荻窪『味噌っ子ふっく』の濃厚なコクうま“味噌ラーメン”が旨い理由|田中一明のラーメン官僚主義!

荻窪『味噌っ子ふっく』の濃厚なコクうま“味噌ラーメン”が旨い理由
食楽web

店舗とともに師の想いも受け取り飛躍を誓う!
新店ながら堂々たるスケール感

「屋号は、食べ手に親近感を抱いてもらえるよう『味噌っ子』としました。『ふっく』は、私のDJネームから採ったものです」と笑う福重店主。聞けば、『味噌っ子』という店名は、環七通り沿いの名店『土佐っ子(閉店)』(※)等から着想を得たものだという。常盤台の『土佐っ子』は1998年に閉店し、現在は関連店を残すのみであるが、未だなお根強いファンが存在する。かく言う私も『土佐っ子』ファンのひとり。店名の由来を伺い、店主に対する親近感が一気に高まったような気がした。

 そんな福重店主が切り盛りする『ふっく』は、2018年10月1日にオープンしたばかりの新店。店主は、野方の味噌ラーメンの全国的名店『味噌麺処花道』において5年間かけてじっくりと腕を磨き、この度、満を持して独立。店舗は、2016年4月に開業し荻窪屈指の人気店として君臨してきた『花道』の2号店『味噌麺処楓』の跡地。師匠の想いが、店舗という形で弟子へと託された形。店舗だけではない。白地に黒で愛らしい丼の絵が描かれた暖簾もまた、修業元『花道』からの贈り物だ。

「味噌らーめん」800円
「味噌らーめん」800円

 現在、『ふっく』が手掛けているのは、修業先の定番メニューでもある「味噌らーめん」と「辛味噌らーめん」の2種類。中でも、初訪問時に召し上がっていただきたいのは味噌本来のうま味とコクが思い存分堪能できる「味噌らーめん」。

 スープの出汁は、鶏ガラと豚ガラを6対4の割合で寸胴に投入し、モミジや香味野菜(ジャガイモ・生姜・タマネギ・ネギ等)を加えた上でじっくりと丁寧に炊き上げたもの。出汁だけではない。味噌ラーメンの印象を決定付けるキーアイテムとして、味噌にも並々ならぬこだわりを見せる。中華鍋で炒める味噌にはキレのある「信州味噌」、味噌ダレには芳醇な「仙台味噌」を用いることで、喉元でピタリとうま味が収束するベストバランスを実現。加えて、味噌を炒める際にラード・ニンニク・豚挽き肉・タマネギを合わせバリエーション豊かな風味を溶かし込むことで、口内で春夏秋冬のごとく移ろう立体感のある味わいの構築に成功している。

店主・福重さん。来月には坦々麺スタート予定
店主・福重さん。来月には坦々麺スタート予定

 最初のひと口で頬が落ちそうな感覚が味わえる味噌ラーメンと出逢える機会は、数多くのラーメン店に足を運んでも、なかなかないのが現実。そんな中、『ふっく』の1杯は、オープンして間もない新店でありながら、既にその領域に到達。

 このスープに合わせる麺は、名門『三河屋製麺』製の極太ストレート。拾い上げるスープの分量は、まるで最新鋭のIT機器で計測したかのように正確無比。舌上で奏でられる麺とスープの麗しきハーモニーに、思わず「この至福の時間が永遠に続けば良いのに!」と希(こいねが)ってしまった。そこまでの完成度に達しながらもなお、「自分はまだスタート地点に立ったばかり。これから自分自身の個性を、どんどん味に落とし込んでいかなければ」と自戒する店主。今後、どこまで伸びるのか。天井知らずのポテンシャルを秘めた1軒だ。

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(※)『土佐っ子ラーメン』とは
1987年、世田谷区羽根木に創業した『なんでんかんでん』と並び、1990年代半ばまでの都内ラーメンシーンの頂点に君臨した、背脂チャッチャ系の名店。『土佐っ子』『なんでんかんでん』ともに環状七号線沿いに店舗を構え、時には道路渋滞すら引き起こすほど凄まじい人気を博した。

●SHOP INFO

味噌っ子ふっく 外観

店名:味噌っ子ふっく(みそっこふっく)

住:東京都杉並区上荻2-40-11 四面道ビル 1F
TEL:03-6913-6649
営:11:00~15:00、18:00~21:00、月曜は11:00~15:00のみ
休:火曜

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。