これぞ汁なし担々麺の模範解答! 東京・中野『タンタンタイガー』|田中一明のラーメン官僚主義!

これぞ汁なし担々麺の模範解答! 東京・中野の『タンタンタイガー』のこだわりがスゴい
食楽web

タレから麺に至るまでこだわり尽くした、究極の1杯

 ここ数年、都内及びその近郊を中心に安定的な人気を保ち続けている汁なし担々麺。

 同メニューは、広島市においても独自の進化を遂げご当地麺として定着。現在、都内においては「広島式汁なし担々麺」を提供する専門店が続々とオープンし、従来から存在する「ガッツリ系汁なし担々麺」と熾烈な生存競争を繰り広げている状況(※1)だ。東京に生活拠点を構えるラーメン好きで、汁なし担々麺を食べたことがない者は、もはや皆無に近いのではないかと思う。

 そんな汁なし担々麺を、並々ならぬ情熱を持って提供している店舗のひとつが『タンタンタイガー』だ。2016年8月、台東区蔵前に1号店がオープン。今回ご紹介する中野店は、2018年4月13日、店主が満を持して繰り出した2号店となる。同店の店主・東山氏は、「超」が付くほどコアなラーメンマニア。若くして担々麺に魅せられ、そのルーツを探究。究極の汁なし担々麺を創り上げるため、1,000種類を超えるレシピの中からベストな味を選び抜いたという。

「開発に当たっては、胡麻の風味と香辛料の芳香とが寸分の齟齬もなく口の中でハーモライズするバランスとなるよう、徹底的に研究しました」。それだけではない。食味にリズムと躍動感を与えるため、香辛料に先んじて、胡麻のコクが存在を主張する構成を追究。試行錯誤の結果、ファーストアタックで胡麻の芳香が鼻腔を心地良く刺激し、その後、香辛料の辛みとうま味が味覚中枢を歓喜で震わせる1杯が完成。大所高所から素材の持ち味を見極めていることが分かる、規格外の味わいだ。

 好みに応じて、ラー油等から生まれる「辣」の辛み(辛さ)と花山椒から生まれる「麻」の辛み(痺れ)をそれぞれ三段階(小・中・大)から指定できるが、単なる香辛料の分量調整での対応で済ませていない点も流石の一言に尽きる。「『大』にはハバネロを用い『小』には辛みが穏やかなラー油を用いるなど、辛さのレベルに応じて唐辛子の種類を変えています(※2)。レシピも全くの別物ですよ」とこともなげに笑う店主は、もはや芸術家の領域に到達しているようにさえ見えた。

 もちろん、麺に対するこだわりも並大抵のものではない。「汁なし担々麺は、麺にタレが絡み過ぎると啜りづらくなり、絡まなければ味が乗りません。ベストなバランスを探し当てるまでに幾星霜の歳月を要しました」という。その結果、選抜された麺は、タレと水魚のごとく交わりながらも抜群の啜り心地を誇る、オリジナルの太ストレート。まさに「このタレにしてこの麺あり」の逸品だ。

 あらゆるパーツに一切の妥協がない、まさに汁なし担々麺の「模範解答」。是非、中野にまで足を運び、身も心もとろけてもらいたい。

(撮影◎土原亜子)

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(※1)より正確には、【1】中華料理店に従来から存在する汁なし担々麺、【2】「まぜそば」を源流とするガッツリ系汁なし担々麺、【3】広島市のご当地麺のひとつである「広島式」汁なし担々麺の三者が、競合し、しのぎを削り合っている状況。

(※2)加えて、ブレンドする唐辛子の比率や油の温度も変えている。

●SHOP INFO

タンタンタイガー 中野店

店名:タンタンタイガー 中野店

住:東京都中野区新井1-23-22 ヒグチビル2 101
TEL:080-5505-1161
営:11:00~15:00
  17:00~22:00
休:水

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。