福井の冬を代表する餅といえば「とぼ餅」

福井には餅の専門店が多数残っています。そう、あくまでも「専門店」であって、「和菓子屋」のことではないんです。もともとは蝋燭屋だったお店が餅屋に鞍替えしたなんて例もあるそうです。
今回の講座で最初にいただいたのが「とぼ餅」です。これは福井の冬とは切っても切り離せない餅のひとつで、県内の餅屋には必ず並ぶといいます。「とぼ」というのは穀物の計量に使う道具のことで、形がとぼに似ていることからこう呼ばれるようになったそうです。大豆やよもぎ、青のり、桜えびなどの具材を混ぜた「色餅」やうるち米を混ぜた「こごめ餅」などがあるそうです。

とぼ餅は焼くと外はパリッと、なかはふっくら柔らかいのが特徴です。見た目は「かきもち」に似ていますよね。かきもちは冬場の寒風にさらして乾燥させたものですが、とぼ餅は干さずに半生のものを焼いて食べます。これだけでも福井の餅文化の奥深さに感心してしまいました。

福井ならではの季節を感じるあべかわ餅

「土用」と聞いて思い浮かべるのは、多くの人が「うなぎ」だと思います。しかし、福井には「土用餅」と呼ばれる餅があります。これは、田植えが無事に終わったことをねぎらう「五月上げ」という行事で振る舞われるもので、「あべかわ餅」を出すのが一般的。いまでは季節に関係なく、通年販売する店が増えています。
あべかわ餅はそもそも静岡市の名物で、つきたての餅にきなこをまぶし、その上から白砂糖をかけます。しかし、福井のあべかわ餅はしろ砂糖ではなく黒蜜をかけるスタイル。ミネラル豊富な黒砂糖と栄養科の高いきなこ、効率よくエネルギーを補給できる餅を組み合わせた最強フードともいえそうです。

おやつといえば、福井ではおはぎもよく食べられています。最近では県内の女性企業組合が手作りするおはぎが大人気で、1日平均1500個、お彼岸のピーク時は1日6000個作ることもあるほどの大ヒット商品に。おはぎといえばお彼岸や地域の行事、田植えのあとに欠かせないおやつでしたが、あべかわ餅と同様、通年を通して食べられるようになりました。