スープも麺も完璧! 新星八王子ラーメンを『八王子 響』で味わうべし|田中一明のラーメン官僚主義!

田中一明のラーメン官僚主義!【第11回】八王子 響【八王子】

食楽web

人気店で腕を磨き待望の独立! 八王子ラーメンと背脂煮干しラーメン

 東京都多摩地区随一の人口集積地であり、かつ、都内唯一の中核市(法定人口が20万人以上の都市)に指定されている八王子市。JR八王子駅及び京王八王子駅の周辺は二十三区顔負けの繁栄ぶりだが、20分も歩けば浅川の清流に抱かれ、遠方に山麓を望む長閑な住宅地が広がる。

 『八王子 響』は、2017年1月25日、そんな住宅地と繁華街の端境、平岡町にオープンした新店だ。店主・木田氏は、福生『ら~めん煙』や立川『貝出汁しっぽりラーメン純子』などの人気店で店長を歴任(※1)。着実に実力を蓄え、この度満を持して独立を果たした。

 同店で木田店主が手掛けるレギュラーメニューは、店主自身が無上の愛情を注ぎ込む「八王子ラーメン」(※2)と「背脂煮干しラーメン」の2種類。

「限定メニューを追究していくことで、レギュラーメニューの味も向上する」という信条に基づき、「甘海老鶏白湯ラーメン」「追い鰹鶏中華そば」などの限定も精力的に創作する。これまで地道に培ってきた技術を惜しげもなく披露するサマは天衣無縫。まるで「水を得た魚」のようだ。

 今回、私が戴いた券売機筆頭メニュー「ラーメン」は、先述したレギュラーメニューのひとつである「八王子ラーメン」。優麗な琥珀色を呈した醤油ベースのスープの中を、骨太な中細ストレート麺がどっしりと鎮座。スープの表面に層を形成する自家製ラードからは芳香が立ち昇り、丼の中央部に小山を形成する刻み玉ねぎの「白」が目に眩しい。

 豚骨の豊満なコクと香味野菜のナチュラルな甘みを絶妙なバランスで掛け合わせ、煮干し・昆布から採った出汁をブレンド。「オープンしてからも幾度も改良を重ねた」というスープは、味蕾から味覚中枢にしんしんと沁み入る昆布のうま味が、動物系素材の持ち味を限界まで引き出す渾身の出来映えだ。

 ズズっと啜り上げた麺を噛み切ると、プツンという音とともに小麦の香りが軽やかに舞い上がった。聞けば、多摩屈指の実力店『いつ樹』で作られた麺を使用しているとの由。オープン早々にして、スープから麺に至るまで一切の隙は見当たらない。是非とも一度足を運び、実力派店主の本気を肌身で体感していただきたい。

(撮影◎田中一矢)

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(※1)ラーメン店における「店主」と「店長」の違いとは?
「店主」は店舗の経営者・オーナーのことで、「店長」は店舗の従業員の中の最高責任者のこと。これは、ラーメン店に限らず一般的に当てはまる定義だが、ラーメン店に特筆すべき事柄として、「店長」は「店主」の意向に沿ったラーメンしか作ることができない場合が散見されるということがある。
「店主」が作り手を兼ねていれば、自身が作りたいラーメンを自由に創作できるので、何の問題も生じない。が、「店主」が純粋な店舗の経営者・オーナーで、ラーメン作りを「店長」に委ねているような場合、作り手である「店長」が作るラーメンが「店長」自身が本来作りたいものではない可能性も生じる。

(※2)八王子ラーメンとは?
 東京都八王子市を中心に広がるご当地ラーメン。【1】タレが醤油ベースであること、【2】具として刻み玉ねぎを使用すること、【3】ラード油を使用することが「八王子ラーメン」の大きな特徴。ラード油が玉ねぎの辛みを抑え、甘みを引き立てる。
 昭和34年に創業した『初富士』が「八王子ラーメン」の元祖とされ、現在も西八王子の地で健在である。現在ではかなりメジャーな存在となった「八王子ラーメン」。その原点となる味を求めて、『初富士』に足を運んでみるのも一興だろう。

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●SHOP INFO

八王子 響

店名:八王子 響

住:東京都八王子市平岡町15-14 明光ビル1F
TEL:非公開
営:11:30~15:00(LO)、18:00~20:30(20:20LO)、水・日11:30~15:00(LO)
休:主に月曜(SNSで毎月告知)
https://twitter.com/hachozihibiki
八王子ラーメンは650円、背脂煮干ラーメンは750円。大盛りは100円。

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。