2018年のカレー初め。“間借りカレー”から飛躍した新店『サンラサー』に注目!

新境地のカレーを目指す

 有澤さんは、旦那さんと子供がいるお母さんでもある。
「独り身だったらもっと早くにお店を持っていたかもしれませんが、そんなにフットワークが軽くなくて、ずっとケータリングでカレーを作っていたんです」

 その味が口コミで評判になった。新宿ゴールデン街で間借りカレーを始めたのも、そのケータリング時代の知り合いからの勧めだった。

「出店はもっと先のことだと思っていたんですが、間借りのお話が来た時は、今、神様がやってみなさいと言ってるんだと思いました」

 ダメならダメでもいいやと思っていたと言うが、店はトントン拍子に人気になった。ただし、バーは厨房が狭く、自宅から材料を背負って電車で通う日々が続いた。それに加え、小さなお子さんの送り迎えや家事で、てんやわんや。

「座る時間もないほど大変でしたが、同業者のカレー屋さんがアドバイスをくれたり、お客さんと話をしている中でたくさんのヒントをもらったり。そういう人たちに支えられて、楽しくやってこれたのだと思います」

 逆に、インドカレーの王道を守ってきたからこそ、悩ましいこともたくさんあるそう。

朗らかな有澤さんとお話をすると、とても楽しくてホッとする。カレーのこともなんでも教えてくれる
朗らかな有澤さんとお話をすると、とても楽しくてホッとする。カレーのこともなんでも教えてくれる

「インドのスパイスやハーブは、それぞれに長い歴史を経て培われた“生かす使い方”というのがあります。でも、最近の日本のスパイスカレーは、そういうルールに縛られない自由な店が沢山ある。最初は、なぜそんな使い方をするのか?と正直、疑問でした。しかし、それは自分の武器である正統派のカレーを守っているからこそ湧いてくる疑問で、言い換えれば、王道の枠に守られているから一歩踏み出す勇気がない自分に気づいたんです」

ウールガイの「砂肝」(300円)と「ゆず」(200円)
ウールガイの「砂肝」(300円)と「ゆず」(200円)

 そこで新店舗を構えて今はそこからの脱却中だという。

「自分を表現するカレーを作るというところへ行かなくてはと思っているんです。その挑戦の1つがウールガイ(インドの漬物)。インドではウールガイは野菜や果物がほとんどで、砂肝などの肉類はあまり見かけません。そこに挑戦してみたんです」
 これがお客さんの間で大評判に。カレーにももちろん合うし、お酒のアテとしても秀逸。どうやって作るんですか?と思わず聞きたくなる。

「今、店を構えて、私は自分の足で立って歩き始めました。だから、私の表現をしてもいいのだと思えるようになったんです。自分が勝手に作っていた壁を破れば、きっと違うステージに行けると思うんです」

 そういう自信ができたのは、お客さんや同業者のカレー屋さんたちがいつも応援してくれるからだという。

「お客さんの顔を思い浮かべて作ることしかできない私は、彼らがいる限り、違うステージに行ってもブレないと思えたので、これからもいろいろな美味しい挑戦をしていきたいと思っています」

 有澤さんとカレーの話をしていると、「スパイスを入れたいときは思いっきり入れたらいい」「入れるだけ入れて、失敗したら引き算すればいい」などいろいろ教えてくれる。それは、ある意味、生きることへの向き合い方を教えてもらっているような気もして、元気が出てくる。ぜひ、『サンラサー』のカレーを食べて、そんな有澤パワーをもらってきてほしい。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

SANRASA(サンラサー)

店名:SANRASA(サンラサー)

住:東京都新宿区新宿6丁目27-17 カノープス新宿3F
TEL:不掲載
営:スタンドカレータイム11:00~14:00、カフェタイム14:00~15:00
休:土日月祝
http://samrasa.blog.fc2.com

○予約の仕方
 InstagramとFacebookにて受付。来店予定時間、人数、連絡先を明記。予約したい日の前日15:00~受け付けている。
・Instagram
mariko_sanrasacurry」をフォローしてDMを送る
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