泡々のメレンゲ「かまたまうどん」に感涙! 粋な“立ち食いそば屋”『白河そば』の絶品コレクション

「ごぼう天」(そば)520円

「ごぼう天」(そば)520円
「ごぼう天」(そば)520円

 訪店2日目は、おそばを食べようと決めていました。そこで、「ごぼう天そば」(520円)をチョイス。ごぼう天には “ささがきごぼう”がギッシリと詰まっています。そのごぼうは、ふだん食べている食物繊維だけの無味なものと違い、ほのかに甘みを感じます。ご主人に聞くと、「今は青森県産のごぼうを使っている」とのこと。また、かき揚げの場合も「春は熊本産の“サラタマちゃん”っていう極上の甘い玉ねぎのかき揚げになるよ」という具合に、同じ野菜でも、季節ごとに使う産地を変えて、その旨みを味わえるように計らっているわけです。

 ちなみに、同店では、早朝にその日の分の天ぷら(かき揚げとごぼう天、油揚げ)を揚げて、余分な油を落としています。油を落とすことで、丼に入れた時におつゆをよく吸ったり、おつゆに溶け出した時にもくどくならずに、より美味しくなるのだそう。油揚げは新聞紙にのせて脂を吸わせるそうなのですが、

「一番、油を吸ってくれるのは“毎日新聞”だね。油をあまり吸わない新聞もあるんだよ」と笑います。そう、ご主人はとても面白い方なのです。塩出汁のおつゆにごぼう天を浸しながら、その甘みをしっかり味わいました。

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「牛肉」620円

牛肉620円(冷やしはプラス50円)
牛肉620円(冷やしはプラス50円)

 訪店3日目。お天気がよくて朝から暑い! 昨日「牛めし」を食べていた人を見て、それにしようかと思っていたのですが、びっくりするくらい汗ばむので、冷やしに変更。そこで「牛肉」そば620円の冷やし(プラス50円)にしました。「冷やしのおツユはちょっぴり甘めの割り下を使っているので塩じゃないけどいい?」とご主人が言います。

 どうして冷やしは“塩”ではなく“割り下”なのでしょう? と聞いてみました。

「結局さ、“旨い”と“甘い”と同じなんだよね。温かい汁は塩で出汁の甘みを感じるけれど、冷たくすると塩だと感じにくくなる。だから冷やし系は最初から甘みがある“割り下”を使って、甘みを感じやすくしてるんだよ」

 なるほど~。そういえば冷やし中華や冷麺の汁も甘酸っぱかったり甘辛だったりと“甘み”がポイントです。

 さて、登場した「牛肉」そばは、牛肉の煮込みがたっぷりのっており、さらに揚げ玉も入った“牛&たぬきそば”です。牛肉や玉ネギに甘辛いお醤油味がよく染みています。

「肉と玉ねぎを煮たら、1回冷まして、もう一度温めると、よく味が染み込むよ。煮物のコツ!」と教えてくれました。

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「ぶっかけ中華」470円

ぶっかけ中華470円(半熟玉子のせ50円)は暑い時期限定メニュー
ぶっかけ中華470円(半熟玉子のせ50円)は暑い時期限定メニュー

 訪店4日目にもなると、もはや常連客気取りです。ガラッと扉を開けて、一目散に注文口に行き、サッと小銭を出す。前日に注文する品は決めているので、何にしようかなんていう迷いもありません。この日は「ぶっかけ中華、半玉のせで」とメニューもすらすら。最後の「で」までかっこよく言えるようになりました。

『白河そば』は、そば、うどんだけではなく中華(ラーメン)も選べます。最近は、ラーメンはラーメン屋で食べるものだと思っている人が大半ですが、こちらの常連さんたちは「暑い時期のラーメンは白河のぶっかけに決まってるだろ」と涼しい顔で中華を注文します。

