実は330も島がある! 知られざる東京の「島酒」を7本飲み比べてみた!

神津島の天然水で造られる奥ゆかしい島酒「盛若(樫樽)(25度)」(神津島)

神津島「盛若(樫樽)(25度)」1690円/神津島酒造株式会社
神津島「盛若(樫樽)(25度)」1690円/神津島酒造株式会社

 続いては、神津島の「盛若(樫樽)」をいただきます。赤く燃え盛る空に、真っ黒に染まる山が描かれたパッケージは、ただならぬ雰囲気を感じます。実際に口にしてみると、サッパリとした飲み口。それでいて後半には麹の甘味が追いかけてくる印象で、奥ゆかしい味わいを楽しませてくれます。聞けば、神津島の天然水を使用し、樫樽で貯蔵、熟成させた焼酎とのこと。

 ストレートやロックで飲むのがオススメですが、サッパリした味わいなのでどんな割材にも合いそうです。また、甘酒との相性も良いらしく、「混ぜるとコクが生まれて、韓国のマッコリのような味になる」そうです。

東京諸島自慢のラム!「無人酒(25度)」と「海底熟成ラムMother(40度)」(小笠原)

左:小笠原「無人酒(25度)」2300円、右:小笠原「海底熟成ラムMother(40度)」5100円/小笠原ラム・リキュール株式会社
左:小笠原「無人酒(25度)」2300円、右:小笠原「海底熟成ラムMother(40度)」5100円/小笠原ラム・リキュール株式会社

 ここまで、「東京の島酒」として焼酎を5銘柄飲み比べましたが、ここからはラムの「島酒」をいただきます。まずは、小笠原の「無人酒」。黒糖ベースのラムで、一口目からラムのまろやかな甘味が口いっぱいに広がります。どこか優雅な味わいで、日常酒としてではなくアウトドアなどのリラックスできるシーンでいただきたい銘柄。ストレート、ロックでいただくのはもちろん、さまざまな割材との相性も良さそうです。

 そして、同じく小笠原の「海底熟成ラムMother」。こちらはサトウキビを原料にして作られたラムで、「無人酒」よりも口当たりが芳醇。まず、ラムの豊かな香りが口に広がり、後半でほんの少しの塩味を感じました。聞けば、カクテルベースにもよく使われる銘柄で、こちらも飲み会というよりは、ゆっくり楽しむのにピッタリなラムだと思いました。

「東京の島酒」知られざる話!麦麹で仕込む芋焼酎と農民たちが愛したラムとは?

各銘柄のパッケージを眺めるのも楽しいものです
各銘柄のパッケージを眺めるのも楽しいものです

 ここまで7種類の「東京の島酒」を飲み比べましたが、一口に「島酒」といえど、各銘柄とも二つとして同じものはないばかりか、個性豊かで味わい深いものばかりでした。また、パッケージも実に自由で、焼酎・ラム好きにはたまらない銘柄ばかりでした。

 しかし、ここでふと気になったこともあります。「どうして、東京諸島で酒作りが盛んになったのか?」。そこで『東京愛らんど』の担当者に、「東京の島酒」の知られざる話を教えてもらいました。

「『東京の島酒』としての焼酎造りのルーツは1853年にまで遡ります。江戸時代、鹿児島の商人であった丹宗庄右エ門(たんそうしょうえもん)が琉球との密貿易によって八丈島へ流刑となったことが発端です。八丈島で芋が栽培されていることを知った丹宗庄右エ門が、九州の焼酎造りを島民に伝授し、その技術が八丈島から各島々へと伝わっていきました。

 当時は米が貴重な作物だったため、その代替として麦麹を用いる製法が根付き、“麦麹で仕込む芋焼酎”という全国的にも珍しいスタイルが定着。麦麹特有のさわやかな香りと芋の旨みのバランスに優れた味わいが島の焼酎に共通する特徴です」(担当者)

 なるほど、その地に最初からあった麦と芋を使って、あれこれ工夫しながら、他所には見られない酒造りが盛んになったというわけですね。ちなみにラム酒についてはどうでしょうか?

「1876年に小笠原諸島が日本領土になると、亜熱帯の気候を活かしたサトウキビ栽培による製糖業が盛んになり、その過程で生じた副産物を発酵・蒸留して造った酒が『糖酎』や『蜜酒』として島民たちに愛飲されるように。これがラム酒製造の起源と言われています。その後、第二次世界大戦によって製糖業が衰退したものの、終戦後1968年に小笠原が日本に返還されると、再び島民の日常酒としてラム酒の需要が復活。1989年に小笠原ラム・リキュール株式会社が設立され、小笠原の地酒としてのラム酒が誕生するに至りました」(担当者)

まとめ

東京・竹芝客船ターミナル内の『東京愛らんど』
東京・竹芝客船ターミナル内の『東京愛らんど』

 というわけで、知られざる「東京の島酒」をご紹介してきましたが、まさに灯台下暗し、東京にこんなに美味しい「島酒」があったとは…と感慨深く、興味深いレビューになりました。

 特に焼酎・ラム好きの方にはぜひ飲んでいただきたいです。流通量の問題から、どこででも買えるわけではありませんが、例えば東京・竹芝客船ターミナル内の『東京愛らんど』店頭や通販サイトで購入することができます。あなた好みの「東京の島酒」を見つけて、楽しいお酒の時間を楽しんでくださいね。

(撮影・文:加賀ま波・松田義人)

●SHOP INFO

店名:東京愛らんど

住:東京都港区海岸1-12- 2 竹芝客船ターミナル内
TEL:03-5472-6559
営:10:00~18:00、土日祝10:00~20:00
https://www.tokyoislands-net.jp/shop