蜂がブンブン飛び交う“日本一危険な祭り”に参加して最高にウマい「蜂の子料理」を味わってきた

ヘボ愛好家が育てた蜂の巣を競うコンテストも必見

会場の端には、軽トラックがズラリ。コンテストのために各地から、愛好家が育てたヘボの巣が運び込まれているのです
会場の端には、軽トラックがズラリ。コンテストのために各地から、愛好家が育てたヘボの巣が運び込まれているのです

 会場の隅にはビニルハウスが設営され、トラックで巣箱が運び込まれていきます。ビニルハウス内では愛好家たちが丹精こめて育てた3キロ越えの巣が次々と取り出される、圧巻の光景が展開されるのです。

一般来場者は、ヘボの巣を巣箱から取り出す作業をビニルハウスの外から見学できる
一般来場者は、ヘボの巣を巣箱から取り出す作業をビニルハウスの外から見学できる
巣箱に着火した煙幕を放り込むと、ヘボは気絶。しかし動けるヘボもいるので、蓋を開けるとワーッと飛び出し、テント内を飛びまわったり、力尽きて地面に落ちたり
巣箱に着火した煙幕を放り込むと、ヘボは気絶。しかし動けるヘボもいるので、蓋を開けるとワーッと飛び出し、テント内を飛びまわったり、力尽きて地面に落ちたり
巣箱から取り出したヘボの巣は、まるで天然のミルフィーユ。5~8段ほどの巣版に、六角形の巣穴が並び(ハニカム構造)、そこに幼虫やサナギがぎっしりつまっている
巣箱から取り出したヘボの巣は、まるで天然のミルフィーユ。5~8段ほどの巣版に、六角形の巣穴が並び(ハニカム構造)、そこに幼虫やサナギがぎっしりつまっている
テントの中は、煙幕で巣から逃げ出した成虫でびっしり。テントの外にも一部逃げていき、会場を飛び回る
テントの中は、煙幕で巣から逃げ出した成虫でびっしり。テントの外にも一部逃げていき、会場を飛び回る
普通の服装でテント内外をウロウロしていたら、「そんなカッコしてたら刺されるで!」とヘボ愛好家の方々から防護服を着せていただいてしまった。安心安全にヘボの世話をできるこの服は、ヘボ食を支える重要アイテムの一つでもある
普通の服装でテント内外をウロウロしていたら、「そんなカッコしてたら刺されるで!」とヘボ愛好家の方々から防護服を着せていただいてしまった。安心安全にヘボの世話をできるこの服は、ヘボ食を支える重要アイテムの一つでもある
巣箱から取り出した巣は手早くビニールにつめ、コンテストのために計量する
巣箱から取り出した巣は手早くビニールにつめ、コンテストのために計量する
販売される巣は、小さめサイズから先に売れていくという。食べきれない、保存に困るなどの理由が想像できます(わかる…!)
販売される巣は、小さめサイズから先に売れていくという。食べきれない、保存に困るなどの理由が想像できます(わかる…!)

 愛好家の方にお話を伺うと、とある巣はなんとエサ代10万円。ヘボは肉食なので、野生では成虫がハエやクモなどの小型の虫などを捕って幼虫に与えていますが、養殖の場合は成長ステージに応じて鶏肉やハツなどが与えられるそう。

蜂の巣の販売価格は1キロ1万円
蜂の巣の販売価格は1キロ1万円

 育てた巣の販売価格は、1キロ1万円。超高級食材であるものの、ほぼ元はとれていない……ですよね? それでもやらずにいられない楽しさがあるのでしょう。文化の継承には、並々ならぬ熱量が必要とされるのですね。

販売される巣は、申し込み順に選ぶ権利が得られる。同行者が買った巣は、なんと小学生がおじいちゃんに手ほどきを受けて育てた巣。「いつもおじいちゃんがへぼを煮てくれる」という話がとてもよかった(ぜひご相伴にあずかってみたい)
販売される巣は、申し込み順に選ぶ権利が得られる。同行者が買った巣は、なんと小学生がおじいちゃんに手ほどきを受けて育てた巣。「いつもおじいちゃんがへぼを煮てくれる」という話がとてもよかった(ぜひご相伴にあずかってみたい)

 ちなみに今回、コンテストで優勝した巣は6キロ越え。過去には7キロ越えの巣もあったとか。6キロというと、生後3ヶ月の赤ちゃんくらいでしょうか。重量には木くずで作られている巣の重さも含まれるものの、あの小さい幼虫がそれだけ詰まっているのはものすごいことです。

仲間が複数人で共同購入した3キロ越えの巣は、ずっしり重い。お値段3万円越え
仲間が複数人で共同購入した3キロ越えの巣は、ずっしり重い。お値段3万円越え

 仲間が買った巣を持ち上げると、なかなかの重量。その重みから感じられるのは、愛好家のヘボ愛、栄養たっぷりのタンパク質、山の恵み、そして伝統と文化。ああ、いい祭りだなぁ。これから先、味わうヘボの味が、ますます美味しくなりそうです。

●著者プロフィール

ムシモアゼルギリコ
フリーライター。記事の執筆のほか、TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めている。昆虫食だけでなく、一般の食卓では見かけないような食材を追うのが好き。著書に『びっくり! たのしい! おいしい! 昆虫食のせかい むしくいノート』(カンゼン)、『スーパーフード! 昆虫食最強ナビ』 (タツミムック)