ラーメン官僚も唸る! 上井草『らーめん よっちゃん』はなぜ旨い?

ラーメン官僚も唸る! 上井草『らーめん よっちゃん』はなぜ旨い?
食楽web

ラーメン好きが高じ一国一城の主に。店主は独学でラーメン作りを会得

 西武新宿線上井草駅改札から足を踏み出した瞬間、視界に飛び込む人情味あふれる商店街。上井草エリアは、肩ひじを張らない生活を望む人たちにとって、間違いなく暮らしやすい街のひとつだ。

 加えて、上井草は「サンライズ」「シャフト」といった、名だたるアニメーション制作会社が拠点を構えるアニメの街としても知られる。上井草駅構内の電車発車メロディも、「サンライズ」が手掛ける名作アニメ「機動戦士ガンダム」の主題歌だ。

 さて、今回ご紹介する『らーめんよっちゃん』は、そんな上井草の地に、本年5月27日にオープンした出来立てホヤホヤの新店。店舗の場所は、上井草駅南口改札から徒歩1分足らず。駅と住宅街とを繋ぐ動線上に位置するため、店の前を往来する人々も多数。集客を得るには絶好のロケーションだろう。

らーめん よっちゃん

「上井草は、地方から東京に出てきた私が初めて過ごした想い出の場所。この地の人たちに、私が手掛けたラーメンを召し上がってもらいたいと考え、店を出しました」。そう語る長井店主は、いずれの店でも修業することなく独学でラーメン作りを会得。

「元々、私は大のラーメン好きで。いつかは自分の店を持つことが夢だったんですが、その際、心に決めていたのは『できるだけ既成概念にとらわれず、自分が抱いたイメージに忠実な1杯を独力で創り上げること』だったんです」。

店主の長井さん
店主の長井さん

 この決意を現実のものとするため、ラーメン作りに必要な情報をインターネットから地道に入手し、YouTubeを観ながら調理の仕方等ラーメン作りのノウハウを習得。

「勉強を重ねていく過程で、色々な発見がありました。例えば、高級素材を使うだけで、必ずしも良い味が出せるわけではないことや、用いる素材の分量を少し変えるだけで、味の印象が激変すること。こういった『気付き』は、手本となる師匠がいない独学だったからこそ、得ることができたものかもしれません(※1)」。

 いずれにせよ、好きなことを仕事にできるという喜びが勝り、開発の際に壁にぶつかっても苦痛を感じることは殆どなかったという。職業人であれば、分野を限らず範としたい見上げた心意気だ。

「らーめん」800円
「らーめん」800円

 現在、同店が提供する麺メニューは、醤油ベースの「らーめん」及びそのバリエーションのみ。「私はまだ、ラーメン職人人生のスタートを切ったばかり。なので、当分の間は多くを望まず、地に足を付けて、この店の基本の1杯である『らーめん』だけに全力を傾注したいんです(※2)」。

 開発するに当たっては、特に、スープを採る鰹節の種類と香味油の製法に徹底的にこだわったという。「鰹節に関しては、試作の際に何十種類も取り寄せ、これぞBESTだと太鼓判を押せる素材を厳選しました。あと、香味油に関しては、完全に我流の方法で創り上げました。この2点で、独創性が相当表現できたのではないかと思います」と笑う。

 確かに、スープを啜り上げたときに、鼻腔・味蕾が感知する香りの分厚さ、うま味の芳醇さたるや、凡百の1杯とは一線を画する。堅固な土台を築く鶏ガラの滋養味も後押しし、カエシも、一滴一滴が身体中の細胞に沁みわたるようなコク深さ。派手さこそあまり感じないものの、食べ手に鮮烈な印象を残すだけの訴求力は十分にある。

 50種類のサンプルの中から「このスープにはこの麺しかない」と選び抜いた『三河屋製麺』製の中細ストレート麺も、スープを過不足なく持ち上げる縁の下の力持ち。

 気が付けば、丼が空っぽになってしまっていた。独学の店主の手による新規オープン店とは思えないほど、完成度が高くセンスを感じる1杯。足を運ぶなら、知名度があまりない今が、絶好の好機だ。

・・・・・・・

(※1)より具体的には、作りたいラーメンの味のイメージは比較的早い段階で固まっていたが、イメージどおりの味を作ることに試行錯誤したとのこと。
(※2)「らーめん」を開発する過程で生まれた、別メニューの開発に資するアイデアがいくつかあり、営業が軌道に乗れば、それらのアイデアを基にした新メニューを提供していきたいとのこと。

●SHOP INFO

らーめん よっちゃん 外観

店名:らーめん よっちゃん

住:東京都杉並区上井草3-33-22 ライオンズマンション上井草・池田 1F
TEL:03-5303-9496
営:11:00~15:00、17:00~スープがなくなり次第終了
休:日曜、祝日

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。