東京の西端に絶品ラーメン発見! 『らーめん にじいろ』の完成度がスゴい|田中一明のラーメン官僚主義!

鶏と煮干しのバランスに惚れる! 『らーめん にじいろ』の身体に優しい無化調ラーメンとは?
食楽web

東京の西端に期待の新星が誕生!
手掛ける1杯には、既に熟練の老舗の貫禄あり

 店舗は、最寄り駅となる各線高尾駅からでも4kmを超える、必ずしも便利とは言えない立地。バスを活用しても15分程度を要し(※)、ましてや、徒歩でアクセスすれば、道中にアップダウンありトンネルありでかなりの労力を要する。

 今回ご紹介する『らーめん にじいろ』は、そんな一筋縄ではいかないロケーションに佇むこぢんまりとしたラーメン専門店だが、ひとたび足を運べば、きっと、コストに見合った満足感が得られることだろう。それは、同店に足を運んだ数多くのラーメンマニアの感想が軒並み好感触であることからも明らかだ。

ラーメン店とは思えないオシャレな外観
ラーメン店とは思えないオシャレな外観

 同店が同地で産声を上げたのは、2018年5月23日。厨房を切り盛りする店主・松田氏は、ラーメンの作り手養成の名門『大和ラーメン学校』のご出身。「自宅に近いこの場所で、じっくりと腰を据えてラーメンの創作に取り組みたかった」というのが、この地に店舗を構えた理由だ。店主ご自身も元々、数多くのラーメン店を食べ歩いてきた大のラーメン好き。手掛けるメニューを「醤油らーめん」と「塩らーめん」の2種類へと絞り込み、徹底的にブラッシュアップを図ろうとする姿勢からも、店主のラーメンに対する愛情が透けて見える。

「醤油らーめん」650円
「醤油らーめん」650円

 醤油・塩共に完成度は甲乙が付けがたいほど高いが、中でも私が強く推したいのが「醤油らーめん」。

 スープは、鶏ガラベースの出汁と魚介出汁を、提供する直前に絶妙なさじ加減で掛け合わせたもの。

 それぞれの出汁にもひと工夫を凝らす。鶏ガラ出汁には、鶏だけでなく、ニンジン・タマネギ・ニンニク・ショウガなど、多種多様な香味野菜を順番や分量にも気を配りながら投入。鶏と野菜を共に煮込むことで、自然味豊かな野菜の香味が鶏をしっかりと支える、軸足がぶれないうま味を構築することに成功。魚介出汁の調理工程もまた、この上なく緻密だ。白口煮干しと真昆布を水出しした後、沸騰する寸前まで加熱。さらにカツオ節・サバ節・宗田節を漬け込み、仕上げに花ガツオを追加。煮干しに関しては、時季によって最良のものを選択。そこに「妥協」の二文字が入り込む余地など一切ない。

 出汁と合わせるカエシにも細心の注意を払う。キレ味鋭いうま味を持ち味とする千葉県産濃口醤油を主役として採用。出汁とカエシが相互に補完し合うことで際限なく拡がる素材の滋養味には躍動感とスケール感があり、食べ手は、レンゲを持つ手を止めることすらままならないだろう。

店主の松田さん
店主の松田さん

 まるで名指揮者のように、幾種類ものうま味を見事にまとめ上げ、一本筋が通った1杯を創り上げる。オープンしたばかりであるにもかかわらず、まるで幾星霜の歳月を経た老舗のラーメンのような風格。これから、一体どこまで伸びるのか。計り知れないポテンシャルを秘めた期待の新鋭だ。

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(※)最寄りのバス停は、「上小田野」である。ちなみに、京王八王子駅からもアクセス可能。

●SHOP INFO

らーめん にじいろ

店名:らーめん にじいろ(2416)

住:東京都八王子市西寺方町67-4
TEL:非公開
営:11:00~15:00
休:月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休み)

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。