できれば、秘密にしておきたい! サービスの良さと味の良さを兼ね備えた、路地裏の穴場店
「お客様にはお腹いっぱいになるまで召し上がっていただき、満足して帰ってもらいたい」と、精一杯のもてなしをしてくれるハートフルな店主。
そんな店主が腕を振るう店舗が、今回ご紹介する『西っぺの店』だ。オープンは、2018年3月7日。ロケーションは、古き良き昭和の町並みを残した商店街の一角。店主は、18歳で東京赤坂の『四川飯店』の門を叩き、陳建民・陳建一親子の下で9年間修業。『四川飯店』と言えば、泣く子も黙る中華料理の名門として知られる。
てっきり、緊張感のある雰囲気に包み込まれているのではないかと身構えながら入店したが、接客は、冒頭で述べたとおり、気取りを感じさせない気さくなもの。「もしかすると敷居が高い店なのではないか」という心配は、全くの杞憂に終わった。
『西っぺの店』が提供するメニューは、「担々麺」「スープ無し担々麺」「酸辣湯麺」等の麺類のほか、「麻婆豆腐」「チャーハン」等の一品料理。中でも「担々麺」は「日本人の口に合うように」と、日本で初めて「汁あり担々麺」を開発・提供した『四川飯店』のDNAを色濃く受け継いだ必食のひと品。同じく、『四川飯店』仕込みの「麻婆豆腐」とセットでいただくのがオススメだ(※)。
「担々麺」のスープは、舌上で転がせばフワリと酸味が立ち上がり、食欲の深奥を穏やかに刺激。酸味と手を取り合いながら鼻腔をくすぐる胡麻の風味も、過不足を感じない絶妙な塩梅へと落とし込まれている。胡麻の香ばしさとコクが、酸味を鎹(かすがい)として更なる伸びと拡がりを見せる構成は、真摯な試行錯誤のたまもの。
担々麺の味を決定付ける主役の座を担う、香辛料&挽肉の完成度も申し分なく高い。辛みを程々のさじ加減へと抑え込む代わりに、スパイス感を全面的にフィーチャー。甘辛い下味がたっぷりと沁み込んだ挽肉も、スープの味わいを損なわないベストな仕上がりだ。
麺もまた、ハイクオリティのひと言に尽きる。柔らかめに茹で上げられた中細麺は柳枝のようなたおやかさ。スープの持ち上げが良好であることはもちろん、適量の挽肉をしっかりと絡め取り、食べ手を桃源郷へと誘う。
「麻婆豆腐」も、本格派中華料理店に勝るとも劣らない会心の出来映え。使用されるラー油は下品なべた付きを排し、旨みと香味だけを的確に斬り出した逸品。ピリリと痺れる花山椒をガツンと利かせ、箸を持つ手が止められない惹きを演出。セルフサービスのライス(お代わり自由)を取りに伺うと「遠慮せずに、もっと沢山装(よそ)って下さいよ」と、店主が声を掛けて下さった。通い詰めれば、最高のオアシスになりそうだ。
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(※)券売機に、担々麺と麻婆豆腐のセットメニューである「得担々麺・麻婆」のボタンが設置されており、そのボタンを押せば注文完了。
(撮影◎島本絵梨佳)
●SHOP INFO
店名:西っぺの店
TEL:非公開
住:東京都大田区大森本町2-31-7
営:11:30~14:00、17:30~21:30、土11:30~15:00、17:30~20:00
休:日
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。