懐メロに酔いしれる! 麻布十番の革命的酒場『歌京』の魅力とは?

懐メロに酔いしれる! 麻布十番の革命的酒場『歌京』の魅力とは?
食楽web

20年後の名酒場を賢人に聞く!

 平成という時代を越え愛され、語り継がれた酒場が「昭和の名酒場」と呼ばれるなら、令和という新時代を迎えた今、いつか「平成の名酒場」と呼ばれる店が、どこかでひっそり営まれているのではないでしょうか。

 今回は、酒の賢人であり、放送作家として活躍するすずきBさんに、麻布十番『歌京』の魅力について語ってもらいました。

 麻布十番の喧騒から抜けた鳥居坂下の交差点。『歌京』という看板を見ながら階段を降りた地下のドアを開けると、渡辺美里の「マイレボシューション」が聴こえてきた。そこは、そんな80~90年代の懐かしい歌謡曲とともに、あの頃にタイムスリップしながら呑める、他には類を見ない平成の名酒場だ。

 ドアにはマクセルのカセットテープ、カウンターには雑誌「明星」や「ホットドッグ・プレス」、棚にはラジカセ、LPレコード。昭和のオーディオ好き少年の部屋に遊びに来たようなグッズで溢れかえっている。その世代を生きた大人たちは「懐かしい~」と盛り上がる。若い女子を連れてきたアラフォーおじさんは「あれ知ってる? ラジカセ」「へえ、知らない」「カセットテープを入れて、友達の分を一気に2本ダビングできる、トリプルデッキ」「ええ、なにそれ、ウケる~」――。

 いつの世も、良い酒場は世代をつなぎ、時代をまたぐ。カウンターの向こうに粋な大将がいて、こちらの様子を伺いながら、酒の肴や会話で場を盛り上げてくれる。それが昭和から平成をまたいできた良い酒場とするなら、この店は平成に生まれて令和をまたぎ、生き抜く、革命的な酒場だと思う。

 カウンターの向こうに大将のようなDJがいて、客のリアクションで年の頃を計らいながら、こちらが酔い痴れたくなる名曲と映像という“酒の肴”を絶妙なタイミングで出してくれる。

「トリュフポテトサラダ」(S)730円
「トリュフポテトサラダ」(S)730円

「来た~!」そのイントロに、カウンターの一人客は美味そうに頬張っていた料理も忘れ、目があった隣の客とリズムを刻み始める。テーブル席でも別々に来た客同志が立ち上がって躍り始めた。

 ♪「今夜だけでも、シンデレラボーイ……」。クラブでもカラオケでもない深夜の酒場で、なぜか店が一体となって盛り上がる不思議。

「カニクリームコロッケ」800円
「カニクリームコロッケ」800円

 平成を飲み歩いて“わかり始めたマイ酒場レボリューション”。それは“明日を乱すこと”かもしれない(笑)。が、20年先も明日のことなど考えずに酔い痴れたい。

(撮影◎伊藤徹也)

●SHOP INFO

歌京

店名:歌京

住:東京都港区麻布十番1-5-8 ヴェスタビル B1F
TEL:03-3403-7255
営:19:00~翌4:30
休:無休

●プロフィール

酒の賢人・著者/すずきB

放送作家。1970年生まれ。「秘密のケンミンSHOW 」や「ヒルナンデス」などの構成を担当する他、「食べあるキング」のメンバーとして食で日本を盛り上げ中。また会員制美食サロン「北参道倶楽部」を企画運営。著書に「浮気とは午前4時の赤信号である」がある。

※当記事は『食楽』2019年秋号の記事を再構成したものです