豆乳×野菜×鶏が織りなす至極の一杯。江戸川区平井『ひよこプリン』の「白らーめん」|田中一明のラーメン官僚主義!

豆乳×野菜×鶏、三つの素材が織りなす繊細で大胆な至玉の一杯。『ひよこプリン』の「白らーめん」が旨すぎる!
食楽web

名店『めんやもも』の創業者が、満を持して再始動!
繰り出すのは、香味野菜の滋養味が脈打つヘルシーな1杯

 2018年8月18日、JR平井駅南口の近傍に1軒の新店が産声を上げた。その店の名は、『ひよこプリン(※)』。住宅街に溶け込むように佇むポップで可愛らしい外観だけを見れば、屋号のとおり、プリンやケーキといった「スイーツ」を販売するお店にしか見えない。実際、店名やお店の雰囲気から、スイーツ専門店と間違えてお店に入ってこられる方も一定数いらっしゃるそうだ(笑)。

ひよことプリンのイラストが描かれた看板が目印
ひよことプリンのイラストが描かれた看板が目印

 が、念のために改めて申し上げておきたい。このコーナーでご紹介するのは、れっきとしたラーメン専門店。したがって『ひよこプリン』も、紛うことなきラーメン専門店ということになる。

 現在、同店が提供する麺メニューは、「白らーめん」「まぜめん」「担々めん」「汁なし担々めん」「らーめん」「つけめん」の6種類。オープンしたばかりの新店であるにもかかわらず、汁そばからつけ麺、汁なしまでを用意する充実のラインナップ。

「白らーめん(豆乳)」800円
「白らーめん(豆乳)」800円

 となれば、一品一品の完成度は必ずしも高くないのではないかとお考えになるかも知れないが、心配はご無用。
 実は、同店の店主は『めんやもも(現在は閉店)』の創業者。『めんやもも』は、2000年に創業し、江戸川区を代表する実力店のひとつとして、東京東部エリアのラーメンシーンのレベルアップに大きく貢献した誰もが認める名店。『ひよこプリン』は、そんな敏腕店主が、『もも』の閉店から4年にわたる雌伏を経て立ち上げた待望の自店なのだ。

店主の寺嶋崇(てらしま・たかし)さん
店主の寺嶋崇(てらしま・たかし)さん

 ちなみに、メニューを多様化したのは、「店舗の周辺に世帯家族が居住するマンションが沢山あり、なるべく多くの食べ手の味の好みを充たしたかったから」とのこと。作り手として厨房に立ち続けてきた豊かな経験に基づくものだ。

 いずれのメニューも流石の出来映えだが、特にオススメしたいのが、券売機の筆頭メニューに君臨する「白らーめん」。

 大量の鶏&香味野菜を丁寧に煮込んで創られた出汁は、鶏の芳醇なコク・うま味と、香味野菜のナチュラルな滋養味を余すところなく表現。カエシには、口内でバルーンのように甘みが膨らむ薄口醤油を採用し、リッチな味わいを演出。
 舌上でスープを転がすと、出汁やカエシから放たれた何本ものうま味の矢が、喉元でピタリと一体化。言葉を交わさずとも、作り手の確かな技量を肌身で実感できる。
 出汁とカエシだけではない。両者を真綿のように優しく包み込む「豆乳」の存在こそが、「白らーめん」の真骨頂。特に、サツマイモを始めとするトッピングと豆乳との相性は抜群で、思わず、感嘆の声を上げてしまいそうになったほど。

 トッピングそのもののクオリティも高い。パプリカの色彩は油彩画のように鮮やかで、サツマイモの甘みはまるで甘露の雫(しずく)のよう。

 無我夢中になってレンゲと箸を持つ手を進めている内に、気が付けば、スープの最後の一滴まで飲み干してしまっていた。「江戸川に巨星再来す」。そう評しても決して大袈裟ではない大型新店だ。

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(※)店名『ひよこプリン』の由来は、「作り手としてまだまだ修業中(ひよっこ)の身である」という意味合いと、いずれは商品化しようと考えている「プリン」を掛け合わせたものとのこと。

●SHOP INFO

ひよこプリン

店名:ひよこプリン(ひよこぷりん)

住:東京都江戸川区平井3-16-11
TEL:090-3436-3356
営:11:00~14:30、17:00~21:00
休:火曜

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。