 いただいてみると、最近ラーメン業界で流行っている和風だしのラーメンに匹敵する絶品の“中華そば”。

 さらに、ご主人が「冷やしには特製のダチ油が合うから試してみて」と言います。「ダチ油」とは、この店オリジナルの和風ラー油のこと。大葉と青唐辛子をゴマ油で炒めて手作りしているそうです。

「ダチ油」は250円で販売もしています。ちなみにダチ油に辛味噌が入ったものを「マブダチ」と呼ぶそう。こちらは600円
「ダチ油」は250円で販売もしています。ちなみにダチ油に辛味噌が入ったものを「マブダチ」と呼ぶそう。こちらは600円

 そこで「ぶっかけ中華」に「ダチ油」を垂らしてみると、甘さのあったお出汁がガラリと味変。シソ風味とピリッとした辛さで「ミシュラン級の上品な味!」だと感激しちゃいました!

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「かまたまうどん」360円

「かまたまうどん」(360円)。味は醤油・ポン酢・ナンプラーから選べる
「かまたまうどん」(360円)。味は醤油・ポン酢・ナンプラーから選べる

 訪店5日目に注文したのは「かまたまうどん」。昨日、隣のお兄さんが注文した丼を横から覗き見て、「何それ?」と思わず聞いてしまった仰天メニューです。丼の中が真っ白で、泡だらけ。普通「かまたま」というと、“卵かけごはん”のように生卵を1個うどんの上に無造作に載せ、カエシの出汁醤油で混ぜて食べるシンプルな料理ですよね。でも、こちらのは違うんです。

 実は、ご主人が茹で上げた熱々のおうどんの中に卵を割り入れて、とんでもないスピードでシャカシャカとかき混ぜているんです。ものの数十秒でメレンゲ状態にしちゃう。「これのせいで腱鞘炎になっちゃうくらい手を痛めているよ」と笑うご主人ですが、痛くても真剣に毎日かき混ぜるんです。「かまたま」にこんなに手をかけるなんて、もう涙が出そう。

真剣な手つきで卵をかき混ぜるご主人
真剣な手つきで卵をかき混ぜるご主人

「かまたまうどん」の魅力はそれだけではありません。味を「醤油・ポン酢・ナンプラー」からチョイスできるのです。珍しいナンプラー味をチョイスしてみたところ、これまた2度目の驚き。

 ナンプラーといえば、ご存知、タイの魚醤で、魚を塩で熟成させて作る調味料です。日本の醤油とは一味も二味も違うエキゾチックな味のかまたまうどんに大変身。いや、これはお見事というしかありません。むしろ、「かまたまうどん」は、世界一ナンプラーが合う料理だ、と確信したくらいです。

ナンプラーを頼むと、瓶ごと出してくれます
ナンプラーを頼むと、瓶ごと出してくれます

 面白いアイデア料理をたくさん生み出すご主人・面川さん。

「昔はね、フジテレビのそばに店があってさ。店内は7席くらいしかなかったんだけど、店の前に公園があってね。朝からテレビの仕事してる人たちがたくさん来てくれて、その公園で30人くらい食べてくれた。みんな忙しくて疲れてるから、早くて旨くて、元気が出るものを出してあげたいと思ってさ」

 そんな風に、いつもお客さんのことを考えて誠意を尽くすのが信条なのでしょう。

 壁にかかったメニューの横に「一期一会」という文字がありました。一生に一度の出会いであると心得、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味するこの言葉。「すごいですね」と言うと、「うちはただの立ち食い蕎麦屋だよ」と笑うご主人。

『白河そば』は、間違いなく素敵なお店です。次の訪店は、「カレー」いや牛肉とカレーの「あいがけ」にしようかなと決めて、今日は退店。また来ます!

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

白河そば

店名:白河そば

住:東京都新宿区原町2-8
TEL:03-3358-7675
営:7:00~14:30(土~14:00 ※早じまいあり)
休:日祝