ラーメン界の天才が手がける名店『中華蕎麦にし乃』が本郷三丁目に誕生 | 田中一明のラーメン官僚主義!

ラーメン界の天才が手がける『中華蕎麦にし乃』が本郷三丁目に誕生|田中一明のラーメン官僚主義!
「中華そば」(750円) | 食楽web

アイデアひとつで、ラーメンはここまで美味くなる!驚天動地の発想で、切り拓くラーメン新時代

 ロケーションは、地下鉄各線本郷三丁目駅から徒歩2分程度。時代に左右されない昔ながらの街並みが情感を誘う本郷の路地裏に、本年2月17日、一軒の新店が産声を上げた。それが、今回ご紹介する『中華蕎麦にし乃』だ。

 同店の店主は、『ミシュランガイド東京2018』のビブグルマン部門掲載店『らぁめん小池』を切り盛りする水原氏。そう、こちらの『にし乃』は、『らぁめん小池』の2号店なのだ。「この『にし乃』では、大人の街・本郷のイメージに合わせ、小手先のギミックに頼らない、長きにわたって愛され続けるラーメンを提供したいと考えてます」と笑う。

 店名の由来は、1号店の『小池』と同様、店主がリスペクトする人物の名前を拝借。「『にし乃』の「乃」の字は、敬愛するアイドルグループ『乃木坂46』からお借りしました。私のことをよく知っている方であれば、これだけで店名の意味合いを理解され、ニヤリとしていただけることでしょう(※)」。ミシュランガイド掲載店を切り盛りするすご腕でありながら、驕りを全く感じさせない気さくな人柄が魅力的だ。

 今回、『にし乃』で提供するラーメンを新たに開発するに当たって、心掛けたことがあるという。「できるだけ価格を抑えるため、身近にある当たり前の素材だけで味を構築することに決めたんです」。このため、いわゆる「ブランド素材」や「銘柄素材」は、ほとんど使わない。

 提供する麺メニューは、現在鋭意開発中である「醤油そば」を除けば、「中華そば」と「山椒そば」の2種類のみ。両メニューのスープと麺は、共通のものを使用。スープは、白醤油・薄口醤油をブレンドしたタレと、大量のカタクチイワシ・昆布に椎茸の足を加えた出汁、アサリ出汁、鶏・豚から採った出汁とを、提供する直前に合わせて作る。

「山椒そば」(750円)
「山椒そば」(750円)

 昆布は、旨みの粋を徹底的に搾り取るため、火を入れる前の水だけに漬け込み、加熱する前にはすべて取り除く。「実はこの業界に入る前に和食の厨房も経験しているんです。昆布って、火を入れなくても十分旨みが採れる素材なんですよ。むしろ、火を入れると雑味が出てしまうんです」。

 同店のスープは、ひと口啜っただけで目が醒めるような、明瞭かつ上質な旨みが最大の持ち味だが、これは、余分な雑味を根絶することによって初めて実現可能なもの。そんな完全無比な味の裏側には、そのような工夫が隠されていたのかと感服するほかなかった。昆布だけではない。滋養味を効率的に抽出すべく、アサリ出汁にはあらかじめ下処理を施したむき身を用いるなど、随所に店主ならではの工夫が光る。

 「味のイメージは、中華蕎麦風にアレンジした饂飩(うどん)といったところでしょうか。それらしく仕上がっているでしょ」と無邪気にほほ笑む店主。「この人はラーメンづくりの天才だ」。思わず、つぶやきの声を漏らしてしまった。

(撮影◎佐々木和隆)

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(※)1号店である『らぁめん小池』は、藤子先生の漫画作品に登場する、ラーメンが大好きな小池さんから拝借したもの。また、2号店である『にし乃』は、店主がファンであるという「乃木坂46」の人気メンバーの名前をモチーフとしたものだ。ちなみに、水原店主は、自分の店の屋号に自分の名前を付けないことをモットーとしている。

●SHOP INFO

中華蕎麦にし乃

店名:中華蕎麦にし乃

住:東京都文京区本郷3-30-7
TEL:非公開
営:11:30~15:00、18:00~22:00
  土 11:00~15:00
休:日

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。