中板橋『中華そば さわ』の極上「ワンタン麺」のこだわりとは?|田中一明のラーメン官僚主義!

ラーメン官僚が絶讃する『中華そば さわ』(中板橋)の極上「ワンタン麺」とは?
食楽web

ラーメンの街・中板橋が益々ヒートアップ。
同エリアの台風の目となるか!?『中華そば さわ』

 池袋駅を起点とし、埼玉県北西部の寄居町にまで至る東武東上本線。同路線は、区間の大部分が埼玉県に属し、公共交通機関を用いて埼玉のラーメン店を食べ歩くに当たっては必要不可欠な路線。ただ、池袋駅から成増駅にかけての都内の沿線も、都内北部エリア屈指のラーメン激戦区を形成。キラ星のごとく優良店が集う、ラーメン好きにとっての「聖地」と化している。

 2018年12月1日(土)、そんなエリアの一翼を担う中板橋に、またまた有望な新店が誕生した。それが、今回ご紹介する『中華そば さわ』だ。

「ワンタン麺」850円
「ワンタン麺」850円

 店主・森田氏は、2016年7月にオープンし忽ち人気店へとのし上がった『中華そば こてつ』のご出身。同店がキレ味鋭い清湯中華そばを引っ提げ、下北沢の地に一大旋風を巻き起こしたことは、未だ記憶に新しいところ。

店主の森田氏
店主の森田氏

 個人的には『こてつ』が下北沢の方々からの支持を獲得したことにより、同地のラーメンシーンが激変したような気がする。その後『麺と未来』『スパイスラーメン点と線.』といった新進気鋭が立て続けにオープンしたことも後押しし、今やすっかり「百戦錬磨のラーメンマニアが舌鼓を打つ良店が複数立ち並ぶ街」といった印象だ(※)。

 同氏は、そんな『こてつ』で研鑽を重ねるとともに、複数の実力店で地道にラーメンづくりの技術を習得。自店を構える前から幾度もの試作を重ねた努力の人。
「自分が手掛けた1杯が、召し上がっていただくお客さんに元気を与えられるものになれば」。食べ手を立てる謙虚な人柄が、他者の意見に耳を傾けることへとつながる。ひいては、どんどん味を向上させることができるという「正」のスパイラル。オープン当初における店主の姿勢を垣間見る限り、そんな好循環が既に出来つつあるような気がした。

 そんな同店でまず召し上がっていただきたいのが「ワンタン麺」だ。基本メニュー「中華そば」に大ぶりのワンタンを惜しげもなく添えた、修業先でも名品の誉れ高き一品。スープには、鶏ガラ・煮干し・鰹節等のほか「豊潤な鶏のうま味を全面に押し出そう」と丸鶏を使用。「特に、スープを炊く際の温度には細心の注意を払っています。温度によって、素材のうま味の出方が全く変わってきますから」。

 こうした過程を経て完成する1杯は、滋味深い鶏の香りが鼻腔を優しくくすぐった刹那、ドッシリと重厚な節の和風味が味覚中枢を穿つスープが絶品のひと言。そそり立つ巨山のように重厚な出汁と、研ぎ澄まされたナイフのように鋭利なカエシとが織りなすコントラストが最大の魅力。相克しながらも共存するコクとキレ。新店離れした円熟味のあるうま味に、気が付けば一滴残らず飲み干してしまっていた。

 もちろん、麺や具にも一切の抜かりはない。スープを過不足なく持ち上げる名門『三河屋製麺』製の中細ストレート麺の食感はサクリと軽快、箸で摘まめば大量のスープが滴り落ちるワンタンの衣の食感はモッチリと艶やか。

 ここから更にブラッシュアップしていくのかと考えると、興奮の身震いさえ覚える程だ。長蛇の列が出来る前に足を運んでおくことを、強くオススメする。

・・・・・・・

(※)下北沢駅の周辺は、若者人口が多い。若者は濃い味を好む傾向があることから、昔から同地に存在する「老舗」を除けば、数年前までは、ガッツリ系、家系、白湯系等の濃厚タイプのラーメンを提供する店舗が大半を占めていた。

●SHOP INFO

中華そば さわ 外観

店名:中華そば さわ

住:東京都板橋区中板橋25-14
TEL:なし
営:11:30~15:00 18:00〜20:00
休:不定休

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。