日本のたからがうまれた歴史と文化のふるさと〈奈良〉の魅力発信空間『ときのもり』が、いま気になる!

 飛鳥、藤原、平城と、古代の都が置かれた歴史と文化の杜〈奈良〉。日本の原点とも言えるその地の、いにしえから脈々と受け継がれてきた伝統美や工芸、そして食材の素晴らしさを、まさに今の気分にフィットするセンスで魅せてくれるアンテナ空間「ときのもり」(東京・白金台)。2016年のオープン以来、ほどよく時を経た過日に開催されたプレス会の様子とともに、気になるこちらのショップの魅力をお伝えします。

日本のたからがうまれた歴史と文化のふるさと〈奈良〉の魅力発信空間『ときのもり』が、いま気になる!
食楽web

 物産品や土産物感覚のグッズを揃えたいわゆるアンテナショップは多々あるけれど、それとはちょっとベクトルやテイスト、なによりレベルが違いすぎるのが、東京・白金台の住宅街に静かに佇む「ときのもり」。ここは、奈良のよいもの、旨しもの、素敵なものを集めた、ライフスタイル提案型の情報発信拠点。

 オープンは2016年。1Fはカフェ&ショップの「LIVRER」、2Fは奈良食材をふんだんに使ったレストランの「CIEL ET SOL(シエルエソル)」という構成になっています。

 こちらの凄いところは、このコンセプチュアルなショップを作り上げたプロデューサー陣。1Fの「LIVRER」は、奈良の高感度な暮らしまわりの「もの」や「食」を提案することで全国的にもファンを持つ「くるみの木」(奈良)主宰・石村由起子さんが担当。

 そしてレストラン「CIEL ET SOL」は、栃木で絶大な支持を得る、日本フレンチ界の重鎮「オトワレストラン」オーナーシェフの音羽和紀氏がプロデュースにあたり、シェフを音羽氏の次男・音羽創氏が務めています。ちなみにこちらのレストラン、昨年に続き今年と2年連続でミシュランガイド一つ星を獲得した実力派。さらに最近では、若手料理人の登竜門的料理コンテストで注目の「RED U-35 2017」において、創氏は準グランプリ“ゴールドエッグ”も受賞。まさに、いまをときめく料理人なのです。

1F「LIVRER」
1F「LIVRER」
2F「CIEL ET SOL(シエルエソル)」
2F「CIEL ET SOL(シエルエソル)」

 そんなタダモノではない「ときのもり」なのですが、その魅力をさらに広めようと、満を持してのプレスセレモニーが先日開かれました。題して、「大和の國のうましおもてなし」。会のナビゲーターには、先のプロデューサー陣の音羽氏と石村さん。さらに奈良県出身のキャスター、笛吹雅子さんも出席され、奈良愛満載なコメントを発信してくれました。

左から音羽和紀氏、笛吹雅子さん、石村由起子さん。
左から音羽和紀氏、笛吹雅子さん、石村由起子さん。
音羽創シェフ
音羽創シェフ

 メイン会場はレストランの「CIEL ET SOL」。着席するとまず、インテリアや建材に使用された素材についての解説がありました。年輪の表情豊かな床材は、吉野杉のウッドブロック。そして贅沢すぎるほどの天高に据えられたパーテーションには、吉野檜を使用。そこに、草木染を施した吉野町の伝統工芸・手漉き和紙がはめ込まれ、落ち着きのある空間を演出しています。

 なかでも筆者がとても気に入ったのが、カーテン。奈良特産の蚊帳素材を用いたというそれは、霧に霞む奈良盆地をイメージして、テキスタイルデザイナーの安東陽子さんが手がけたものだとか。蚊帳のほどよい目の粗さが、なんともやわらかなゆらぎを空間に与え、とても心地いいのです。そして正面の壁には、「ミナ ペルホネン」の皆川明氏が森をイメージして作ったという、テキスタイルのインスタレーションも飾られています。まさに深呼吸をしたくなる、清らかな空間です。

