今、ラーメンは方南町がアツい! 貝出汁×鰹節の旨さが光る『貝節麺raik』|田中一明のラーメン官僚主義!

鰹使いの達人が満を持して2ndブランドを始動!貝と節が紡ぐ薫りのシンフォニー
食楽web

鰹使いの達人が満を持して2ndブランドを始動! 貝と節が紡ぐ薫りのシンフォニー

 今、都内のラーメンシーンは方南町が熱い。本年2月には『濃厚ラーメンかなや』がオープンし、「濃厚」民族(※1)を中心に大いに話題となった。そんな状況の中、3月16日、東京メトロ丸ノ内線方南町駅から徒歩2分弱という、この上なく至便な立地にオープンしたのが、今回ご紹介する『貝節麺raik』だ。

 店主・郡山氏は、2015年6月、実力店として知られる『Bonito Soup Noodle RAIK』を永福町の地に開業。「私の出身は鹿児島。鹿児島と言えば鰹節が名産物。私がラーメンを手掛けるに当たっては、地元・鹿児島の魅力をできるだけ沢山のお客様に理解していただくため、必ず鰹節を使うことに決めているんです」。そんな郡山店主の想いは、今般方南町にオープンした『貝節麺raik』にも貫かれる。
「1号店では、鰹節に動物系の出汁を合わせました。なので、『貝節麺raik』では、鰹との親和性がより高い魚介出汁を合わせたいと考えたんです」。

「貝節潮そば」800円
「貝節潮そば」800円

「店を出すからには、提供するメニューの完成度は極限まで上げておきたい」と、同店の開業に先立ち、1号店の定休日に貝節ラーメンを提供するという「二毛作営業(※2)」を敢行。「2号店を出店するのなら1号店から近い場所でと考えていました。このため、まずは1号店の二毛作営業という形で、地元の人たちの味の好みを探っていきました。数え切れないほどのトライ・アンド・エラーを重ねましたよ」と笑う。このような過程を経て完成したのが、『貝節麺raik』の看板メニューである「貝節潮そば」だ。二毛作営業時代には鰹を軸に味を組み立てていたが、思い切って主役の座を貝に委ねた。

2号店となるこのお店を任される店長さん
2号店となるこのお店を任される店長さん

 蛤・浅蜊・ホンビノス貝を惜しげもなく使用した貝出汁と、鰹節・鯖節・昆布・椎茸などから採った魚介出汁とを、試行錯誤の末に見つけ出した絶妙なバランスでブレンド。スープが舌先に接触した刹那、貝の鮮烈なうま味が味覚中枢のど真ん中を直撃する、訴求力のある仕上がり。そんな貝の力強い風味を下支えするのは、昆布と店主の心強き相棒である鰹節。貝が主役でありながら、派手な貝の旨み一辺倒に陥っていないのは、貝以外の素材とも真摯に向き合っているからに他ならない。

『菅野製麺所』の中細ストレート
『菅野製麺所』の中細ストレート

「貝節潮そば」では、このスープに貝のペーストオイルを更に折り重ねる。「食べ進めるにつれて、どうしても舌がスープの味に慣れてしまいます。ただ、食べている途中で貝の風味を段階的に増幅させることができれば、絶えず貝の息吹を感じながら召し上がっていただくことができる。そのために開発したのがペーストオイルです」。感服のギミックだ。
 このスープに合わせる麺は、名門『菅野製麺所』の中細ストレート。小麦の薫り豊かで、スープを過不足なく持ち上げる「このスープにしてこの麺あり」の逸品。

 オープン早々にして、既に名店の貫禄あり。早晩、長蛇の列ができる人気店に成長することは、想像に難くない。

(撮影◎佐々木和隆)

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(※1)濃厚民族とは?
「農耕民族」をもじったラーメンマニア用語。スープが濃厚なラーメンをこよなく愛する人たちのこと。

(※2)二毛作営業とは?
同一の店舗において、2つの屋号を持ち、営業時間や営業日によって、コンセプトが異なる味のラーメンを提供すること。郡山店主はかつて、火曜日から日曜日までは『Bonito Soup Noodle RAIK』の屋号を掲げ、鰹+動物系ベースのラーメンを提供し、月曜日には『貝節麺raik』の屋号を掲げ、鰹+貝ベースのラーメンを提供していたが、このような営業形態が典型的な「二毛作営業」に該当する。「二毛作」とは本来、同一の耕地で2種類の異なる作物を栽培することを意味する用語であるが、その用語がラーメン店の営業形態へと転用されたものである。

●SHOP INFO

貝節麺raik

店名:貝節麺raik

住:東京都杉並区方南2-21-21
TEL:03-5913-9119
営:11:30~15:00、18:00~23:00
  日11:30~15:00、18:00~21:00
休:月

●著者プロフィール

田中一明

 フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。