麺」と「魚雷つけ麺」の2種類。熊本の魚雷グループの中には、それ以外の麺メニューを提供する店もあるので、今後、オペレーションが安定すれば、ラインナップの拡充が図られるかもしれませんね。

 本店の屋号である『魚雷』の名を冠し、熊本の各店舗では看板メニューである「魚雷つけ麺」もオススメですが、相応の辛みがあり、食べ手を選びます。よって、初訪問時にまず食していただきたいのは、『つけ麺 神儺祁』では券売機筆頭メニューとして君臨する「つけ麺(カレールー付き)」950円です。

 このつけ麺、デフォルトで数種類のスパイスを絶妙なバランス感覚で調合した「特製カレールー」が別皿で供される、類を見ない1杯。「カレールー」は香辛料に由来するうま味が前面へと押し出されたタイプで、辛みはさほどありません。

「つけ麺(カレールー付き)」950円
「つけ麺(カレールー付き)」950円

「食べるときはこの別皿のカレールーを麺に纏わせて、スープにつけた時にフワリとくるスパイシーな香りと魚介の風味を楽しんでください」と宮脇店長。カウンター席についてから、待つこと10分強。つけ麺の創作に勤しむ店長の俊敏かつ無駄のない所作に目を奪われているうちに、待ちに待った「つけ麺」が登場しました。

 几帳面に折り畳まれた麺に、美しい琥珀色を呈したスープが映える、中濃つけ麺のお手本のような均整の取れたビジュアル。カレールーが注ぎ込まれた「ソースポット」が醸し出すエキゾチックな雰囲気も気分を盛り上げます。

濃厚なスープは豚骨・鶏ガラ等に、魚介素材を重ね合わせたもの
濃厚なスープは豚骨・鶏ガラ等に、魚介素材を重ね合わせたもの

 スープは、おびただしい分量の豚骨・鶏ガラ等の動物系素材をじっくりと丁寧に炊き上げ、芳香艶やかな魚介素材(宗田鰹、カタクチイワシ等)を重ね合わせたもの。

「スープの味は、いわゆる魚介出汁で、各種素材の絶妙なバランスに特にこだわっています。グループ全体の理想として、余分な素材は徹底的に取り除き、適切な素材のみを適量ずつ拾い上げる“引き算の手法”で、引きの強い食味を目指しています」(宮脇店長)

ほどよいとろみと芳醇な魚介の香りが食欲をそそる
ほどよいとろみと芳醇な魚介の香りが食欲をそそる

 確かに、その言葉のとおり、甘辛いカエシの後押しも相まって、すすり上げた瞬間、頬が落ちるような感覚が強襲する垂涎の味わい。最初のひとすすりで、確実に食べ手の胃袋を掌握し虜にする、会心の出来映えです。

三河屋製麺の太麺
三河屋製麺の太麺

 このスープとコラボを組むのは、都内をはじめとする数多くの有名&実力店で採用されている名門・三河屋製麺のモッチリ太麺。中濃スープの深い滋味を過不足なく持ち上げ、口内へと送り込む、まさに“このスープにしてこの麺あり”と言うべき逸品です。

モチっとした麺が、魚介スープのうま味を纏い絶品
モチっとした麺が、魚介スープのうま味を纏い絶品

 実は魚雷グループと『三河屋製麺』さんとのお付き合いはかなり長いそうで、東京に出店したら、魚雷のつけ麺の味のツボを熟知している三河屋製麺さんに東京店の麺づくりをお願いしたいと約束していたとのこと。(※)

(※)現在、熊本の『つけ麺魚雷』では、同地で百年続く老舗製麺所『富喜製麺所』の麺を使用している。

「カレーまぜそば」と化した丼
「カレーまぜそば」と化した丼

 無我夢中で食べ進め、中盤以降、ソースポットのカレールーを麺へと注ぎ込み、カレールーが付着した麺をつけダレにディップすれば、カレーのスパイシーな風味と、スープの甘み・うま味が口内で混然一体となって、箸とレンゲを持つ手が止められない、アグレッシブかつインプレッシブな味わいが現出。

「スープ、麺、トッピングの3者が口の中でピタリと融合するよう、細心の注意を払ってつくっています」という宮脇店長の言葉どおり、「つけ麺」、「カレーまぜそば」、そして「カレーつけ麺」。さまざまな食べ方にトライしている間に、気が付けば完食。

「これからもストイックに美味しい1杯を作っていきたいと思っています。味の良さはもちろん、自分にとっての『魚雷』がそうだったように、足を運べば元気がもらえ、心のよりどころになるようなお店にしていければ」と、語る宮脇店長。

 店長の奥さまのテキパキとした接客も清々しく、つけ麺を食べ終えて店を出る頃には、店長がおっしゃっていたとおり、身も心も明日への活力に満ちあふれているような気がしました。熊本で覇権を勝ち取ったこの1杯、激戦エリア・東京においても、十分通用するのではないかと思います。

宮脇聖也店長のプロフィール

・学生時代、熊本の『魚雷』にて、アルバイトとしてラーメンづくりの経験を重ね、大学卒業後、上京。
・『魚雷』の本拠地である熊本と東京とでは、水、素材から、寸胴の厚み・火力、厨房の温度・湿度に至るまでの、ラーメンづくりに影響するあらゆる要素が異なり、開店当初は、スープの味の調整に苦労したそうだが、現在では味も安定。

●SHOP INFO

つけ麺神儺祁(じんだぎ)外観

店名:つけ麺神儺祁(じんだぎ)

住:東京都北区滝野川7-46-3
TEL:非公開
営:11:30~19:45(火曜は11:30~14:45)
休:水曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。