ラーメン激戦区・三田に期待の新星が誕生! 牛の魅力を徹底追求した珠玉の1杯
名門・慶應義塾大学のお膝元に鎮座する「慶応仲通り商店街」。飲食店、居酒屋、スナック・バーから、カラオケボックス等の娯楽施設に至るまで、数多くの店舗が所せましと立ち並ぶ同商店街は、慶應義塾の関係者はもちろん、近隣の企業に勤務するビジネスマンで日夜賑わう、オアシス的な存在。
立地上、顧客の少なからぬ割合が学生で占められていることから、銀座や新橋の飲食店街と比較して、相対的に低価格で食事ができる業態の店舗が目立つのが特徴。このため、同商店街の一帯は伝統的にラーメン店が多く、ラーメン好きにとっても、決して軽視することができないエリアとして位置付けられているところである。
そんな「慶応仲通り商店街」の一画に、2019年10月7日にオープンしたのが、今回ご紹介する『拉麺五瞭(ごりょう)』だ。
「『五瞭』という店名は、三味線奏者である母親の芸名から拝借しました。お店を開業するに当たって、最もお世話になったのが母親だったので」。そう言って笑う加藤店主は、柔らかな物腰と屈託のない人柄が同居する、愛されキャラ。
同店が提供するのは、「牛」をベースとしたラーメンとハヤシライス。看板メニューは、券売機左上に燦然と輝く「牛骨白湯(コムタン)」だ。
「ラーメン職人になる前、焼肉料理店で10年間働いていたことがありまして。その頃から常々疑問に思っていたんです。鶏白湯や白濁豚骨ラーメンを出す店は星の数ほど存在するのに、どうして、牛白湯ラーメンを提供する店は殆どないのかと」(加藤店主・以下同)
適切な方法で牛骨を炊き、出汁をキチンと採れば、そのスープは、鶏や豚にも勝るとも劣らないはず。牛の魅力を知り尽くした店主のそんな想いがカタチとなって結実したのが、この『五瞭』であり「牛骨白湯」なのだ。
「素材本来の味を、とにかく丁寧に表現したい。お客さまに牛が持つ等身大の魅力をお伝えしたいから」と、動物系ラーメンの作り手が陥りがちな濃度至上主義的な考え方を一蹴。牛骨を煮込む時間は、その味が最も正しい形で食べ手に伝わるさじ加減にとどめ、出汁のパートナーとなるカエシ(塩ダレ)にも、牛の風味の引き立て役を担わせる。
スープだけではない。1杯の丼の中で牛の魅力を極限まで表現するため、牛骨の周りに付着する肉から搾り取った「油」を使用する、トッピングとして牛の旨みが凝縮された「そぼろ」を採用するなど、そのこだわりようは生半可なものではない。
「これまで、焼肉料理店や、功成り名遂げたラーメン店(※)でお世話になり、色々な経験を積ませていただきました。また、母親を始め、大勢の方々からのご協力も賜りました。今般、私が店を持つことができたのは、そんな皆様方のご尽力のおかげです」
これからは、自分がお客さんを喜ばせる立場に回りたい。そんな店主の想いが込められた1杯は、舌上で穏やかに膨らむ牛の旨みと、鼻腔を心地良く刺激する牛の香りに、レンゲを持つ手が止まらない魔性の味わい。
名門『三河屋製麺』製のストレート麺も、スープと、まるで長年連れ添った夫婦のような相性の良さを示す。牛そぼろをひとつ残らず掬い取ろうと躍起になっている内に、いつの間にか丼が空っぽになってしまっていた。
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(※)鶏白湯ラーメンの人気店『銀座篝』と、北海道・札幌発の実力店『えびそば一幻』での勤務経験あり。
●SHOP INFO
店名:拉麺五瞭
住:東京都港区芝5-24-7 ハウス花田2
TEL:03-6722-6111
営:11:00~23:30(L.O.23:00)
休:日曜、祝日
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。