旨い店はタクシー運転手に訊け! 隠れた名店『つけそば周』の「濃厚な煮干しつけそば」を一生食べ続けたいワケ

『つけそば周』が旨い理由

「特製つけそば」(並)1,030円
「特製つけそば」(並)1,030円

 何度も通うようになって、こちらのご主人や奥様、息子さんと話すようにもなり、美味しい理由がわかってきたのでご紹介したいと思います。

 まず麺。店先にある製麺機で作る自家製麺です。製麺してから1~2日間は冷蔵庫で熟成させて、あのモチモチ感と旨みを出しているそうです。これは実は大変なことなんです。なぜならココは毎日のように行列している店。平均して1日120食以上出る上、1食あたりの麺量が多いので、それを予測して製麺しストックしておく必要があります。

 また、とろりと濃厚なスープ。トンコツやゲンコツ、背骨、ロース、鶏ガラ、鶏モミジ、豚足といった肉系の食材と、煮干し、宗田節、サバ節などの魚介系を使うそうです。色々な食材を使えば使うほど深い味わいになりますが、匂いやエグミも出やすいものです。しかし、臭みなく、まろやかに仕上げている秘密は「圧力寸胴」を使っているから。

「ラーメン屋ではあまり使わない“圧力寸胴”ですが、これを使うことで、短い時間で加熱でき、臭みやエグミを出すことなく、濃厚でまろやかなスープができるんです」とご主人の藤田周さんが教えてくれました。

ご主人の藤田周さんと、圧力寸胴
ご主人の藤田周さんと、圧力寸胴

 また、スープは、通常の「つけそば」と、「濃厚煮干しつけそば」があります。煮干し好きな人には、後者をぜひお勧めしたいです。「これでもか」っててくらい煮干しをガツンと感じさせてくれ、それでいて上品な味わい。ご主人曰く「濃厚煮干しつけそばは、通常のスープより大量の煮干しを加えています。水の量に対して3分の1の煮干しで、かなり濃厚だと思います」とのこと。

ドロリとした「濃厚煮干しつけそば」(1,050円)ですが、臭みもエグミもありません
ドロリとした「濃厚煮干しつけそば」(1,050円)ですが、臭みもエグミもありません

 チャーシューは、つけ汁の中に入っています。これがスープの中でトロトロと柔らかくなっていて、口の中でとろけます。ちなみにこれも圧力寸胴で炊いているそう。また、特製つけそばを注文すると麺の上にもチャーシューが載ってきます。こちらは、スープの中のチャーシューとは違って、しっかりした食感の煮豚。この違いも楽しいので、「特製つけそば」をオススメします。

スープの中にトロトロのチャーシューが入っています
スープの中にトロトロのチャーシューが入っています

 そして、私がもう一つ秀逸だなと思っているのが、太切りのシャッキリしたメンマなんです。完全なる脇役と思われがちなメンマですが、この店では、乾燥メンマを水で戻すところから、なんと丸4日もかけて作っているんですよ。何一つ妥協しないこだわりも素晴らしいですよね。

極太のメンマ
極太のメンマ
乾燥メンマはするめのように薄いんです
乾燥メンマはするめのように薄いんです

 さて、最後にご紹介したいのが、『周』さんで最初に登場する「モヤシサラダ」のことです。この前菜的な存在が『周』さんの真髄でもあるからです。

「このあたりはサラリーマンの方がとても多いんですよ。区役所、消防署、警察署などがあり、たくさんの方が食べにきてくれます。実は私も元はサラリーマンだったので、こういう方々に栄養バランスをよく食べて頑張ってほしいなという思いがあり、最初に野菜の“モヤシサラダ”を出しているんです」と。

最初に出てくるモヤシとキャベツのサラダ
最初に出てくるモヤシとキャベツのサラダ

 一般的な店なら、卵はトッピングでプラス100円というところも多いですが、『周』さんは必ず半玉付きだったり、麺量も並で300gとたっぷりだったりする。これは、ご主人の「1食でも十分満足できるように」という想いから。ご主人の優しさが詰まった1杯、ぜひ食べてきてくださいね。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

つけそば周

店名:つけそば周

住:東京都板橋区板橋宿2-63-4
TEL:03-6780-6002
営:11:00~14:30
17:30~21:00(スープ終了まで)
休:日

●プロフィール

荒川治さん

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。