雑煮は煮込んだ丸餅を味噌仕立てにしたシンプルなスタイル

地域性の出やすい餅料理といえば「雑煮」です。福井では煮込んだ丸餅を味噌仕立てでいただくのが一般的。ここに株や白菜を入れる家庭もありますが、基本的には具は餅のみ。具がない代わりに、食べる直前に花がつおをたっぷりかけていただきます。

ちなみに、福井の嶺南エリアでは鰹節の代わりに黒砂糖をかけるそうです。なかなか自分が暮らしたことのある地域以外の雑煮を食べる機会はないですが、これだけシンプルな雑煮は全国を見ても珍しいほうだと思います。この雑煮が広まった理由は諸説あり、質素倹約を重んじた武家の習慣の名残という説などがあるそうです。
人と人を結ぶ役割を果たす餅

こうして福井の数々の餅を見てみると、季節や行事にまつわるものが多いですよね。また、お祝い事でも餅は欠かせない存在になっています。たとえば、子どもが初めての節句を迎えるときに、親戚や近所に餅を配ったり、88歳の米寿のお祝いで「米寿餅」を餅屋にオーダーしたり、はたまた厄払いや祭りでも餅を用意するそうです。信心深い地域性を持つ福井において、餅は冠婚葬祭にも深く根付き、とくに喜ばしいことを知らせる品として珍重されています。
だからこそ、福井の餅屋は本物にこだわっており、朝ついた餅をその日のうちに売り切る「朝生」を貫いているのだとか。一度本物の餅を味わうために福井を訪れてみたくなりますね。
●著者プロフィール
今西絢美
編集プロダクション「ゴーズ」所属。デジタル製品やアプリなどIT関係の記事を執筆するかたわら、“おいしいものナビゲーター”として食にまつわる記事も執筆中。旅先でその土地ならではのローカルフードを探すのが好きで、フードツーリズムマイスターの資格も持つ。