2022年の最優秀新店候補の一角|『Ramen Break Beats』(祐天寺)

2022年の年明け早々に祐天寺の住宅地のど真ん中にオープンしたのが『Ramen Break Beats』。店主である柳瀬拓郎氏は福岡県出身。カナダで8年間フレンチ等のシェフを務めた後、東京や大阪の実力店のラーメンを精力的に食べ歩きながら自宅でラーメンの試作を重ね、祐天寺に自店を構えたという経歴の持ち主。つまり、ラーメン職人としてはほぼ独学なのだ。

現在、同店が提供するのは「醤油らぁ麺」「塩らぁ麺」「煮干醤油らぁ麺」「塩煮干らぁ麺」など。開業から1年足らずの間に「つけ麺」や「MAZESOBA」を出していた時期もあるなど、ラインナップが変幻自在であることも『Break Beats』の大きな魅力のひとつ。
開店当初から固定で提供されている「醤油らぁ麺」と「塩らぁ麺」でさえ、「訪問が追いつかない」と、マニアが嬉しい悲鳴を上げるほど、ブラッシュアップが頻繁に施されている。

私のオススメは、看板メニューとして君臨する「醤油らぁ麺」。スープは、柳瀬店主が郷土愛を込め、「天草大王」「博多地鶏」や、福岡県糸島の老舗醸造所「北伊醤油」の杉樽仕込み醤油など、可能な限り九州産の素材を使用。
ひと口すすると、「天草大王」の豊潤な滋味が味覚中枢を直撃。その後、鶏の合間を縫うように、タレのうま味が、押し寄せる波のように絶え間なく快楽中枢を刺激。スープとは別に単独で仕込み、味覚と嗅覚の双方を幸福感で包み込む鶏油の出来映えも、見事のひと言に尽きる。

スープに合わせているのは、名門『三河屋製麺』のストレート麺。「醤油らぁ麺」には、口内でパツンと弾ける中加水麺、「塩らぁ麺」には、加水率が低い極細麺を採用。
幾種類ものうま味を針の穴を通すような緻密さで重ね合わせ、食べ手の舌の上でピタリと一体化させる技術。そんな技術がいかんなく発揮された名杯をぜひご堪能あれ。