
鮮魚系の超人気店『麺魚』の2ndブランドがついに始動。
鴨の魅力を味わい尽くすなら、この1杯で決まり!
2016年1月に錦糸町にオープンし、真鯛を惜しげもなく用いた鮮魚ラーメンを提供する店として、瞬く間に全国区クラスの人気店にまで上り詰めた『麺魚』。そんな『麺魚』を率いる店主・橋本氏が、2018年4月24日、待望のセカンドブランド店をオープンさせた。この店こそが、今回ご紹介する『中華そば満鶏軒』だ。

橋本店主は、千葉の人気ラーメン店『まるは』グループのほか、和食の世界で腕を磨いた経験もある、万人が認める凄腕。「2年前、1号店を立ち上げるに当たり、鯛ベースのラーメンを出そうか、鳥ベースのラーメンを出そうか散々迷いました。結局、その時は鯛を選びましたけどね」と笑う店主。今般、産声を上げた『満鶏軒』は、まさに、店主のもう一方の夢を叶える希望の砦。だからこそ、手抜きや妥協は一切したくないという。

「鳥の中でも独特の食味が演出でき、工夫次第でどこまでも面白くなるから」と、共に歩むパートナーとして「鴨」を選抜。「鴨が持ち合わせる豊かな魅力を、ありのままの形で表現したい」と、スープに用いる素材は「鴨」と「水」のみ。それ以外の食材には目もくれないというこだわりようだ。

「この『満鶏軒』を始動させるに当たり、スープを作るための工場を作ったんです(※)。誰もが満足できるクオリティの1杯を創りたいと思って」と微笑む。
店舗からほど近い場所に佇む工場は、1号店(『麺魚』)と2号店(『満鶏軒』)のスープをなみなみと湛えた巨大寸胴が何本も屹立する圧巻の空間。なかでも、こちらの『満鶏軒』の寸胴には、1本当たり40羽に及ぶ鴨の丸鶏が詰め込まれていた。熟練の職人が1羽1羽手作業で、鴨の丸鶏からチャーシューに用いる肉(ロース肉とモモ肉)を切り取り、残りの鴨を全て寸胴に投入するという驚きの採算度外視ぶりだ。

この丸鶏を6時間かけて弱火でじっくりと炊き込んだスープに「岩塩」を加えれば、同店の看板メニュー「鴨中華そば塩」が完成する。「鴨の滋養味を徹底的に表現しようとしたとき、塩ダレさえ邪魔になることに気が付いたんです。試行錯誤の末、結局、岩塩を使うことに決めました」と店主。加えて、油まで丸鴨から抽出されたものを採用。私が知る限り、ここまで鴨を突き詰めた1杯は同店をおいて他にない。他の追随を許さぬ徹底ぶりに、頭が下がるばかりだ。

もちろん、同店の1杯の魅力はそれのみに止まるものではない。仕上げにフォアグラ油を数滴垂らすことで鴨の風味を一層増幅させ、訴求力に満ちたうま味を構築するなど、これまで店主が培った経験に基づいたギミックも冴えわたる。

麺を啜り終えた残りのスープを注いでいだたく「鴨雑炊丼」も、『満鶏軒』の魅力を味わい尽くすためのマストアイテム。刻み鴨チャーシューに加え、米までバーナーで炙って提供される珠玉の一品。
塩の上品な甘みを深奥に秘めた鴨出汁と、香ばしい宮城県産ササニシキとが、口の中で水魚のごとく交わる刹那、日本に生まれた幸せを心の底から噛み締めることだろう。
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(※)2017年4月、1号店である『真鯛らーめん麺魚』を移転リニューアルし、元の『麺魚』の店舗をスープ工場として活用していた。そのような状況だったところを、今般(2018年4月)の『満鶏軒』のオープンを機に、元の『麺魚』の店舗を『満鶏軒』とし、店舗から徒歩10分程度の場所に新たにスープ工場を設立したもの。つまり、『麺魚』の元々の店は、『麺魚』⇒『麺魚』のスープ工場⇒『満鶏軒』と変遷したことになる。
(撮影◎島本絵梨佳)
●SHOP INFO

店名:中華そば 満鶏軒
住:東京都墨田区江東橋2-5-3
TEL:03-6659-9619
営:11:00~21:00
休:月
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。