『角上魚類』の本領発揮は冬! 仕入れに密着してオススメの地魚を食べてみた

『角上魚類』の魚が安くて旨い理由は、卓越した「仕入れ術」にあった!

朝4時から始まる市場に、その日水揚げされた地魚を同業他社と競って仕入れていきます
朝4時から始まる市場に、その日水揚げされた地魚を同業他社と競って仕入れていきます

『角上魚類』の魚の仕入れは、おおむね以下の通りになります。

(1)寺泊魚協……『角上魚類』の本拠地で、鮮度が良いうまい魚を仕入れることができる
(2)出雲崎市場……(4)と同様、漁から上がったばかりの魚を仕入れることができる

 さらに冒頭でも触れた、『角上魚類』の地元・新潟寺泊界隈では、例年9~6月頃まで底引き網漁が解禁となるため、上記(1)(2)(3)に加え(4)(5)以下の市場でも仕入れることで売場を充実させています。

(3)新潟漁協……新潟界隈の地魚を多く扱う市場
(4)新潟中央市場……全国で水揚げされた魚を幅広く扱う市場
(5)東京・豊洲市場……全国で水揚げされた魚を幅広く扱う市場。(3)(4)の漁獲量や価格を、その都度バイヤーが電話で報告し合いながら、鮮度が良く安いほうの魚を仕入れる

 これらの市場をくまなく巡り、少しでも鮮度が良くお手頃の価格を仕入れるのが『角上魚類』のバイヤーたちで、これに同チェーンの手腕の全てがかかっていると言っても過言ではないようです。

新潟漁協の場合。仕入れた地魚はすぐに荷造りされ、その日の午前中には関東圏の『角上魚類』各店に納品します
新潟漁協の場合。仕入れた地魚はすぐに荷造りされ、その日の午前中には関東圏の『角上魚類』各店に納品します
出雲崎港の場合。仕分けされた様々な地魚を『角上魚類』のバイヤーが競り落とし、翌日午前中に関東圏の角上魚類各店に納品します
出雲崎港の場合。仕分けされた様々な地魚を『角上魚類』のバイヤーが競り落とし、翌日午前中に関東圏の角上魚類各店に納品します

 写真は、新潟漁協・出雲崎港の一例ですが、このように『角上魚類』では新潟の地魚を仕入れた後、仲卸しなどを介在させないまま、できるだけ早く関東圏のお店の店頭に並べることができます。このことで、鮮度が良い地魚を安く提供できるわけで、「魚屋」としてはある種革命的なビジネスモデルと言って良いでしょう。

仕入れ密着時は佐渡の南蛮エビ(甘エビ)が湧いていた!

筆者が『角上魚類』の仕入れに同行した際は、南蛮エビ(甘エビ)が「湧いていた」ようです
筆者が『角上魚類』の仕入れに同行した際は、南蛮エビ(甘エビ)が「湧いていた」ようです

 ところで、筆者が『角上魚類』の新潟での仕入れに密着した際は、前日まで市が実施されるかどうか曖昧な状態でした。なんでも海が大シケとなっており、こういった影響で不漁の場合は市が中止になることもあるそうです。こうなると、『角上魚類』各店には魚の供給が過少となるわけですが、この辺のバランスを保つため、前述の新潟中央市場や東京の豊洲市場での仕入れで補っているのだそうです。

それから数時間後、関東圏の角上魚類ではこのように販売されていました
それから数時間後、関東圏の角上魚類ではこのように販売されていました

 筆者の新潟滞在時、確かに品薄ではあったそうですが、なんとか新潟漁協での市が開催されました。この日は地元で採れたプリップリの真っ赤な南蛮エビ(甘エビ)が大量に入っており、専門用語で言うところの「湧いている」状態だったようです(※海で同一魚種が多く獲れることを指す)。もちろん、この南蛮エビ(甘エビ)は『角上魚類』のバイヤーの方もすかさずセリ落とす。すぐに関東圏の『角上魚類』各店へと発送していました。

冬場の『角上魚類』での地魚のオススメは、南蛮エビ(甘エビ)、寒ブリ、佐渡の牡蠣など

『角上魚類』のバイヤー・中越隆英さん
『角上魚類』のバイヤー・中越隆英さん

 この地魚の仕入れと、この冬オススメの地魚について、『角上魚類』のバイヤー・中越隆英さんにお聞きし、仕入れたばかりの刺身も食べてみることにしました。

「資源保護の観点から、どの海域でもおおむね『禁漁期間』を設けているものですが、『角上魚類』がある新潟・寺泊界隈はそれが7、8月で、底引き網漁ができない、船を出せない時期になります。この間でも貝とか海藻とかは獲って良いのですが、底引き網漁ができないため、新潟の地魚は品薄になります。

 一方、9~6月までの漁の解禁時期は底引き網漁で、地元ならではの地魚が多く獲れるようになり、このため『角上魚類』では、他のスーパーや魚屋さんでも見かけない美味しい地魚を多くご提供できるということになるわけです。

 この時期特に刺身で美味しいのは南蛮エビ(甘エビ)、寒ブリ、あとは佐渡の牡蠣など。このほかにも鍋などで調理して美味しい地魚も多くありますので、是非この時期の『角上魚類』ならではの地魚を多くの方に味わっていただければ幸いです」(中越さん)

「寿司ネタにしたらいくらになるのか…」と想像してしまうほどの絶品地魚たち!

南蛮エビ(甘エビ)の刺身
南蛮エビ(甘エビ)の刺身

 最後に、中越さんオススメの新潟の地魚をいただいてみました。まず、仕入れの密着でも見た南蛮エビ(甘エビ)から。頭の先から尻尾までプリップリの身がつまっており、甘くて美味。青い卵も濃厚で、これで1本あたり数30~40円というのが信じられないほど。もちろん余った殻は、後で味噌汁にしてこちらも美味しくいただきました。

(左)寒ブリの刺身。(右)佐渡の牡蠣の刺身
(左)寒ブリの刺身。(右)佐渡の牡蠣の刺身

 さらに寒ブリは、この時期とても脂が乗っておりトロットロ。特に『角上魚類』の寒ブリは鮮度抜群で、臭みなどもいっさいなく「寿司ネタにしたらいくらになるのか」なんてヤボなことも考えてしまうほどでした。

 さらに佐渡の牡蠣。こちらもミルキーな風合いで、牡蠣特有の苦味はなく、どちらかと言うと甘みのほうが強い印象。この牡蠣をおつまみに、日本酒の熱燗でクーっとやるなんていうのも良いなと思いました。

まだまだ『角上魚類』の地魚はたくさんあります!
まだまだ『角上魚類』の地魚はたくさんあります!

 中越さんのオススメ以外でも、『角上魚類』でしか目にすることができない地魚は他にもたくさんあります。その日の仕入れ次第ですが、ぜひお近くの『角上魚類』で“新潟モノ”の魚をゲットしてみてはいかがでしょうか。『角上魚類』のすごさを感じる地魚ばかりですよ!

(撮影・文◎松田義人)