生活習慣病がない世界を目指して開発した「おいしい玄米」

――荻野さんの以前のお仕事は食に関するものではなかったそうですが、もともと食に対する関心が高かったのでしょうか?
荻野さん:趣味的においしいものを追求することは好きでしたが、それを仕事にするつもりはなく、地方活性や伝統産業の復興に興味があったんです。前職のコンサルタント時代にそういった業界に携わる中で、食生活や生活習慣が病気に与える影響を知り、現代のサステナブルではない社会を生み出している要因は、ライフスタイルそのものにあると気付きました。
――そこから健康的な食生活に興味が出たということですね。
荻野さん:そうですね。生活習慣病の多くが食生活に起因すると分かって、「生活習慣病のない世界を創りたい」と思うようになりました。そこで、食生活の中でも特に主食が与える影響は大きいと考え、完全栄養食である玄米を主食にすることを提案したんです。ただ、玄米は普通に炊くと美味しくないという課題があったため、もちもちで美味しい「寝かせ玄米」を作る特許技術を開発し、それを広める会社を15年前に創業しました。現在は、ごはんパックの製造、ECサイトでの販売、店舗運営、そして卸売りやOEM事業を手掛けています。
お米が繋いだご縁? 2009年『結わえる』を蔵前にオープン

――2009年に『結わえる』がスタートしました。お店の場所に蔵前を選んだ理由は?
荻野さん:日本の伝統的な生活文化を、現代の感覚や価値観に合わせて“結わえる”ことで、おいしさと健康を両立させ、持続可能な世の中を実現したいという思いで創業しました。そのため、文化が息づく下町で場所を探していたところ、たまたま良い物件との出会いがあったのが蔵前だったんです。よく調べていくと、蔵前の名前の由来は「幕府の米を貯蔵する蔵があったから」とのことで、勝手に運命を感じて創業の地にしました(笑)
――それは確かに運命を感じますね(笑)。蔵前といえば今でこそ人気エリアですが、当時は知る人ぞ知る下町だったのでは?
荻野さん:15年前は倉庫が並ぶ、ひと気も少ない問屋街でした。それが少しずつ変わり、ものづくりやクラフト系に携わっている、同じような価値観を持つお店やお客さんが増え、今では1日では周りきれないほど楽しい街になりましたね。まだお店が少なかった頃に出会った仲間たちとは本当に気が合い、ここに来て良かったなと心から思います。
全国の「おいしくて体にも良い食材」が集まるお店

店内には物販とイートインの2つのスペースを併設。物販スペースには、甘酒などの玄米を使った商品や、黒胡麻の塩、梅干しといった玄米に合うアイテム、自宅で寝かせ玄米を炊けるキットや炊き方ガイドなどのオリジナル商品が並びます。そのほか、調味料やお酒、お菓子など、荻野さんが目指す「おいしくて体にも良い食材」が、全国各地から集められています。
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