旨い店はタクシー運転手に訊け! 『豚丼いまい』の“熟成豚丼”にどハマりする理由

今までにないタイプの「豚丼」とは?

「豚丼」(特)1,050円。サイズは3つで、並は750円、大は900円
「豚丼」(特)1,050円。サイズは3つで、並は750円、大は900円

 店内に入ると券売機があります。メニューは「豚丼」と「豚丼マントル」という2種類のみ。豚丼への情熱が伝わってくるシンプルなラインナップです。ちなみに“マントル”は何かと聞くと、ご主人オリジナルの辛味だそう。まずは基本となる「豚丼」を注文することにしました。

 卓上にあった説明書きを見ると、「いまいの豚丼は、1杯の中に、ヒレ、肩ロース、バラ、モモロースなどさまざまな部位が入っている」「飛騨高山の味噌と北海道産の醤油を使った特製ダレで豚肉を熟成させている」とのこと。

 出来上がるまでご主人の調理の様子を眺めて過ごします。一般的な豚丼専門店は、豚バラやロースの“網焼き”が多いのですが、こちらではいろんな部位を一緒に鉄板で焼いていきます。味噌が焼ける香りが店内に立ち込め、しばらくすると私の「豚丼」(特・1,050円)が登場しました。

しつこくなりがちな豚丼を、軽く感じさせるタイプです
しつこくなりがちな豚丼を、軽く感じさせるタイプです

 肉を一切れつまむと、それは豚バラ肉。脂もほどよく抜けていて旨みがじわり! 続いてもう一切れ。こちらはヒレ肉。分厚くて、噛むとサックリ柔らかく噛み切れます。さらに肩ロースも厚めで、タレがよく沁み込んでいて、こちらもふんわり。

 といった具合に、つまむたびに肉の部位が違い、食感も脂の旨み具合も違って、飽きがこないんです。

 また、照り焼き風の甘いタレとは一線を画し、甘すぎず、味噌や醤油の絶妙なコク、熟成による深み、そして少し焦げた部分の香ばしさが際立ちます。肉とごはん、ごはんと肉といった具合に食べ進んで、特盛りもあっという間に完食。もう1杯食べられそうなくらいです。

 今年32歳になるというご主人の関盛尋斗(ひろと)さんに声をかけてみると、「1つの丼でいろいろな部位を味わえるようにするため、千葉県産の豚を一頭買いしているんです」とのこと。

 また、それぞれの部位を一番美味しく、あっさり食べられるようにと、ミリ単位で大きさを変えて手切りしているんだそうです。

特製ダレと豚肉を合わせ、約3日熟成させているそうです。
特製ダレと豚肉を合わせ、約3日熟成させているそうです。
お肉の柔らかさの秘密は、鉄板で蒸し焼きのようにふっくら焼き上げるから
お肉の柔らかさの秘密は、鉄板で蒸し焼きのようにふっくら焼き上げるから

 いやはや、まだお若いご主人ですが、非常に計算された味で、最後まで飽きのこないように作られている。「素晴らしい!」と拍手したくなるような気持ちになってしまいました。

 というわけで、こんなに美味しい「豚丼」をいただいたら、やはり、“マントル”の方も食べないと、落ち着いてハンドルも握っていられません。そこで日を置かずに再訪したんです。

「豚丼 マントル」(並)880円。お米は鳥取県の「きぬむすめ」
「豚丼 マントル」(並)880円。お米は鳥取県の「きぬむすめ」

“マントル”は、一見、“食べるラー油”のようでもありますが、水分・油分を飛ばして作ってあり、パラパラの生ふりかけのようです。

 その“マントル”が、わさ~っとてんこ盛りにかかっているんです。唐辛子、ニンニク、くるみ、カシュナッツやピーナッツなど13種類の食材を、それぞれ適度な塩梅にフレーク状にして、調味料を加えて乾煎りしているんだそう。

素材の大きさも変えてあるので、食感が楽しい
素材の大きさも変えてあるので、食感が楽しい

 マントルが熟成ダレで焼き上げた豚肉と組み合わさると、まさにマンモス級の美味しさです。豚丼といい、マントルといい、これまで全く食べたことのないタイプの豚丼に出会って、すっかりお気に入り店になってしまいました。

ご主人の関盛さん。前職はイタリアンの料理人だったそうです。店名「いまい」は、「“いまい”ちばんの豚丼を目指しているから」だそうです
ご主人の関盛さん。前職はイタリアンの料理人だったそうです。店名「いまい」は、「“いまい”ちばんの豚丼を目指しているから」だそうです

 余談ですが、関盛さんは、岐阜の飛騨高山にある『国八食堂』の鉄板ホルモン焼きにインスパイアされて、この豚丼メニューを開発したそう。だから飛騨高山のお味噌を使用しているんですね。

 ともあれ、人生を賭けた至極の「豚丼」、ぜひ食べてみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

豚丼いまい

店名:豚丼いまい

住:東京都文京区白山5-35-9
TEL:03-6240-0293
営:11:00~15:00、17:00~22:00
休:無休

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。