 そしてお待ちかね、メインイベントはもちろん、音羽創シェフによる奈良食材を使ったコース料理。アペリティフ代わりに供された柿の葉を煎じたお茶で乾杯したあとは、まさに目にも舌にも口福な料理が運ばれてきました。

 ひと皿目の「茄子の落ち葉 行法味噌」と「天魚(あまご)のタルトレット 吉野の梅」は、茄子のピュレを木の葉型で整形して焼き色を付けた“食べられる落ち葉”の演出に、一同驚嘆! 最初から神業レベルの皿の登場に一瞬で引き込まれ、ノックアウト状態に。続く「三輪索麺 レモンの葉香る大和肉鶏 大和ポークのコンソメ」、「天魚(あまご)のフリット 岡本さんの椎茸のコンフィ 天然クレソンのサラダ」は過分な味付けはないものの、しっかりと旨みを湛え、素材の味がくっきりと伝わるお皿でした。

「茄子の落ち葉 行法味噌」をのせた「天魚のタルトレット 吉野の梅」
「茄子の落ち葉 行法味噌」をのせた「天魚のタルトレット 吉野の梅」

 そして次なる「片平あかねのポタージュ 金胡麻と大和まな葛餅」。片平あかねの美しいピンク色のポタージュのなめらかさや、飛鳥あかねの葉のムースの下に隠された吉野本葛の葛餅に、完全に心奪われることに。広がる金胡麻の香りや、ねっちりと、しかし軽やかに仕立てられた葛餅は、大人の遊び心と色気をにじませています。そこからは、「大和芋に包まれた寒鰆 万葉白味噌と大和当帰のナージュ」、「飛鳥の藁で燻された大和牛のロティ 宇陀金牛蒡のブレゼ」と、一気にフルスロットル状態に。けれど最後は静かに、「奈良レモンのタルト 月のかをり」のソルベで、感情的になった舌を癒してもらいました。

 総じて、どの皿も印象的な見た目、味わい、香りがそれぞれに備わっているものの、けっして押し付けがましくないところが、とても美しい。まさに奈良のたからものを享受するような感覚です。

「片平あかねのポタージュ 金胡麻と大和まな葛餅」は記憶に残るひと皿
「片平あかねのポタージュ 金胡麻と大和まな葛餅」は記憶に残るひと皿
メインの「大和牛のロティ」を仕立てる前に、飛鳥の藁で燻された肉を披露
メインの「大和牛のロティ」を仕立てる前に、飛鳥の藁で燻された肉を披露

 会の締めには、食後のお茶とともに、奈良の魅力を語ってくれたナビゲーターの石村さんと笛吹さん。「日常とは違う、まるでタイムスリップしたかのような、いにしえの景色に触れることが出来る町」、「四季折々で楽しめる場所があるけれど、なんといっても奈良は“朝”。早起きをして町を歩いて、“自分だけの”桜や紅葉、空、小径を見つけて、感じて欲しい」と、達人ならではのお話も聞かせてくれました。

 「大和の國のうましおもてなし」。“うまし”とは、「旨し」だけでなく、「素敵」という意味もあるのだとか。まさにそれらがぎゅっと一夜に詰まった、スペシャルな会でした。

 そんな奈良の「素敵」に出会いに、ぜひ「ときのもり」に足を運んでみませんか?
1Fの「LIVRER」では、定期的に大和野菜のマルシェが開かれたり、作家もののギャラリーショップを展開したりと感度の高い情報も満載です。

 まさにこれぞ本当のアンテナショップ。奈良発信のいいもの、ここにあります。

(取材・文◎中川節子)

●SHOP INFO

店名:ときのもり

住:東京都港区白金台5-17-10
アクセス:都営三田線「白金台駅」1番出口より徒歩4分
http://www.tokinomori-nara.jp

CIEL ET SOL

TEL:03-6721-7110
営:ランチ12:00~13:30(LO)、ディナー18:00~20:30(LO)
休:月(ランチ・ディナー共)、火(ランチ)

LIVRER

TEL:03-6277-2606
営:11:00~18:00
休:月