蕎麦屋が開いた神楽坂のガレットカフェ。絶品「鴨のガレット」は、本場フランスのガレットと何が違う?

ガレットの蕎麦の香りとお出汁にびっくり

鴨のガレット750円。かなりのボリュームで、お腹がいっぱいになる。
鴨のガレット750円。かなりのボリュームで、お腹がいっぱいになる。

 最上さんがカフェで一番出したかったと言う「鴨のガレット」を注文してみた。大きなお皿一面にガレットが広がり、端は綺麗に折りたたまれて、上にはキノコと野菜、そして鴨がたくさん載っている。見た目は本場と変わらぬようだが……。

 まず、生地を一口食べると、蕎麦の実の濃厚な香りが鼻に抜けていくようだ。勝手な感想を言うと、その蕎麦の香りにはどっしりとした“土”の気配を感じる。田舎蕎麦のような力強さ。次に、鴨だけを包んで食べると、まるで「鴨汁そば」のような和の味を感じる。

「鴨は、そば出汁で煮ているんですよ」と最上さん。なるほど。日本蕎麦とフランスのガレットの融合。そして蕎麦の風味をしっかり味わうことに重きがあるのだ。

「もっと和の味のガレットもあります」と言って次に勧めてくれたのが、「ガレットロール」。

ガレットロール1,000円。黒いのは、蕎麦つゆを「アガー」という海藻を使ってジェル状にしている。何もつけずにこのまま食べる。
ガレットロール1,000円。黒いのは、蕎麦つゆを「アガー」という海藻を使ってジェル状にしている。何もつけずにこのまま食べる。

 ガレット生地でお蕎麦を包んでいて、中に蕎麦つゆがジェル状となって折り込まれている。ざるそばのようでざるそばではない新しい食感がとても新鮮だ。

「蕎麦寿司のようで、ちょっと違うでしょ。これは知り合いのお菓子屋さんの発想なんです。今はこのプレーンタイプだけですが、今後は、野菜を入れてサラダロール風にしたり、天かすを入れた“たぬき蕎麦ロール”にしたり、お酒のアテにいいメニューもどんどん出していきます」

 このガレットロールを頂いてみて、なんとなくだが、お蕎麦とガレットの蕎麦粉の違いがわかってきた。

ざるそば900円。ガレットと同じ「会津産の蕎麦」を使用。細切りに手打ちしてある。蕎麦つゆは本枯節を使用。
ざるそば900円。ガレットと同じ「会津産の蕎麦」を使用。細切りに手打ちしてある。蕎麦つゆは本枯節を使用。

『galette cafeもが』では、『蕎楽亭もがみ』で出している「ざるそば」も食べられるというので、ガレットとの違いを確かめるべく、お願いした。

挽きたて、打ちたてのお蕎麦。
挽きたて、打ちたてのお蕎麦。

 釜で茹で、手早く氷水にさらして、ざるに上がった蕎麦。みずみずしく、つやつやと輝いている。「なんて美しいのだろう」とため息が出る。

 おつゆにちょこっとつけて、ズルズルっとすすると、ふわ~っと蕎麦の香りが立つ。そして、口の中では、蕎麦の甘さが広がっていくのだ。“儚さ”すら感じる繊細な香りと甘みに“天にも昇る”ようなふわふわとした気分になる。

 ガレットの蕎麦生地の時は“土”っぽさを感じたが、こちらは“空”のような感じだ。

「ざるそばの実は小さいのですが、その実のどこを、どう引き出すか。使う部分と挽き方によって、味わいがかなり変わります。だから、何を、どう作るか、そしてどんな味や香りを目指すか。そこが蕎麦の面白いところなんです」

店主の最上はるかさん。お子さんが2人もいるお母さんとは思えない。若くて美人!ちなみに、『蕎楽亭もがみ』は、産休の為にお休みを取っていたのだとか。その間に、カフェをオープンしてしまった、バイタリティのある方である。
店主の最上はるかさん。お子さんが2人もいるお母さんとは思えない。若くて美人!ちなみに、『蕎楽亭もがみ』は、産休の為にお休みを取っていたのだとか。その間に、カフェをオープンしてしまった、バイタリティのある方である。

 なるほど。では蕎麦とガレットの粉の挽き方の違いは?と聞くと、

「お蕎麦は、繊細な香りを出すために蕎麦の実の中心部分を使い、石臼の挽きこみ方は、少量ずつゆっくりと丁寧に。一方、ガレットの方は、荒々しい野性味のある方が食材とよく合い、焼いても香りが落ちませんので、勢いよく蕎麦を投入し、回転速度もあげて、外皮を含め粒子の粗いものを入れていきます」

 聞いて、しくじった。石臼を見たことないのでさっぱりわからない。でも、昔ながらの蕎麦を挽く技術であり、しかも繊細な“日本”のお蕎麦の職人技なのだろう。

「蕎麦の美味しさをいろんな形で表現していきたいんです。ガレットは和洋の組み合わせがしやすく、次から次へとアイデアが浮かび、ものすごく楽しんです」

カフェの店内は洋風のしつらえ。
カフェの店内は洋風のしつらえ。

 ところで、お蕎麦屋さんの方はお休みのままですか?と聞くと、
「11月1日から再開しました。あちらでは、ザ・和食のお蕎麦を出していますので、ぜひ、そちらも遊びに来てください」

 近いお店とはいえ、掛け持ちで大忙しの最上さん。でも、彼女のお蕎麦も食べたいし、ガレットも食べたい。今度は、昼はガレット、夜は蕎麦のハシゴを計画しよう。あ、スイーツのガレットもたくさんあった。それも絶対、食べようっと。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

galette cafeもが

店名:galette cafeもが

住:東京都新宿区赤城下町11-1
TEL:03-4296-3477
営:11:45~15:00 土・祝11:45~17:00
休:日