美肌のためには高級美容液より“食事と栄養”が大事な理由とは? 皮膚科医・柴 亜伊子先生が解説

タンパク質は「量を食べられなくても、回数で稼ぐ!」

柴先生:いきなりタンパク質の量を増やすと胃もたれしたり、そもそも食べれない方も多いですよね。最初は少しずつ増やす・食べる回数を増やすなど、いきなりたくさん食べずに回数で稼ぐ。お肉でも卵でも毎日同じものを食べ続けたら、食物アレルギーになるリスクが上がります。毎日食べたくても2日、3日食べたら1日以上空ける、種類を変えるのが大切。お肉だったら牛、豚、鶏もあるし、レバーとか砂肝、魚介類、卵や大豆もいい。ローテーションでいろんなものを楽しく味わえたらいいですね。

「タンパク質と一緒に良質な油も必ず摂りましょう!」(柴先生)
「タンパク質と一緒に良質な油も必ず摂りましょう!」(柴先生)

編集部:油はタンパク質と一緒に摂るのがいいんですか?

柴先生:はい。タンパク質と一緒に、バター、オリーブオイル、米油など良い油も必ず摂りましょう。栄養素の吸収もアップします。例えば米油やオリーブオイルは、オレイン酸やビタミンEを含むオメガ9系の油。ビタミンEは女性ホルモンの味方なので、積極的に摂取したいですね。

編集部:お魚は何がおすすめですか? マグロや鯛は?

柴先生:マグロや金目鯛は水銀が多いので、嗜好品と捉えましょう。食べるなら、鉄分やビタミンB群が多い鰹や青魚のサバ、ブリ、サンマ、アスタキサンチンやビタミンDが豊富な鮭、タラなどいろんなものをローテーションして。魚不足はEPA不足にもつながるので、苦手な人は鰹節やちりめんじゃこから始めるのもおすすめですよ。

プロテインは美容&ダイエットに効果がある?

編集部:最近、プロテインでタンパク質を補うダイエットが人気ですよね。

柴先生:プロテインはあまり、おすすめしていないんです。例えば、赤身ステーキ100gに含まれているタンパク質はおよそ8g。プロテインでタンパク質10gを飲む場合、赤身ステーキ125gを一気に身体に流し込んでいるのと同じことなんです。

編集部:本当に吸収されているか不安ですね。

柴先生:みんなプロテインを飲むときって一気飲みするでしょ? 本当に消化できているとは思えない。腹持ちがいいって言うけど、ただ胃もたれしているだけだったりするんですよね(笑)。市販のプロテインの原材料は大豆タンパク・牛乳タンパクがほとんどで、毎日摂ることで食物アレルギーを非常に起こしやすくする可能性が高い。

野菜がたっぷり入ったスムージーも一気飲み。「胃腸がびっくりしてるんちゃう?」という話なんです。スムージーは一気に糖質を流し込むから血糖値も上がりやすい。りんごやバナナ、はちみつ、シロップを入れたら尚更ですし、市販品ならシロップや人工甘味料も入っているから腸内環境も荒らしやすいんです。

食事の基本は「よく噛んで、楽しく食べること」

柴先生:軽めの朝ごはんにしたかったら、味噌汁や中華粥もおすすめです。日本のおかゆは昆布など植物性のお出汁ですが、中華粥は鶏ガラから出汁をとりますよね。本場ではピータンとかレバーを入れるみたいに卵などのタンパク質を入れるともっといい。さっきスムージーの一気飲みは良くないと言いましたが、野菜をポタージュにしてゆっくり一口ずつ飲むならおすすめです。

「消化力」は鍛えられるの?

柴先生:本来、消化酵素って栄養をしっかりと摂って入ればちゃんと作られているはずなんです。でも、心臓や肝臓とか命に関わるところから栄養は回っていくので、女性ホルモンや皮膚、髪の毛、消化管は後回し。目に見える部分・自覚しやすい部分に出てきたトラブルはタンパク質不足のお知らせです。

編集部:消化と言えば、昔から「よく噛んで食べなさい!」と言われていますよね。

柴先生:噛むことはすごくいいことです。消化酵素が出るし、脳の活性化にも繋がる。あとはおいしい、楽しいと思いながら食べれば、消化酵素がドバーッと出てくる。食事の基本はおいしいと思って食べることが大事なんです。

柴先生に普段どんな風にタンパク質を食べているのかも聞いてみました
柴先生に普段どんな風にタンパク質を食べているのかも聞いてみました

柴先生:私は牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類のローテーション。豆腐や卵は副菜に。お肉を食べるとき、なるべく青魚も食べるようにしています。肉を食べるなら塩コショウで野菜と一緒に焼くだけ。市販のローストビーフを買うことも。

編集部:お肉とお魚、両方食べるんですか?

柴先生:両方食べられる時は食べます。昼はあんまり食べないので、夜にドーンと食べるんです(笑)

編集部:1日の食事の山が夜に来ても、消化に問題はないですか?

柴先生:本当はだめです(笑)。私自身は対策してますが。皆さんの中には昼に時間がない方も多いでしょうし、仕事中は交感神経が過緊張で胃腸の機能が落ちてしまっていてたくさん食べると消化吸収に悪いことがあります。そういうときは無理にたくさん食べないで、消化の良い柔らかめのタンパク質と糖質で軽めに済ませたほうが良いこともあります。リラックスしているのが晩ごはんなら多めに食べるのもありです。ただし必ず消化できる範囲で。

糖質はお肌に良い?

柴先生:本当はお肌のために糖質をたくさん摂らない方が良いんですけど、糖がだめなわけではなく、血糖値の乱高下が問題なんです。糖質制限をしても良い人は、タンパク質や油でちゃんと1日の必要摂取カロリーが摂れていて、糖質がなくてもエネルギー代謝が回せる人だけ。日本の女性のほとんどは胃腸も弱くてカロリー不足なので、糖質も含めてもバランス良くカロリー摂取したほうがいいことが多いです。

編集部:糖質を摂るとしても、良質な糖が良いということですよね?

柴先生:そう! 食べるならお米や芋。芋はいいですよ~。

手作りならフライドポテトもOK  [食楽web]
手作りならフライドポテトもOK [食楽web]

柴先生:フライドポテトも、自分で揚げるなら良いですね。じゃがいもをくし切りにして油で揚げ、ブラックペッパーやガーリックパウダーをかけたらすごくおいしい。じゃがいもはビタミンCと食物繊維が摂れますし、長芋は女性ホルモンの源になる成分が含まれています。芋は女性の味方なんです。

いくつになっても肌は生まれ変わりますから、まずは食事で十分な栄養を摂取しましょう!

編集部:いくつでも肌は生まれ変わる……なんて心強い言葉! ありがとうございました。

調査結果

 美肌の土台作りに必要な動物性たんぱく質と鉄分は、牛の赤身肉などで効率よく吸収できます。普段あまり動物性たんぱく質を食べていない人はまず、2倍に量を増やして実践してみましょう。

(取材・文◎亀井亜衣子)