超ラーメンフリークが語るラーメン人気の秘密と2023年のトレンド

ラーメンが根強い人気を誇る理由は、大きく分けて2つあると思います。1つ目は「味のバリエーションの豊富さ」、2つ目は「新陳代謝の激しさ」です。
まず1つ目ですが、ひとくちにラーメンと言っても、一般的なスープ麺もあれば、つけ麺や汁なし麺もあり、さらに醤油や塩、とんこつ、鶏白湯など、多種多様な味が存在します。アンケートではつけ麺が別ジャンルになっていますが、つけ麺の麺も中華麺なので、ラーメンの1ジャンルと言えるでしょう。
そして蕎麦やうどんは、地域や店ごとの違いや特徴はあるにせよ、味や食べ方がほぼ固定されているのに対し、ラーメンは蕎麦やうどんに近いタイプや、イタリアンのパスタのようなものもある。つまり、ラーメンは蕎麦好きやうどん好きなど、他ジャンルのファンを取り込みやすい料理だと言えると思います。
そして2つ目の理由として挙げた「新陳代謝の激しさ」。ラーメンは全グルメジャンルの中で最も新旧交代や入れ替わりが激しいグルメです。年間700杯、毎日ラーメンを食べている私でも、すべてカバーしきれないほど際限なく新しい店や味が登場します。つまり、ラーメンは新陳代謝が激しいぶん、ほかの麺料理より飽きが来ないというのも大きいでしょうね。
いまのラーメンシーンのキーワードは自家製麺

昨年(2022年)~いま現在(2023年1月現在)にかけてのラーメン界の大きなトレンドは、製麺所の麺ではなく自家製麺を用いる店が増え、それに伴って醤油・塩に加えて、麺の魅力をフィーチャーできるつけ麺とまぜそばの、合わせて4ジャンルのラーメンを看板に掲げる店が増えていることです。
自家製麺の店が増えた理由は3つ。(1)特に一都三県(東京・埼玉・千葉・神奈川)において、スープが美味しいのが当たり前になったこと、(2)蕎麦やうどんのようにラーメンも自分で麺を打つべき、と考える若手ラーメン職人が増えたこと、(3)そして小麦の原価高騰により、製麺所に頼むとコストがかかりすぎる、というのも理由としてあると思います。

自家製麺をウリにするとなると、必然的につけ麺を同時に出すお店が増えてきます。スープに浸かっていないつけ麺は、麺自体の旨さをダイレクトに感じられますからね。中には最初のひと口は麺に塩をつけてお召し上がりください、という店もあるほど。
そんなわけで、カエシ(タレ)を変えるだけで作れる「醤油」と「塩」、そして「つけ麺」と「まぜそば」を同時に出すお店が増えているわけです。これを私は最近のラーメン店の“四種の神器”と呼んでいます。

2022年にオープンした自家製麺にこだわる店でオススメを挙げるとすると、『ひなり竜王』(梅屋敷)、『麺ふじさき』(亀戸)、『麺屋ルリカケス』(木場)あたりでしょうか。こだわり抜いたスープの美味しさは言うに及ばず、いずれもスープに合わせた超ハイレベルな自家製麺が堪能できます。
ネオクラ系や創作系も増加中。今年もラーメンシーンから目が離せない!

また、細かい話をすれば、昔ながらのノスタルジックなラーメンを現代の技術で蘇らせた「ネオクラ(ネオクラシック)系」や、これまでなかったまったく新しいラーメンを提供する「創作ラーメン」のお店も増加中。前者で言えば蓮沼の『中華そば 梟』や糀谷の『中華ソバ ちゃるめ』などがそうですね。

創作系で言えば、先述の『麺屋ルリカケス』は、奄美大島の郷土料理・鶏飯にインスパイアされた錦糸卵入りの唯一無二のラーメンを出しています。ほかにも、家系ラーメンのルーツとして知られ、全国のロードサイドに点在する「ラーメンショップ」のインスパイア店、いわゆる「ラーショインスパイア系」(『王道家』が手掛ける『柏ラーショ』(柏)など)も出てきて、ますます目が離せない状況になっています。
いま個人的に最注目しているお店は秋葉原の『ほたて日和』。神保町にある『麺屋33』の2ndブランドで、ここは近々、食楽webで改めてとり上げる予定なので、ぜひお楽しみに!
●プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。