旨い店はタクシー運転手に訊け! 池袋の行列店『麺舗十六』の絶品「つけそば」が美味しすぎる理由

オススメは「つけそば」の肉増し

こちらは「らーめん」800円。味玉100円入り
こちらは「らーめん」800円。味玉100円入り

 メニューは「らーめん」「つけそば」「あつもり」「B麺(まぜそば)」「塩そば」の4種類。ここは自家製の麺がモチモチして非常に美味しいので、ぜひその麺を堪能したいところ。イチオシは「つけそば」(800円)です。麺の量は、小(200g)、1.5(340g)、並(460g)、2.5(580g)、多め(700g)となっており、どの量にしても割増し料金なしという良心的な計らい。ちなみにねぎ増しも無料です。

 そこで、私の場合は「つけそば、並、ねぎ増し」(800円)とコールし、続けて、毎回、ちょっとだけ躊躇するのですが、「肉増し」(450円)にします。トッピングの「肉」450円は決して安くはないのですが、どうしても“肉増し”をしておかないと、後で絶対に後悔する理由があるのです。というわけでマイメニューは計1250円。

 余談ですが、先日、着丼を待っていると、面白い光景に出くわしました。それは、入店してきた男性のお客さんが、軽く会釈だけしてすっと座り、新聞を読み出して、一言も発しません。メニューはどうするんだろうと観察していると、やがて彼の前に丼がスッと置かれる。そして、おもむろに食べ始める。つまり、この方は、長年の常連さん。こういう方が多く、皆さん、まるで自宅でご飯を食べているかのよう。

 ニコニコと笑顔のおかみさんと、黙々とラーメンを作る真面目そうなご主人のご夫婦が、こうしたゆるゆるとした空気を作っていて、とてもリラックスできるのです。

つけ汁には、海苔と細いメンマ。さらにチャーシューがゴロゴロと沈んでいます
つけ汁には、海苔と細いメンマ。さらにチャーシューがゴロゴロと沈んでいます

 さて、私の肉増し&ねぎ増しにしたマイメニューのつけそばが登場。スープは、とんこつと魚介のダブルスープの醤油味。やや酸味がありますが、脂っこさはなく、全体的に非常にバランスがとれた穏やかな味わい。昔ながらの醤油ラーメンの味でもないし、コテコテどっしりのトンコツ醤油の味でもない。はたまた最近のドロドロの濃厚なつけそばの汁とも違って、スッキリしているのに出汁の滋味深さがあるのが特徴です。

 そして自家製麺は真っ白で、つるつるした口当たり。噛むとモチモチ。ラーメンというより、うどんのようでもありますが、かといって讃岐うどんのような自己主張はなく、全体的なバランスがちょうど良いんです。

どんぶりにみっちり入った中太のストレート麺です
どんぶりにみっちり入った中太のストレート麺です

 そしてチャーシューは、スープと一体化したような味が染みてとても柔らかい。口の中に入れるたびにじわりと肉の旨味を感じますが、美味しいからといって全部食べてはいけません。つけそばを堪能し、麺がなくなってもつけ汁に必ずチャーシューを残しておきます。

ここのチャーシューの味は、スープと一体感があり、柔らかくて口の中でとろけます
ここのチャーシューの味は、スープと一体感があり、柔らかくて口の中でとろけます

 そしていよいよ〆。麺を完食し、空いた丼に残っているつけ汁を1/3ほど移動させます。そして、つけ汁の器をご主人に渡し、「スープ割り」をお願いするんです。

 実は、私がこのお店で最も好きなのは、この最後のスープ割り。スープ割りすることによって、カツオ出汁の風味が追加され、先ほど、麺をつけていたつけ汁より香りも旨味もぐ~んとアップ。ここで最高のスープが完成します。残しておいたチャーシューを、このスープ割りとともに、宝物のようにしていただきます。ほろほろと解けるチャーシューに滋味深いお出汁が染み込んでいます。そして、スープをズズっと飲み干してフィニッシュ。最高に美味しい着地です。これが、肉増しをした理由です。

スープ割りの一杯
スープ割りの一杯

 どうですか。『麺舗十六』の「つけそば」は、最後のスープ割りまできっちり堪能するのが最高。この幸せの味をぜひ、皆さんも試して欲しいと思います。ちなみに確実に食べたいなら、11時台に訪店するのがオススメです。

●SHOP INFO

麺舗十六

店名:麺舗十六

住:東京都豊島区池袋3-6-8
TEL:非公開
営:10:30~14:45 (売り切れの場合早仕舞いあり)
休:日・月

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。