なぜ福井県民は寒くなると「水ようかん」をこぞって食べるのか?

冬に水ようかんを食べる理由は気温の低さにアリ

切れ目に沿って付属のヘラで水ようかんをすくって、そのまま食べるのが福井のスタイル
切れ目に沿って付属のヘラで水ようかんをすくって、そのまま食べるのが福井のスタイル

 では、どうして福井県では冬場に水ようかんを食べるのかというと、それは気温の低さに関係しています。福井で作られる水ようかんは糖度が低く、保存が効きません。そこで、気温の低い冬に廊下や縁側に置き、自然の冷蔵庫で保存していたのです。

 一般的な水ようかんとは違い、1枚単位で購入するのが福井ならではの文化です。年末年始などはみんなが5枚、10枚とまとめ買いして、家族みんなで少しずつ食べているそうですよ。

13種類の水ようかんを食べ比べ

北海道産の小豆を使用している店が多く、小豆に合った作り方をしないと美味しい水ようかんができない
北海道産の小豆を使用している店が多く、小豆に合った作り方をしないと美味しい水ようかんができない

 今回、福井県内にある13店舗の水ようかんを食べ比べてみました。これだけの水ようかんを食べ比べる機会は、福井の人でもそうそうないはずです。

 まず、驚かされたのは、店ごとにパッケージがまったく異なる点。最近でこそ真空パックで販売するところもありますが、紙の箱などに入れて上から透明フィルムを載せるという古典的な包装が多いのだとか。

紙の箱の場合、蜜漏れしてしまうのが難点。とはいえ、1つの商品にこれだけいろんなペッケージがあるのは面白い
紙の箱の場合、蜜漏れしてしまうのが難点。とはいえ、1つの商品にこれだけいろんなペッケージがあるのは面白い

 東京の人に好まれているという前出の『えがわ』や『久保田製菓』の水ようかんは、黒糖を使用しておらず、かなりあっさり味。口どけも良く、普段食べている水ようかんとはまた違った印象です。ほかに印象的だったのは、もともとは和菓子店だったという『シュトラウス金進堂』の水ようかん。黒糖ではなく三温糖を使っており、みずみずしい口当たりでした。

 逆に、黒糖が強めなのが『お菓子処 丸岡家』と『餅の田中屋』の水ようかん。ほかにも、あずきの味が強い『奥越菓庵 やまうち』や『コダマ製菓』、日本三大葛の一つ「熊川くず」を使う『笑福堂』など、店ごとに本当に味や口当たりが異なっていて、そのバリエーションの豊かさに驚かされます。

 冬はおこたで水ようかん――そんな福井ならではの食文化を、ぜひ一度体験してみては?

●著者プロフィール

今西絢美
「おいしいものナビゲーター」として、調理家電や食に関する記事を執筆。フードツーリズムマイスター、利酒師の資格も持つ。ウェブサービスやアプリのトレンドも絶賛追跡中。コンテンツ制作会社「TEKIKAKU」取締役。