北綾瀬『東京らーめん谷中』のワンタンめんが旨い理由|田中一明のラーメン官僚主義!

田中一明のラーメン官僚主義!【第12回】東京らーめん谷中【北綾瀬】

食楽web

寿司屋さんがラーメン専門店に!? 『谷中』に賭ける店主の情熱

 東京メトロ千代田線北綾瀬駅。同駅は、綾瀬駅から延びる千代田線の支線上に位置し、地元にお住まいの方でない限り、同駅を活用する機会はなかなか訪れないかも知れない。

 実はこの北綾瀬エリア。数こそさほど多くはないものの、高水準なラーメンを提供する店舗がいくつか存在する。2006年にオープンした『らぁ麺波(シー)』と2008年にオープンした『中華そばわた井』の両店は比較的よく知られた存在だが、両店以外にも『麺也時しらず』、『大谷田大勝軒』など、いぶし銀の良店が軒を構える。

 そんな北綾瀬の地に2017年2月1日、新たなラーメン店が産声を上げた。それが、こちらの『東京らーめん谷中』だ。

 店主の前職は、『かえで寿司』の店主。1997年1月に創業し20年もの長きにわたり営業を続けてきた同寿司店は、地元の方々をはじめ、数多くの人たちから愛された名店。その店舗を昨年末で畳み、内外装を完全リニューアル。「人生の第2章」として、ラーメン専門店の店主として生きる道を選んだ。

 同店で提供されている麺メニューは、汁そばである「らーめん」「こってりラーメン」、つけ麺である「ざるらーめん(※)」の3種類とそのバリエーション。

 私がいただいた「ワンタンめん」は、「らーめん」にワンタンがトッピングされた一品。

 レンゲを幾度となく口元へと運んでも、鶏ガラと豚ゲンコツから湧き上がるうま味とコクが一向に衰えを見せないことに衝撃を覚える。スープに上質な鶏油を折り重ねることによって鶏の滋味に厚みが生まれ、鶏を支える豚の存在感がよりいっそう際立つ。タレのうま味に寄り掛かることなく出汁で食べさせる構成に、店主の料理人としての矜持が垣間見える。

 トッピングのワンタンも、申し分のない出来映え。チュルンと滑らかな舌触りが病み付きになりそうな衣は、餡をしっかりと包み込む力強さが頼もしい限り。麺とともに噛み締めると、餡からジュワっとエキスがあふれ出し、食べ手を恍惚の境地へと誘う。

 オープンしてからまだ日が浅いにもかかわらず、その1杯からは貫禄すら漂う。同店が今後、北綾瀬エリアのラーメンの水準の底上げに貢献していくことは、疑いようのないところだろう。

(撮影◎松山勇樹)

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(※)「ざるらーめん」とは?
つけ麺の一種。同店では、本メニューに納豆をトッピングした「納豆ざるらーめん」の人気も高く、私は同メニューも実食済。通常、この系統のメニューは、納豆のビビッドなうま味にスープが競り負けてしまいがちだが、『谷中』のスープは、鶏・豚等の動物系素材からしっかりと出汁を採ることができており、納豆に支配されない骨太な味わいを創り出すことに成功している。

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●SHOP INFO

東京らーめん谷中

店名:東京らーめん谷中

住:東京都足立区谷中2-7-12
TEL:03-5697-6985
営:平日11:00~14:00、17:00~22:00、土日11:00~21:00
休:水曜
らーめん(630円)の他、こってりらーめん730円、納豆ざるらーめん880円などメニューは多彩

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。