今年最大級の注目店『中華そば 梟』。研ぎ澄まされたアジ煮干しに震えろ|田中一明のラーメン官僚主義!

今年最大級の注目店『中華そば 梟』。研ぎ澄まされたアジ煮干しに震えろ|田中一明のラーメン官僚主義!
食楽web

数々の実力店で研鑽を重ねた超実力派店主の、研ぎ澄まされた旨みが味覚中枢を直撃

 早いもので2018年も6月に入り、現在、都内各地では怒濤の勢いで新店が産声を上げているところ。そんな数多くのニューフェイスの中でも、今回ご紹介する『中華そば梟』は、クオリティ、オリジナリティともに一歩抜きん出た存在です。

「他にはない味を探求しています」と笑顔で語ってくれた店主の永田さん
「他にはない味を探求しています」と笑顔で語ってくれた店主の永田さん

 同店の店主は、数々の実力店でじっくりと腕を磨き、私を含む一部のラーメン好きから「いつ店を出すのか」と、独立開業を嘱望されていた永田氏。客観的にみても、少なくとも5年前の時点で、一国一城の主たるに相応しい実力を身に付けていたのではないかと、私は思う。ご本人は「とんでもない。そんなことはありません」と謙遜するに違いないが。

 そんな永田店主が、各店舗での修業を終え、更に随所で間借り営業を重ねた後、6月1日、ついに新店をオープン。ロケーションは、東急池上線蓮沼駅から徒歩1分弱。店舗は、『らーめんほしの』、『麺処にそう』など、錚々たる良店を輩出してきた由緒正しい物件だ。

「アジ煮干 中華そば」750円
「アジ煮干 中華そば」750円

 そんな『中華そば梟』が提供するメニューは「中華そば」と「辛いそば」の2種類のみ。
「私は、決して器用な作り手ではありません。他の作り手の方々は『汁そば』と『つけ麺』を作り分けたりしていますが、到底真似できませんよ。心の底から尊敬します」と言うが、私に言わせれば、氏のそのような考えこそが、ラーメンに対する真摯な姿勢の現れ。手掛けるメニューが、妥協のないものであることを示す指標に他ならない。

鯵の旨みが染み出したスープは、醤油、鶏出汁の味もしっかりと感じられる優しい味
鯵の旨みが染み出したスープは、醤油、鶏出汁の味もしっかりと感じられる優しい味

 これら2種類の中で、最初に召し上がっていただきたい看板メニューは「中華そば」。
 スープの主役は、鰺(アジ)の煮干し。店に足を踏み入れた瞬間から甘美な芳香で嗅覚が悦び、ひと啜りで味覚が打ち震えるほど豊潤な煮干出汁は、鰺の持ち味を極限まで活かした絶品。そんな煮干出汁に、絶妙なさじ加減で鶏出汁の滋味を添え、地に足がついた骨太な味わいを創り出す。研鑽の跡が垣間見える付け焼き刃ではないギミックが、確実に食べ手に好印象を刻み込む。

「懐かしの固ゆで玉子」100円
「懐かしの固ゆで玉子」100円

 店主の視線は、味のみならずその先をも見据える。「提供するラーメンにテーマ性を持たせてみようと考えたんです」。試行錯誤の結果、食べ手のノスタルジーを惹起するトッピングとして「麩」と「ミョウガ」、有料トッピングとして「固ゆで玉子」 (※)を採用。スープをたっぷりと湛えた麩を噛み締め、甘辛い下味が深奥まで沁み込んだ玉子をガリッと囓る。幾種にも及ぶ上質な旨みの波状攻撃を前に、図らずも至福のため息を漏らしてしまった。

軽やかな歯応えが印象的なストレート麺とスープの相性も抜群
軽やかな歯応えが印象的なストレート麺とスープの相性も抜群

「もちろん、現状が完成形ではありません。これからも、どんどん味を進化させていきますよ。例えば、スープに使用する水に磨きを掛けてみるとか」と意気込む永田店主。これまでに店主が習得してきた知識と技術のストックが膨大であることは、周知の事実。今後の展開からも目が離せない2018年最大級の注目店だ。

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(※)「味付け玉子」や「温泉玉子」は現在、多くの店舗で「定番アイテム」として提供されている。懐かしさを惹起させるアイテムとして、あえて「固ゆで玉子」を採用してみるのも面白いのではないかと着想し、採用に至ったとのこと。

●SHOP INFO

中華そば梟 店内

店名:中華そば梟

住:東京都大田区東矢口3-1-11
TEL:080-3556-2960
営:11:00~16:00
  18:00~21:00
休:なし

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。