環七に降臨した淡麗系の新星! 「らぁめん(塩)」は塩ジャンルの新人王候補|『らぁめん ご恩』(野方)

多磨エリアのレジェンド店としてその名を轟かせた『無坊』(2002年創業)の初代店主・大沢剛氏が、一度はラーメン業界から引退したものの、「お世話になった人やお客様に、これまでに受けた恩を返したい」と、再起を賭けて立ち上げたのが同店。
提供する麺メニューは、「らぁめん(塩)」、「らぁめん(醤油)」、「四川担々麺」の3種。いずれもハイレベルだが、特に「らぁめん(塩)」は、2022年の「塩ラーメン」部門の頂点に君臨するほどの水準の高さを誇る。

スープの素材は、鶏の手羽先と鶏肉のみ。特に手羽先は、肉屋が当日の朝に捌いたものを毎日取りに行く手間ひまの掛けようだ。入手した鶏素材を丹念に6時間かけて炊き上げ、その後、急速冷凍を施すことで風味の幅を拡げ、奥行きを増幅させる。熟練のラーメン職人ならではのギミックもキラリと光る。

豊満なうま味がじわりと味蕾に沁み入り、芳醇な薫りがふわりと鼻腔をくすぐるスープは、啜る度に頬が落ちそうになるほど。一度レンゲを動かし始めたら最後、飲み干すまでその手を止めることができなくなる。
淡麗スープに合わせる麺としてはやや太めの『松本製麺所』謹製のストレート麺も、ツルンと滑らかな食感と、ザクリと歯切れの良い噛み心地とが高次元で共存する傑作。
店主のこれまでの人生経験が凝縮された1杯。味覚のみならず心をも潤す、円熟の味わいだ。