2017年、最注目のラーメン店「かしわぎ」が最強に旨い理由|田中一明のラーメン官僚主義!

2017年組の新人王候補!「静」の塩と「動」の醤油の二頭馬車態勢で窺う首都の覇権

2017年、最注目のラーメン店「かしわぎ」が旨い理由とは?|田中一明のラーメン官僚主義!
醤油ラーメン680円 | 食楽web

 6月2日。この日は、2017年の東京ラーメンシーンのメモリアルデーとなるだろう。
 オープン後わずか数日で店の前に長蛇の列が発生。ラーメン好きはもちろん、それ以外の方々も皆「ラーメンの好みは人それぞれだが、『かしわぎ』のそれは間違いない」と口をそろえる。

 同店の店主・今田氏は、2014年のラーメンシーンにその名を刻み込む東京・野方の実力店『麺処今川』(※1)の共同経営者のひとり。残念ながら同店は、同年11月に惜しまれながら閉店したが、同氏が創り上げる「らーめん鶏」は水準が高いと評判で、数多くのラーメンファンからの支持を得ていたところ。

『麺処今川』で厨房に立った経験を踏まえ、今回、今田店主が『かしわぎ』で提供するのは、ラーメン好きのみならず、より一般層にも膾炙(かいしゃ)する豚ベースの清湯ラーメン。ジッと見つめると丼の奥底へと吸い込まれるのではないかという錯覚に陥るほど、透明度が高い豚清湯出汁。その出汁に、豊潤なうま味を放つアサリ・昆布などを絶妙なさじ加減で加えて創られたスープ(※2)は、ひと口啜った瞬間、比喩ではなく「頬が落ちそうになる感覚」が実感できるほど。

 同店では、このスープをフル活用した「塩ラーメン」と「醤油ラーメン」の2種類を用意。

2017年、最注目のラーメン店「かしわぎ」が旨い理由とは?|田中一明のラーメン官僚主義!
塩ラーメン(680円)

「塩ラーメン」には、試行錯誤を重ねて選び抜いた天然塩に、アサリの滋養味をふわりと被せた塩ダレを使用。堅固な豚の土台にその身を預け、舌上でうま味の円弧を描き出す穏やかなタレの味わいに、蓄積された心身の緊張がほぐれてゆく。各種素材の役割も、店主の完璧な指揮の下、明確に定義付けられ、どこまで箸を進めても安定感が揺らぎを見せることはない。
 他方、「醤油ラーメン」のタレには、名刀のようなキレ味と牛車のような力強さを持ち味とする醤油に、重厚なうま味を蓄えた煮干しを使用。ドッシリとした豚の存在感はしっかりとキープしながら、タレが全体を雄々しく牽引する味わいに、脳内から大量のアドレナリンが噴き出す。従来の醤油清湯とは一線を画した味わいであることも、特筆に値する。

 京都の名門製麺所『麺屋棣鄂』のしなやかなストレート麺を採用するなど、重要アイテムの選球眼も完璧。
「静」の塩と「動」の醤油。テイストこそ対照的な両者だが、いずれも必食であることは間違いない。胃袋のスペースを空けて2杯とも食べることを、強力にオススメする。

(撮影◎松山勇樹)

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(※1)『麺処今川』とは?

 2014年4月から同年11月にかけて、西武新宿線野方駅前に存在した店舗。神奈川の『神勝軒』出身の今田氏(『かしわぎ』の店主)と、東京の『麺処ほん田』出身の川久保氏の2人が共同で立ち上げた店で、今田氏は鶏ベースの「らーめん鶏」、川久保氏は魚介ベースの「らーめん魚」を提供していた。『今川』という屋号は、今田氏と川久保氏の名前から1文字ずつ採ったもの。
 都内の14年組の中では指折りの人気店だったが、味以外の諸事情により7ヶ月で閉店してしまった。今田氏による新店のオープンを待ち侘びていた方も多かったはずだ。

(※2)その他、若干量ではあるが、煮干し、サバ節なども使用している。

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●SHOP INFO

2017年、最注目のラーメン店「かしわぎ」が旨い理由とは?|田中一明のラーメン官僚主義!

店名:かしわぎ

住:東京都中野区東中野1-36-7
TEL:非公開
営:11:30~15:00
休:なし
替玉100円、日替わりで、TKGなどの「お昼のご飯メニュー」を120円で提供

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。