“ネオクラシック系”ラーメンの旗手! 糀谷『ちゃるめ』の「中華ソバ」がうまい理由

“ネオクラシック系”ラーメンの旗手! 糀谷『ちゃるめ』の「中華ソバ」がうまい理由
食楽web

1日2回採るスープの鮮度は抜群!糀谷に降臨した大型新店

「糀谷は、年配の方や家族住まいが多いエリア。このような地域性に思いを馳せ、お子様からお年寄りの方まで、幅広い世代のお客さんに満足していただけるような味づくりを目指しています」。そう語る岩瀬店主は、今般の独立に至るまでに、ラーメン職人として着実な研鑽を積み重ねてきた実力派。

 今回ご紹介する『中華ソバちゃるめ』は、2019年2月7日にオープンしたばかりの新店。店舗の所在地は大田区萩中。京急空港線糀谷駅から徒歩3分程度の好立地。白色を基調としながら赤と黒を効果的に採り入れた外観は、敷居の高さを全く感じさせず、訪問客を選ばない。

「中華ソバ」780円
「中華ソバ」780円

「店舗の場所を糀谷に決めた理由は、この地が私の地元だからです」。屋号の『ちゃるめ』も、地元の仲間から命名された店主のニックネームを採用したものだという。「友人が申すには『岩瀬は【チャルメラ】と呼ぶには未熟。だから【ラ】を抜いて【ちゃるめ】』なんだそうです」。そう言って笑う店主から地元愛がひしひしと伝わってきた。

 現在、同店が提供する麺メニューは「中華ソバ」「塩中華ソバ」の2種類。いずれのメニューの人気も上々だが、初訪問時に召し上がっていただきたいのは、券売機の一列目を占拠する「中華ソバ」及びそのバリエーション。

「地元のお爺ちゃんやお婆ちゃんが自分の孫を連れて訪れたくなるような、そんなお店にしていければ良いなと思っています」と、インパクトや刺激的なうま味に頼った安易なアプローチを一蹴。そんな真摯な姿勢で手掛ける1杯は、改めて申し上げるまでもなく、手間ひまの結晶だ。

 スープは、豚ゲンコツ・豚背ガラ・鶏ガラをじっくりと炊き上げて採った動物系出汁と、羅臼昆布・宗田節・サバ節の滋味を搾り取った魚介出汁とを、提供する直前にブレンドしたもの。「常にフレッシュな状態で提供できるよう、動物系出汁は1日に2回採っています」。清湯スープづくりは、各素材の分量の多寡や風味の善し悪しなど、チェックすべき事項が多岐に及び、心身に及ぼす負担が大きい。それを1日に2度行うのだ。その一点だけでも、この1杯が並大抵のものでないことが分かるだろう。

 スープだけではない。香味油にネギ・玉ネギ・ニンニク等の野菜を駆使し、麺を啜り上げた際に芳香が舞い立つようなギミックを施すなど、個々のパーツに対する気配りも完璧だ。

店主の岩瀬さん
店主の岩瀬さん

「召し上がったお客さんに懐かしさを感じてもらえるような味。それでいて、古臭くない。そんな1杯を創っていきたい」というのが岩瀬店主の抱負。
 舌上でスープを転がせば、各種素材が代わる代わる頭をもたげ存在を主張。複雑玄妙なうま味が生む複層的な味わいに、思わず歓声を上げてしまいそうになる。それでいて、全体的な印象は質実剛健。流行に阿るような軽佻浮薄さは全く見当たらない。

 気が付けば、丼を空っぽにしてしまっていた。伝統と新しさが絶妙な塩梅で同居。2019年における「ネオクラシック系」(※)ラーメンの旗手となる可能性を秘めた良杯だ。

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(※)ネオクラシック系とは?
鶏ガラ・野菜等から出汁を採った「昔ながら」の中華そばを、店主の創意工夫等によって、新しさが感じられるものへと再構築したラーメンジャンルの総称。
他の数多くの「ラーメン用語」と同様、具体性を伴った定義が存在するわけではないので、どのようなラーメンがネオクラシック系に属するのかについての判断は、人によって区々である。(というか、そうならざるを得ない。)

●SHOP INFO

中華ソバちゃるめ 外観

店名:中華ソバちゃるめ(ちゅうかそばちゃるめ)

住:東京都大田区萩中2-1-4 丸栄ビルEAST 1F
TEL:03-6423-2598
営:11:00~15:00、18:00~21:00、日曜祝日11:00~15:00
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。