魚介系と動物系出汁の美しいバランスに癒される! 『麺や 河野』の「醤油ら~めん」|田中一明のラーメン官僚主義!

魚介系と動物系出汁の美しいバランスに癒される! 『麺や 河野』の「醤油ら~めん」が旨すぎる
食楽web

都内の超実力店が、練馬区中村橋から板橋区赤塚へと移転。
「地元に錦を飾りたい」店主の想いが結実!

 2010年3月に中村橋で産声を上げ、8年もの長きにわたり同エリアを代表する実力店として君臨し続けてきた『麺や 河野』。そんな同店が、本年7月2日、満を持して新天地へと移転した。

 新店舗の席数(10席 ※子供椅子を入れて12席)は、旧店舗(6席)の2倍。店舗の場所も大通り(川越街道)沿いの駅近で、比較的目立たない路地裏にあった旧店舗とは大違い。絶え間なく訪れる客を相手に、ラーメン作りから接客に至るまでの全てを独りでこなす店主。まさに息つく暇すらないほどの多忙ぶりに、「倒れはしないだろうか」と、様子を見ているコチラが心配になってしまう程だが、作業をこなす店主の表情はどこまでも明るい。

オープンしたばかりの店内は、旧店に比べ広くなった。白を基調とした壁も店内を明るい雰囲気にしている
オープンしたばかりの店内は、旧店に比べ広くなった。白を基調とした壁も店内を明るい雰囲気にしている

「赤塚は、私の地元なんですよ。ようやく地元に帰ってくることができました」。なるほど、故郷に錦を飾ることができた喜びと較べれば、数々の労苦などモノの数ではないということなのだろう。

「醤油ら~めん」780円
「醤油ら~めん」780円
「R‐20テキーラらーめん」930円
「R‐20テキーラらーめん」930円

 2018年8月現在、『河野』が提供するメニューは、「醤油ら~めん」、「塩ら~めん」、「R‐20テキーラらーめん」の3種類。いずれも、創業時から同店の屋台骨を支えてきた定番商品だ。
「新店舗は、厨房の構造から客席の数に至るまで、以前の店舗と勝手が全く違います。この新しい環境に自分の感覚が完全に順応するまでの間は、地に足を付けてコアメニューだけに全力を注ぎ込みたいんです」。旧店舗では、「限定メニュー」として数多くの創作麺の傑作を生み出してきた店主だが、お客さんに満足してもらえるラーメンを確実に提供できるようになるまでは、徒に手を広げず、徹底的に定番に磨きを掛ける。実力店の店主ならではの先々を見据えた考えに、確固たる安心感を抱かされる。

「醤油」「塩」「テキーラ」ともに、甲乙が付けがたい完成度の高さを誇るが、まず召し上がっていただきたいのが「醤油ら~めん」。

 スープは、煮干し、節(アジ・カツオ・サバ)等の魚介系素材を丁寧に炊き込んだ出汁に、種鶏・鶏ガラから採った動物系出汁を絶妙なバランスで掛け合わせたもの。啜ると、和の情趣に充ち満ちた「魚介」の滋味が燎原の火のごとく広がり、飲み干そうとする刹那、「鶏」の骨太な旨みが女神のように優しく味覚中枢を慰撫する。魚介を不動の主役に据えながら、鶏等のバイプレイヤーにも等しく気を配る。スープの一滴一滴にまで、店主のラーメンに対する深い愛情が投影されているような気がした。

 このスープに合わせる麺は、店主の修業先である名店『七彩』譲りの自家製(※)。麺量は、普通(150g)・中盛(200g)・大盛(250g)の中から同額で選択することが可能だ。「スープとの相性の良し悪しを常に意識しながら、麺づくりをしています。啜ったときに、どの程度の量のスープが引っ張り上げられるかとか。多くの可能性の中から『これぞ!』という最適解を見つけ出すのは、難しいものですね。永遠の課題です」。真摯に麺づくりの難しさについて語る店主を前に、「現時点でも既に、何の欠点も見出せないほどハイレベルな麺ですよ」と言い出すことはできなかった。

ラーメンに真摯に向き合い続ける店主・河野三英さん
ラーメンに真摯に向き合い続ける店主・河野三英さん

「ゆくゆくは、言葉に偽りのない小さなお子さんから『美味しい』と言ってもらえるような1杯を創りたいんです」。それが、現在の店主の「夢」だとのこと。いかにも店主らしい、虚飾のない目標。微力ながら、心の底から応援させていただきたい。

・・・・・・・

(※)『麺や七彩』出身の店主が手掛ける店舗は、現在、全国各地に数多く存在するが、『麺や河野』がその先駆けである。

●SHOP INFO

麺や 河野 外観

店名:麺や 河野

住:東京都板橋区赤塚新町2-2-13
営:12:00~15:00 、水~日12:00~15:00、18:00~21:00
休:火曜

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。