『吉岡』の「濃厚魚介ラーメン」は、熟成麺とスープへのこだわりが産んだ至極の味|田中一明のラーメン官僚主義!

目白の人気店『吉岡』が、満を持して田端に凱旋!オススメは、濃度を極めた「濃厚魚介ラーメン」

『吉岡』の「濃厚魚介ラーメン」は、熟成麺とスープへのこだわりが産んだ至極の味わい
木曜と金曜限定の「濃厚魚介ラーメン」(並)800円 | 食楽web

 店舗の場所は、JR田端駅から400m弱。駅から緩やかな坂道を下り、古き良き昭和のノスタルジーを感じる飲食店街に足を踏み入れれば、やがて、褐色のシックな外観が印象的な真新しい店舗が視界に飛び込んでくる。それが、2017年11月1日にオープンした『自家製熟成麺吉岡田端店』だ。

 2015年から、JR目白駅前の居酒屋『鳥メロ目白通店』のスペースを間借りし、昼間のみの営業を続けてきた『吉岡』が、路面店を構え、夜営業を開始した。『吉岡』の常連など、ファンの方々の喜びは並大抵のものではないと推測するが、それ以上に、2年数ヶ月にわたって、その業態での営業を地道に遂行した店主の心意気に、頭が下がるばかりだ。

 そんな『吉岡田端店』の現在の営業スタイルは、火曜と水曜に「濃厚鶏豚ラーメン」、木曜と金曜に「濃厚魚介ラーメン」、土曜と月曜に「マイルド魚介ラーメン」を提供する、日替わりでラーメンの味を変える方式(※1)。「どのメニューの味にも自信を持っていますが、特にオススメなのが、素材のうま味を根こそぎ引き出した『濃厚魚介ラーメン』です」。
『濃厚魚介ラーメン』のスープは、「豚ゲンコツ」「豚足」「鶏ガラ」「モミジ」を14時間かけて煮込んだ動物系出汁と、「サバ」「イワシ」「宗田節」「本枯節」からうま味の粋を搾り取った魚介系出汁とを、掛け合わせたもの。

 「しかも、このスープ。単に、その日に創った出汁だけを用いているわけではありません。動物系出汁は、前日から持ち越したスープをブレンドしているんですよ」。動物系素材の持ち味である、拡がりと厚みのある味わいを極限まで丼に落とし込もうと、長浜豚骨ラーメンの手法としてお馴染みの「呼び戻し方式(※2)」を採用しているのだ。

1週間の熟成を経て、うまさを増した熟成麺
1週間の熟成を経て、うまさを増した熟成麺

 スープに合わせる麺は、「熟成麺」と「打ち立て麺」の2種類からチョイスできるが、断然、熟成麺がオススメ。「丸々1週間かけて熟成させているんです。3日間、5日間など、色々な期間で試したのですが、1週間熟成させた麺のコシとハリがピカイチで。我ながら、その味に魅せられてしまいました」。確かに、大量のグルテンをその身にまとった熟成麺が、スープのうま味と真っ向からせめぎ合うサマはダイナミックで、一度体験すれば記憶から抹消することは困難だ。
 麺を啜り上げれば、麺に付着した豚・鶏の骨太なうま味が、瞬く間に口内を占拠。その後、間髪を入れずに、サバとイワシの高らかな香りが鼻腔をくすぐる。220gの麺量もあっと言う間。気付けば、丼が空になってしまっている魔性の1杯だ。

(撮影◎佐々木和隆)

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(※1)店主の修業先である、千葉県・津田沼の『必勝軒』も、曜日によってラーメンのスープの味を変えている。

(※2)呼び戻し方式とは?
豚骨スープの伝統的な製造方法のひとつ。当日使用したスープの残りを捨てることなく保存し、それを、翌日作った新しいスープとブレンド。その過程を日々積み重ねていくことで、セントラルキッチンでは実現できない、コク深いスープを創り出すことが可能となる。

●SHOP INFO

自家製熟成麺 吉岡 田端店

店名:自家製熟成麺 吉岡 田端店

住:東京都北区東田端2-9-1 第二田嶋ビル1F
TEL:03-6807-6859
営:11:00~15:00 18:00~22:00
休:水・土・日
月・土は「マイルド魚介」、火・水は「濃厚鶏豚」、木金が「濃厚魚介」とスープは日替わり。いずれもラーメン(並)800円、つけ麺(並)850円。その他、トッピングも多数

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。