箱根のブックホテル『箱根本箱』で、箱根ローカル・ガストロノミー×「サスィーノ」ワインの競演を堪能

近郊の海や山を映す、箱根ローカル・ガストロノミー

 このレストランのシェフに就任したのが、佐々木祐治氏。

 そもそもは銀座ソニービルの最上階にあった「サバティーニ・ディ・フィレンツェ東京」や、丸ビル36階の「アンティカ・オステリア デル・ポンテ」という超都心のリストランテ育ち。

 しかしイタリアでの修業を経て、文字通り「地に足をつけた生活をしたい」と考えるようになったと言います。

佐々木祐治。1975年生まれ、埼玉県出身。2018年、「箱根本箱」シェフに就任
佐々木祐治。1975年生まれ、埼玉県出身。2018年、「箱根本箱」シェフに就任

 イタリアでは星つきリストランテの多くが地方にあり、自家菜園の野菜や土地の産物を使って料理を作ります。
「若い頃は東京でしか働けないと思い込んでいました。でもずっとビルの上で働いて、それよりも地方の豊かな暮らしの中で料理を作りたいと」
 そう考えて、帰国後は青森県弘前市の『オステリア エノテカ ダ・サスィーノ』の門を叩きます。

 2003年に開店した『オステリア エノテカ ダ・サスィーノ』は、日本における地方イタリアンの牽引者となったイタリア料理店。笹森通彰シェフもまた東京とイタリアで修業しながら、故郷弘前で、この土地でしかできないイタリア料理を作っています。

「何でも自分で作りたい」彼は、畑で野菜を育て、烏骨鶏を飼って卵を採り、プロシュットにコッパにサラミなどさまざまな加工肉を熟成させ、近郊の牛の乳でチーズを作る。2005年からはワイン用のブドウ栽培も始め、ついにはワインも造ってしまいました。

 佐々木シェフは弘前で3年、料理のほか自家製加工肉やチーズ作り、ブドウと野菜の栽培も学び、妻の地元である新潟県長岡市で『MANO』を開店。しかし同じ新潟を本拠地とする「自遊人」の“ローカル・ガストロノミー”の考えに共感し、箱根でそれを実現させるため、店を閉じて箱根へやってきたのです。

 箱根という土地は、海なら駿河湾に相模湾、焼津の港。山は丹沢山や、日本一の富士山も箱根近郊。伊豆のシャモに御殿場の金華豚、富士宮の羊。魚も肉もジビエも。静岡の畑で育った有機野菜や柑橘、茸など山の恵みもあります。

 箱根に来てまだ数ヶ月ながら、佐々木シェフは生産者のもとを訪ね、少しずつこの土地のことを学んでいるそうです。

佐々木シェフによる“箱根ローカル・ガストロノミー”は、日々進化中。ディナーのみならず、翌朝の朝食も、佐々木シェフの愛情込められたひと皿を堪能できる
佐々木シェフによる“箱根ローカル・ガストロノミー”は、日々進化中。ディナーのみならず、翌朝の朝食も、佐々木シェフの愛情込められたひと皿を堪能できる