「コーヒー」×「ヨーロッパ産チーズ」という“魅惑のペアリング”を試してきた!

ウォッシュタイプ×グアテマラのコーヒー
“ちょい足し食材”:シナモン

 まず最初のペアリングに選ばれたウォッシュタイプのチーズは、マイルドな味わいが人気の「ピエダングロワ」。ダブルクリーム(生クリームが添加された)タイプで、乳脂肪分が60%以上とクリーミーなチーズです。そんなチーズに合わせるのは、余韻のきれいなグアテマラ。まるでオレンジのようなフルーティーな風味があり、冷めてくると酸味も感じられるグアテマラは、チーズに足りない味わいを補完してくれるんです。

 さらに、そんな両極にあるチーズとコーヒーの距離をぐっと縮めてくれるちょい足し食材が「シナモン」。ウォッシュタイプのチーズは、フランスでも冷涼な地域で生産されることが多く、その土地の郷土料理にスパイスが多く使用されます。そこからヒントを得て生まれたのがこのペアリング。ダブルクリームのチーズにシナモンを加えることによって、まるでシナモンラテを飲んでいるかのような感覚に。ウォッシュタイプのチーズが持つ独特なクセが、ぐっとまろやかな味わいに変化するのも特徴的です。

白カビタイプ(殺菌乳製)×エチオピアのコーヒー
“ちょい足し食材”:りんごジャム

 日本でもお馴染みのカマンベールは、フランスノルマンディー地方を代表する白カビタイプのチーズ。今回、使用するチーズは殺菌乳から造られたもので、無殺菌のものよりもコーヒーとの相性が良くなるそうです。そんなカマンベールに合わせるコーヒーは、エレガントでさわやかな、そして香りもプラムやチェリー酒のように華やかなエチオピア産。

 ちょい足し食材には、長野県産シナノスイートのりんごジャムを。お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、カマンベールの生産地ノルマンディーはりんごの生産地としても有名で、同郷のもの同士のペアリングという王道の手法。こうして果実味と甘味をプラスすることで、紅茶のようにさっぱりした浅煎りタイプのコーヒーでも、よりチーズとの相性が高まっていました。

青カビタイプ×ブラジルのコーヒー
“ちょい足し食材”:メープルシロップ

 青カビタイプからは、とりわけマイルドで食べやすいフルダンベールをチョイス。合わせるコーヒーは、ナッティーで香ばしい風味が楽しめるナチュラル・プロセス(果肉ごと天日干しする)で生産されたブランジル産のものを。

 まるでピーナッツやきな粉のような味わいが舌の上で感じられるコーヒーと、ツンとした青カビチーズを繋いでくれるのは、ダークタイプのメープルシロップ。このメープルシロップには、黒蜜のような味わいが特徴で、チーズと合わせることで、甘じょっぱいみたらし団子のようなペアリングを楽しめるんです。青カビは普段苦手という方にも、是非試していただきたい組み合わせです。

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(おわりに)
 チーズとコーヒーを合わせるためには、チーズは熟成の旨みが強いものよりも、ミルク感があるものを選ぶのがポイント。またコーヒーは、浅煎りタイプのほうが香りを感じやすく、ペアリングがより楽しくなります。今回取り上げた3種類のほかにも、身近にあるちょっとした食材で、自分好みのオリジナル“ちょい足し”アレンジを探してみるのも面白そうです。奥深いチーズの世界を、自由に旅してみてはいかがでしょうか。

(取材・文◎藤森もも子)

教えてくれたのはこの二人!
教えてくれたのはこの二人!

●監修プロフィール

写真右:佐野 嘉彦(さの・よしひこ)

Japan Cheese Award運営委員、2017 Mondial du Fromage・国際チーズコンクール審員。東京外国語大学卒業後、スペインに留学。翻訳の勉強の傍らスペイン国内を巡り、チーズやワインを中心とした食文化を探究。帰国後、国内外の企業でマーケティング業務に従事した後、ニューヨーク発祥のレストランガイド『ZAGAT』日本版の編集、レコール・デュ・ヴァンでの講師、C.P.A.認定 チーズプロフェッショナル、J.S.A.認定 ワインエキスパート。

写真左:齋藤 淳(さいとう・じゅん)

「4/4 SEASONS COFFEE」店主、バリスタ。バリスタ世界チャンピオン Paul Bassett が展開する店舗にてノウハウを学ぶ。「ゲストハウス Nui.」のバリスタとして活躍後、2015年10月、新宿御苑前に現店を開業。コーヒーを農作物と捉えて、生豆の選定から抽出まで素材の味を追求。「コーヒーのあるの日常を日本に根差す」というテーマのもと、店舗運営とともに活躍の場を広げている。