「長岡生姜醤油」と「燕三条背脂煮干」とが奇跡の邂逅。生姜と背脂が無上の相性を示す会心作を是非!
『我武者羅』。都内のラーメン好きでこの店の名を知らない者は、おそらく存在しないだろう。『我武者羅』グループの代表取締役・蓮沼氏は、新潟県のご出身(※)。幡ヶ谷の地に1号店を開業した当初から、故郷・新潟のご当地ラーメンを全国に知らしめるため、粉骨砕身してきた。
本年8月21日にグランドオープンを果たした『生姜醤油専門我武者羅 代々木店』においても、その意志は頑なに貫かれる。
同店のレギュラーメニューは、長岡生姜醤油ラーメンを忠実に再現した「生姜醤油(あっさり)」と、「生姜醤油」に独自のアレンジを施した「背脂生姜醤油(こってり)」の2種類。
中でも特におススメしたいのが、後者の「背脂生姜醤油(こってり)」だ。
「ラーメン王国・新潟を代表する2つのご当地ラーメンを掛け合わせてみたら、いったい、どのような1杯が出来上がるのだろう」
ここ最近、一都三県では、確かに「長岡生姜醤油」か「燕三条背脂煮干」のいずれかを提供する店舗が増えた。しかしながら、両者をフュージョンさせたラーメンを提供する店は皆無だ。「それぞれのご当地麺の魅力を兼ね備えた1杯ができれば、食べ手のニーズとマッチするに違いない」。そんな発想から、蓮沼氏の挑戦は始まった。
試行錯誤を繰り返す中、同氏が気付いたのは、生姜と背脂の相性の良さ。確かに、スープを啜ってみると、両者はおしどり夫婦のように寄り添うのだ。際限なく広がる背脂の甘みを、切れ味鋭い生姜の辛みがビシッと引き締める。熱気球のように大きく膨らむ甘みは、背脂でしか演出できないものだ。しかしながら、ラーメンにボリュームがあると、後半、どうしても食べ飽きてしまうきらいがある。果てしなく疾走する背脂を、生姜が御者となって巧みにコントロール。お互いの個性が、正の相乗効果をもたらしている。こうして出来上がったのが、背脂たっぷりでありながらゴクゴクと飲めるスープだ。
具として板海苔ではなく岩海苔を配するギミックも、蓮沼氏の研究の集大成。丼が卓上に供された刹那、岩海苔から放たれる磯の香りが食べ手の胃袋を臨戦態勢へと誘導。食感が滑らかで、単純に箸を動かすだけで、トロっとした背脂とのコラボレーションが楽しめる点も、特筆に値する。
「いかがですか。こんなラーメンをこれまでに食べたことがありますか」と、悪戯っぽくほほ笑む蓮沼氏。やはり、この人は稀代のラーメンづくりの名手だ。
(撮影◎田中章雅)
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(※)正確には福島県生まれだが、生後間もなく新潟県に移り住み、新潟で育っている。蓮沼氏にとって、故郷は新潟県であり、名実ともに、新潟ラーメンの案内人として認知されている。
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●SHOP INFO
店名:生姜醤油専門 我武者羅 代々木店
住:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-29-27
TEL:03-3341-4100
営:11:00~16:00 18:00~22:00
休:日
生姜醤油ラーメン750円、生姜醤油つけめん780円、背脂生姜醤油つけめん820円なども人気
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。