日本でもブームが到来中のクラフトビールはどう楽しむ? 食事ごとの銘柄選びのコツ

香りも楽しめるのがクラフトビールの醍醐味

 多くの人が「ビール」と聞いて思い浮かべるのは、「ピルスナー」という種類のビールです。実際、大手メーカーが手がけているのはピルスナーが大半で、「キリン一番搾り」や「アサヒ スーパードライ」などもこれに当たります。

「ビールにはさまざまな種類がありますが、酵母の種類で大きく『ラガー(下面発酵)ビール』『エール(上面発酵)ビール』の2種類に分けられます。これは酵母が発酵したときに、液面に沈むのか浮かぶのかを表しているんです」と、解説してくださったのは、SVBのヘッドブリュワーの古川淳一さん。

SVBのヘッドブリュワーの古川淳一さんは、以前は岡山のキリンビールの工場でビールの製造管理などを担当。SVBでは「JAZZBERRY(ジャズベリー)」を作った人物でもある
SVBのヘッドブリュワーの古川淳一さんは、以前は岡山のキリンビールの工場でビールの製造管理などを担当。SVBでは「JAZZBERRY(ジャズベリー)」を作った人物でもある

 エールのほうが華やかでフルーティーな香りが強く、ラガーはスッキリして香りが穏やかなのが特徴です。私たちが普段飲んでいるピルスナーは「ラガー」に属します。では、クラフトビールはエールなのかといえば、最近ではピルスナーのクラフトビールもあるので、一概にはそうも言えないのだとか。では、そもそも「クラフトビール」とはどんなビールのことを指すのでしょうか?

「アメリカのブルワーズ・アソシエーションの定義では、小規模であること、独立していること、伝統的であることの3つの条件を満たすものが”クラフトビール”とされています。しかし、小規模かどうかを決めるための生産量は変動しており、日本においてこれらの条件を転用するのは難しいのが現状です。そこで、弊社では”造り手の感性と創造性が楽しめるビール”をクラフトビールと定義しています」(古川)

 そもそもビールは世界中に100以上の種類があるとされており、製法もさまざま。その結果、クラフトビールはアルコール度数、色の濃さ、香りの種類などのバラエティ豊富なお酒となっているそうです。

時間に伴う香りの変化を楽しもう

 クラフトビールを楽しむ際に意識したいのは、その「香り」。「普通のビールよりも香りが豊かなので、まずは香りを楽しむといいですよ。また、温度が冷たければおいしいというわけではなく、冷たいと逆に香りが出にくくなるので、温度が高くなってからのほうがおいしいものや、時間の経過とともに香りが変化するものもあるんです」と、古川さん。

 温度の変化で香りを楽しむというのは、日本酒やワインにも通じるものがあります。そう聞くと、マニア向けのお酒のような印象を受けますが、実際はそうではありません。SVBでも最近は若いお客さんが多く、利用者の男女比も半々、もしくは女性が多いくらいなのだとか。これまでのビールとは、好む客層にも変化が生まれているんですね。

飲み比べセットでいろんなクラフトビールをちょい飲みできる

 SVBでは気軽におつまみとのペアリングが食べせる「ペアリングセット」が提供されています。このセットでは6種類のクラフトビールと、それぞれに合うおつまみが楽しめます。

おつまみとセットになった「ペアリングセット」(2,300円)は、いろんなクラフトビールを飲み比べられるのがうれしい
おつまみとセットになった「ペアリングセット」(2,300円)は、いろんなクラフトビールを飲み比べられるのがうれしい

 SVBの定番ともいえるのが、「496」というクラフトビール。甘み、酸味、苦味のバランスが良く、初めてクラフトビールを楽しむ人にもぴったりな一杯です。ビールは温度が上がるにつれ炭酸が穏やかに感じられます。一般的なビールは5〜6℃で提供されるのに対し、496は8〜10℃ということもあり、炭酸はかなり穏やか。喉越しを楽しむ一般的なビールとは少し趣が異なります。とはいえ、決してビール自体がぬるいわけではなく、しっかり冷えているのでご安心を。

 ピルスナータイプの「COPELAND(コープランド)」は、苦味とともに麦の甘みが感じられ、一般的なビールとの差が顕著。

 焙煎した麦を使用した「Afterdark(アフターダーク)」は、黒ビールのように見えますが、渋みが押さえられており、軽やかさも感じられます。渋みの原因は麦の皮にあるそうで、Afterdarkは皮を取ってから焙煎するというひと手間がかけられているのだとか。

黒ビールが苦手な筆者でも「Afterdark」はおいしく飲めた。香ばしいロースト感に後を引くウマさがある
黒ビールが苦手な筆者でも「Afterdark」はおいしく飲めた。香ばしいロースト感に後を引くウマさがある

 ほかにも、マスカットのようなフルーティーさと柔らかさのある「on the cloud(オンザクラウド)」、柚子と山椒を使った「Daydream(デイドリーム)」、ラズベリー果汁を加えて甘酸っぱさを意識した「JAZZBERRY(ジャズベリー)」があり、どれも個性豊かでどんどん飲み進めたくなるものばかりです。

爽やかなビールが飲みたいときには「Daydream」がおすすめ。日本ならではの香り付けをしているのが面白い
爽やかなビールが飲みたいときには「Daydream」がおすすめ。日本ならではの香り付けをしているのが面白い
「JAZZBERRY」は、苦さではなく甘酸っぱさを重視したクラフトビール。あくまでも甘いだけではないのが、ビール好きにはうれしい
「JAZZBERRY」は、苦さではなく甘酸っぱさを重視したクラフトビール。あくまでも甘いだけではないのが、ビール好きにはうれしい